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刑務所や少年院で被収容者と対話する、教誨師(きょうかいし)の仕事とは【シリーズ教誨師 第1回 教誨師とは】
刑務所や少年院などの矯正施設で、被収容者(収容されている人)と対話を続ける宗教者を「教誨師(きょうかいし) 」といいますが、この成り立ちには浄土真宗が深く関わっています。本願寺派で宗教教誨がはじまり150年を迎えたのを機に、この活動を紹介します。
矯正施設内で行う宗教活動を「宗教教誨」、矯正施設からの要請によって宗教教誨を行う宗教者を「教誨師」と呼びます。教誨は「被収容者に対し、各教宗派の教義に基づいて徳性の自発的発露を促していく活動」と定義される、被収容者の心の悩みに向き合い、安らぎと前向きな生き方をともに探る宗教者によるボランティア活動です。
余談ですが「教誨」は『仏説無量寿経』にある言葉であり、しばしば浄土真宗との関わりを示すものとして語られます。
活動
教誨は一対一で行う個人教誨と、一定数を対象とした集合教誨に区分されます。それぞれの宗教に立脚した対話や講話のほか、お盆、クリスマス、大おお祓はらえなどの宗教行事を行ったり、申し出があれば法事やミサ、神事などを行う事もあります。
近年、小説や映画で死刑囚と向き合う教誨師が取り上げられることがあります。そこでは「死刑執行の前に死刑囚と接する最後の民間人」として語られることがありますので、これが教誨師のイメージとなっているようにも思います。実際は、東京拘置所など死刑が行われる施設もあれば、刑務所や少年院など、所属する施設や処遇類型(犯罪傾向や年齢による分類)によって活動や役割は様々です。
最多が本願寺派僧侶
現在、日本には90ほどの教宗団からおよそ1800人の教誨師がいますが、宗教別の構成割合でいうと、三分の二は仏教系となっています。なかでも浄土真宗本願寺派の教誨師は全体の2割近くに及び、教宗団の中では最多となっていることはあまり知られていないようです。ちなみに2番目に多いのが真宗大谷派であり、真宗十派を合わせると全体の3割は浄土真宗の僧侶となります。
このように数の上からも教誨師と浄土真宗には深い関係がありますが、これは伝道教団としての姿勢とともに、歴史的な背景があります。次回は教誨師の歴史について取り上げたいと思います。
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教誨の現場から
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竹岡 郁雄 師
東日本成人矯正医療センター所属教誨師、全国教誨師連盟理事長、浄土真宗本願寺派。正蓮寺住職
―― 対象者と接する中で感じることは何ですか。
30年ほど教誨師を務めておりますが、よく「この(罪を犯すようには見えない)人はなんでここにいるのだろう」と思うことがあります。考えている事や悩み・苦しみは人それぞれですし、何度面接しても何も変わらない事もあります。ですがそれは、日常で誰かと接するのと違わないでしょう。『歎異抄』に「さるべき業縁のもよほさば、いかなるふるまひもすべし」(第13条)とあるように、私自身いつ立場が逆になるか分からない存在だから、彼らも同じ時代を生きている仲間だと思うのです。
―― どのような働きかけを意識されていますか?
対象者は社会から離れています。だから社会の空気をそこに持って行く、というのも役割だと思いますね。もちろん、彼らもテレビや新聞を見ることができますが、社会で生きているという実感は薄いようです。世の中のちょっとした出来事であっても、とても興味深く聞いてくれます。それが一日も早く復帰したいという気持ちに繋がるような気がしますね。
(文/水戸刑務所所属教誨師・藤本真教)