コカ・コーラのV字回復の背後で起きたこと
(写真:米国ジョージア州アトランタ市 Marianna Smiley さん撮影)
「ここはどこ?わたしはだれ?」
このフレーズを知っている人は、昭和に育った世代ですよね。
1979年に放映された人気テレビドラマ「赤い嵐」の中で、記憶喪失になった主人公が発する台詞です。
インパクトのあるこのフレーズは、プロの芸人や一般社会の中でも良く使われる流行語となりました。
進化バージョンとして「ここは誰?わたしはどこ?」というのもありました。
シンプルですが、本質的な質問です。
今回は後半の「わたしはだれ?」という質問に関連するコカコーラ1985年代のV字回復から学びます。
そんな40年前のアメリカの昔話に学ぶことはないと思われましたら、以下をお読み頂く必要はありません。
NEW COKEの誕生
米国における炭酸飲料水の王者とも言えるコカコーラは、1985年春に新しいレシピで「New Coke」を発表します。
それまで炭酸飲料のトップランナーとして好調だったコカコーラが主力商品を大幅に変更したかについては、ネット上でも様々な説があるようです。
ライバルの炭酸飲料である「ペプシ」が消費者の「ブラインドテスト」を行い「ペプシ」の方が美味しいと言っているコマーシャルを使って、猛烈に売上を伸ばしたためだとも言われています。
ただ、この商品「New Coke」は販売直後から大失敗となりました。
「コカコーラ」の味が変わってしまったと、社会問題(?)にまで発展し、各種メディアが顧客達の失望や抗議運動が起こった様子を当時のニュースで取り上げています。
大失敗であったことは、コカコーラ社も公表しています。
売上、株価共に急降下したために、発売3ヶ月でコカコーラは主力商品の「コーラ」を「New Coke」以前の味に戻すという事を余儀なくさせられたのです。
「CLASSIC」の誕生
「New Coke」失敗から3ヶ月後、元の味に戻すということになったのですが、ただ元に戻したのではなく、主力商品の「コーラ」に「Classic(クラシック)」と名付けて発売したのです。
売上、株価共にみごとなV字回復をとげ、過去最高売上を達成し、その後20年以上、主力商品の「コーラ」に「Classic」の文字が刻まれることになりました。
ただ単に「味を元に戻す」というリカバリー(復旧)ではなく、その後20年以上にわたって使用されることになった「Classic」という「コンセプト」がV字回復に大きく役立ったことは疑いの余地がないでしょう。
それではどのようにして「Classic」という「コンセプト」が急降下を続けている3ヶ月という期間で起死回生の切り札として生み出されたのでしょうか。
アトランタ本社での役員会
ここからは、私が社会人になって初めてコンサルティングを受けた米国人のコンサルタントから聞いた話になります。
コーラの味を変えたことが社会問題にまで発展し、売上、株価共に急降下した際に、一人のコンサルタントがコカコーラ社に呼ばれて対応策を役員会と練ることになりました。
米国ジョージア州アトランタ市の本社に役員達があつまりました。コンサルタントが口を開きます。
「What is Coke?」(コーラとは?)
続けて
「Give me one word.」(一言で答えて下さい)
と質問したそうです。
役員達は半日かけて話し合い、最終的にこう答えたのです。
「Classic!」(クラシック!)
もはや大失策「New Coke」の対応策を話し合う必要はありませんでした。
大切な二つの事
このストーリーから数多くのことを学ぶことができますが、二つの事だけ共有します。
顧客の声を聞くこと
事業の再定義の重要性
顧客の声
顧客は「New Coke」を全く支持せず、以前のコーラを海外に買いに行くファンまで現れました。
また、「以前のコーラのレシピをよこしてくれ!自社で昔のコーラをつくるから!」というグループもありました。
なぜ顧客が自社製品を支持しているのかと言うことだけではなく、なぜ支持しないのかについても耳を傾ける必要があります。
コアファンと言えるロイヤルカスタマーの離反や休眠の理由を探るべく耳を傾ける必要がありますね。
再定義
そして、冒頭の「わたしはだれ?」という問いかけが、コカコーラの主力商品の「再定義」を促しました。
その結果生み出された「Classic」。
役員会が「腹落ち」するコンセプトでした。
商品やサービスをお客さまに提供しているということは、何らかの価値を提供しているわけです。
この提供価値を明確にするために事業や商品の再定義は重要です。
そして、これは大企業のブランディングだけではなく、個人の起業家においても重要なのです。
「わたしはだれ?」
この問いかけに顧客との対話の中で明確に答えていかなければなりません。
最後までお付き合い下さりありがとうございます。
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