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【読書】村越真、宮内佐季子『山岳読図ナヴィゲーション大全』
(この読書メモは、2019年10月に書いたものです)
「山の知識検定」に向けて準備中。
試験でもないと「地図読み」をやってみる機会がありません。スマートフォンの地図アプリはGPSで簡単に現在地を把握できます。それに比べて、レースでもトレーニングでも、山を走るときに紙地図やコンパスを持ち出すのは面倒だしタイムロスになる。
とは言え、こうたびたび山に入るのに、登山技術の基本である地図読みの実践経験がまるっきり無いのはいかがなものかと、ずっと思っていました。トレイルランニングの大会必携装備として指定されているコンパスを装備に加えるたびに、「持ってても使いこなせないんだけどなー」なんて感じちゃうのは、なんとも情けない。
それで、まずは勉強です。試験はある意味、口実。
著者の村越真さん、宮内佐季子さんは、オリエンテーリングやアドベンチャーレースで実績を上げている方々で、この本の内容はとても実践的です。なぜ、よく聞く「地図読み」ではなく「ナヴィゲーション」をタイトルとしたのだろうと思っていたら、第1章にこんな記述がありました。
── 登山のために地図を読むことは、一般に「読図」と称されてきたが、筆者は「ナヴィゲーション」と呼んでいる。その理由は、「読図」という言葉では目的地に迷わず到達するためにすべきことの一部しか伝えてくれないからだ。
(中略)
目的地に間違いなく到達するには、自分のいる場所がわかること(現在地の把握。詳しくは8章)、思ったとおりのルートを進むこと(ルート維持。同9章)が不可欠である。そのためには、地図と周囲の情報を照合することが不可欠である。極端に言えば、地図を読むのと同じだけ「風景を読む」必要がある。(P12, 「Chapter1 ナヴィゲーションスキルを身につけよう」より)
風景を読むか……確かに。
山の知識検定の練習問題を解いていて思ったのは、「地図を読む」ことそのものよりも「地図の横に印刷された風景写真と照合する」のが難しいということでした。「読図」は記号の解読ですから座学でなんとかなるかもしれません。しかし「風景を読む」にはどうも経験を積む必要がある気がします。
やはり、まずは一度、スマホとGPSに頼らない山行を試してみますか……
(2019/10/15 記、2025/1/31 改稿)
その年、山の知識検定に無事合格しました。受験したシルバーコースでは、読図と気象の出題比率が高かったようです。それから、近所の里山で「スマホとGPSに頼らない山行」を試してみました。なにしろ慣れてないから、ちゃんと現在位置を把握しようと思うとずっと地形図と首っ引きで、とても走れませんでした。
……ですが、これが結構楽しかった。
ランではかなりの比率で路面ばかりを見ています。ナビゲーションでは周辺の地形や景色をしっかり「読む」ので、その山域をより深く知ることができる気がしました。
ちょうどそのころ、OMM(Original Mountain Marathon)という競技の存在を知りました。一晩の野営を含む2日間の山岳マラソンレースで、定められたコースは無く、地図を頼りにチェックポイントを通過してゴールを目指すそうです。
ものすごくおもしろそうなんだけど、自分にとって最大のネックは、バディーが必要ということ。二人一組のチーム戦なんですね。
人付き合いの不得手なぼくが、まる2日間いっしょにいて肩が凝らない相手なんて、かみさんくらいしかいません。彼女はいつも応援には来てくれるのですが、どうもいっしょに走るのはダメみたいです。
かくして、以来、我が家では、毎年こんな会話が繰り返されています。
「ねえねえ、OMMいっしょに出てみない?」
「やだ」
(2025/1/31 記)
村越真、宮内佐季子『山岳読図ナヴィゲーション大全』山と渓谷社(2017/12/18)
ISBN-10 463504386X
ISBN-13 978-4635043861