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【読書】ジョン・エリス・マクタガート,永井均『時間の非実在性』

マクタガートの理屈っぽい50頁の論文と、その4倍の永井均さんのさらに理屈っぽい解説を収録。

"時間"が存在するかどうかについて、ひたすら考察します。

── これらの[過去・現在・未来という三つの]特性は両立不可能である。しかし、どの出来事もそれらすべてを持つ。
(中略)
過去である、現在である、未来である、という[両立不可能な三つの]特性を持ってしまうという困難に対処しようとして、われわれは、それは現在であり、未来だった、そして過去になるだろう、と言うことにする。しかし、「だった」が「である」から区別されるのは、それが過去に存在するのであって現在に存在するのではない、ということによってであり、また、「になるだろう」がそのどちらからも区別されるのは、未来に存在するということによってである。こうして、われわれの言明は以下のようになる。問題の出来事は、現在において現在であり、過去において未来であり、未来において過去である、と。そして、現在・未来・過去という特性を割り当てるために、現在・過去・未来という特性を基準として使っているならば、そこには明らかに悪循環が存在する。
── 「第1部 時間の非存在性」より

マクタガートはこれを「時間の矛盾」と言っています。永井さんがこれをさらに展開させます。

── マクタガートの言う「時間の矛盾」という問題の根底にあるのは、われわれの時間観念の根幹にあるA系列概念(過去・現在・未来という概念)の持つ二義性である。
(中略)
いかなる出来事も過去か現在か未来である(という端的なA事実が現にある)というA系列の捉え方と、いかなる出来事も時点も<未来→現在→過去>とA変化するというA系列の捉え方である。そして、一方ではもちろん、端的なA事実もまたA変化するのだが、他方ではまた、A変化という概念それ自体の内部に端的なA事実が(概念化された形で)すでに内在してもいるわけである。
── 「第3部 付論」より

専門用語はほとんど出てこないから前提知識とか事前勉強はいらないのだけど、ロジックが難解で、1ページごとに2度、3度読み直してようやく理解できた気がします。

こんなめんどくさい本をいったい誰が読むのかと思われるかもしれないけど、市立図書館では予約待ちの状態。結局、待てずに買ってしまいました。実際、読めばめっぽうおもしろくて、ぜんぜん退屈しません。

ただし、疲れます。

(2017/12/17 記、2024/12/30 改稿)


ジョン.エリス・マクタガート (著), 永井 均 (著, 翻訳)『時間の非実在性』講談社(2017/2/11)
ISBN-10  4062924188
ISBN-13  978-4062924184

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