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おひさま先生の登場に

――雨よ上がれ。
ベランダに出て空を睨む。

理由があった。
一つは洗濯物を外に干したいこと。
もう一つは「晴れたら、保育園を出て近くの公園に行く」と楽しみにしていた五歳息子。
あまりない機会なので実現させてあげたい。
空に太陽が見えてきて嬉しくなった。

夕方。帰宅した息子が興奮でまくしたてる。
「大きくなったねって。急に後ろから言われてびっくりして……」
話がさっぱり分からない。
妻が間に入る。
「公園にマナ先生がサプライズで来たんだって」

当時一歳の息子の初めての先生。
慣らし保育に二ヶ月かかった泣き虫が、最初に心を開いた他人。
二年ぶりの職場復帰と、私の難病入院が重なりパニックだった妻を精神的にも支えてくれた。

いつも笑顔を絶やさないお日様のような印象がある。
今は休職中だが、他の園児にとっても第二のママ。
つかの間の公園遊びは最高に盛り上がったとか。

「運動会の動画も見てくれてて――」
息子の興奮もおさまらない。


背伸びたねと背に掛かる声秋の虹

(せのびたねとせにかかるこえあきのにじ)

季語(三秋): 秋の虹


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