火曜日しばらく雑記帳・2023 CW06
スペインの赤ちゃんは踊りながら生まれてくるという。見て確かめたわけではないので、本当かどうかは知らない。
私はというと「口から先に生まれてきたのか、お前は!」と子供のころから怒られてばかりだったわけで、ダンスはもちろん、あらゆる運動はまったくダメだ。そんなお前がバレエを語るなと言われても仕方がないところだが、新しいことを知ったり、そのことをもってこれまで知っていたことを見直したり、あれこれ考えたりするのは楽しい。そんなところを共有するべく、ど素人の私がたまにバレエの記事を書いたりしているわけだ。
心と身体は切り離せない。
さて、現地時間2023年2月4日、ローザンヌ国際バレエコンクール2023の最終選考が行われ、ミヤン・デ・ベニート(スペイン)と、ファブリツィオ・ウヨア・コルネホ(メキシコ)が、同点で1位を獲得し、日本からは宮崎圭介が8位入賞した。また、日本人が、というコンテキストで言うならば、熊川哲也が審査員に名を連ねている。
ちょっと検索してみたところでは、swissinfo.ch 記事が目にとまった。1位となった二人のコメント、審査員からの寸評、なども含む短いながらしっかりと必要な情報を押さえた本文にあわせて、本選出場の横尾春瑠のインタビュー動画、ローザンヌ国際バレエコンクールとはなんぞやという私のようなど素人むけの詳しい解説、それらがコンパクトにまとめられているので、貼っておこう。
とても参考になった。
1月29日からの一週間にわたるコンクールが、YouTubeでライブ配信されていたので、日本に在住の熱心な方は寝不足で大変なことだったであろう。私はちょっと余裕なかったので見ることができなかったのだが、一人ひとりのパフォーマンスをそれぞれ YouTubeで観ることができる。
ちょっとづつ時間を見つけて見どころをピックアップしてみておこうと思っている。おススメ動画で上がって来るのを気まぐれで観てもいいし、一位の方から順番に名前で検索して観ていくのもいい。同点一位の二人のClassicのパフォーマンスを貼っておく。
ミヤン・デ・ベニート(スペイン)
ファブリツィオ・ウヨア・コルネホ(メキシコ)
二人とも私がDVDで持っている "The Flames of Paris" を踊っているので親しみ深い。もっとも、イワン・バシリエフと比較はしない。
ローザンヌが若手の登竜門であって、これから推しのバレエ・ダンサーを見つける契機であるわけだが、私は、目下いろいろな人を知ろうとしている段階だ。
エレオノラ・セヴェナールが素晴らしい、と聞き視聴してみたが、まぁなんとしなやかで優美、高速かつ正確。1998年生まれで24歳、すごい人がいるものだ。
■というわけで、今年2冊目の洋書は、また無謀にもバレエの本を読み始めている。
Jack Anderson "Ballet & Modern Dance"、New York Times のダンス批評家がバレエと近代ダンスの歴史について著わした興味深い本だ。
今月の1か月で読み終わるつもりでいるのだが、ちょっと進捗がイマイチだ。さすがにジャーナリストの書いた文章、読みやすくわかりやすいので具合はいい。
世界には3種類のダンスがあるという。すなわち、自分のためのダンス、神や権力に奉納するダンス、そして、観客に見られるためのダンス。
おお、いいフレーズだ。。と感動しながら、私には永遠に理解できない世界かもしれないと思いつつ、心と身体、というテーマを考えるにつけ、以前に読んだ養老孟司と甲野善紀の「古武術の発見」を思い出し、また、フォローさせていただいている吉隠ゆきさんに紹介いただいた湯浅泰雄「身体論」の2冊をあわせて購入した。
「身体論」は予想以上に面白い。西洋の哲学だけではなく、また、日本には哲学はない、などとふかさずに、和辻哲郎など押さえておくべき思想はある、と改めて認識させられている。やはり私は日本人なのだなぁと読みながら思っている。
踊りながら生まれてくるというスペイン人ではないにせよ、イタリア人かもしれないと思っていたけれども。
■2月3日の金曜日は節分であった。立春が2月4日でその前日だという。京都の吉田神社では節分祭といって盛大に祝う。この日を年越しとして年越しそばの屋台も出て、大晦日や正月よりも賑やかである。他にも節分祭を祝う神社はあるはずである。この何年も、日にちの都合が合わず、節分に京都の自宅に帰れずにいるため、とんとご無沙汰で、毎年、節分祭を思い出しては新横浜の事務所で豆を食べながら仕事にいそしんでいる。
それに鰯を食べる。今年は蕎麦も食べた。
節分祭の吉田神社の賑わいを、2008年の写真でシェアしておこう。
■先週にひっかかった音楽を少し。
1.注目のギタリスト ジョナサン・クライスバーグ(Jonathan Kreisberg)が参加した マーク・マーフィ (Mark Murphy) のシングル "Torn Open Our Love" がリリースされ、これがとても良かった。
流れるような演奏とボーカルにゆったりと身を任せることのできる楽曲だ。
マーク・マーフィは、「卓越した技巧と天才的なひらめきを持つシンガーで、非常に広い音域と器楽的な歌唱が特徴的 」(Wikipedia マーク・マーフィ)ということだが、2015年に天国に召されたそうだ。どういう経緯でこのシングルが今リリースされたのか知らないでいるが、もっと他にもいろいろ聴いてみようと思った。
2.ポルトガルのファド、カルミーニョ (Carminho) の新しいシングル "O quarto (fado Pagem)" も哀愁たっぷりの歌声を堪能でき、素晴らしかった。
2012年のアルバム "Alma" を貼っておこう。
3.アラブ・ポップス、レバノンの女性ボーカル、ヒバ・タワジ(Hiba Tawaji)のシングル "Habibi Khalas" 。
4.ブラジルのグループ、ボッサ・クカノヴァ(Bossacucanova)の "A Bossa é Cuca Nova"、このグループは初めて知ったのだが、軽快で聴き心地よい演奏はボサノバならでは、なかなか気に入った。
■世界で一番寒いとも言われるヤクーツクのYouTubeをこの間の雑記帳に貼っておいたが、アメリカもひどく冷え込んでいるそうだ。「火星より寒い、-78度」と聞いて、おおっと思ったら体感温度ということだった。火星では大気がないから体感温度ってのはないわけで比較するのはそもそも反則だと思ってしまったが、やはりシベリアのヤクーツクに負けることは認めたくない、ということなのだろうか。それとも「おれたちが世界の中心」意識が強すぎてロシアや中国(*1)はそもそも眼中にないのだろうか。
SI(国際単位系)はまったく無視だし。
というわけで、寒かったこの数週間も節分を迎えて、少し太陽の日差しも明るく暖かく感じられるようになってきた。
身体と心を切り離して考えることはできない。
こんなことは、ある人たちにとっては自明な話だと思われる。むき出しの自然の中で旅している人、過酷な自然環境の中で生活している人、ハンディキャップを負っていて内なる自然としての自分の身体に向き合わざるを得ない人。
そういった多くの人たちにとっては、心が身体と切り離されてしまった「脳化社会」となった現代の日本では息苦しくて生きにくいに違いない(*2)。
踊りながら生まれてきたにせよ、口先から生まれてきたにせよ、世の中を渡っていくのは容易ではない。
■注記
(*1) 中国も地域によっては大変寒いと聞く。
(*2)「脳化社会」は、以前から養老孟司が唱えている概念である。今月、「古武術の発見」を読み直して復習しておこうと思っている。
■関連 note 記事
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?