【読書】木田元『反哲学入門』
口述筆記から原稿を起こしたものだそうです。編集者の方から強い要望があったとか。
哲学の起源、哲学とキリスト教の密接な関係、ニーチェやハイデガーによる大きな転換、そして「反哲学」という視点による考察……
素人には近づきがたい世界を平易な文章でつづってくれています。さまざまな発見や不思議なドキドキ感があり、すべてを理解したとは言えないまでも最後まで楽しんで読むことができました。そして、終章のハイデガーのくだりには、やっぱり特別熱がこもってる感じがしました。
ところで、「仏教は宗教じゃない。あれは哲学だ」という、最もらしいセリフを聞くときがありますが、この本を読むと、それはずいぶんとナンセンスな言いまわしだという気がしてきます。
(2015/1/24 記、2024/10/6 改稿)
期限なので、もう図書館に返却しなければ……
借りて読んだものの、結局、手元に置いておきたくなって、昨日、外出先からの帰りしな、地元の書店に寄ったのですが、12/14(日)に読売、朝日両新聞の書評の掲示とともに設営されていた木田元さんの著作のコーナーは、すでになくなっていました。
(この読書メモは、2015年1月に書いたものです)
在庫検索用の端末では『反哲学入門』は◎(在庫あり)……なのに、新潮文庫の棚を探しても見当たらない。店員にたずねたところ、研修中の札を胸につけたメガネの女の子が約30分、えらくがんばって店中探し回ってくれたのですが、結局「たぶん在庫は無いです」の結論でした。ああ、この本とはどうやらご縁がない。
しかし、読んでいていろいろ気になったところ、気に入ったところがあり、付箋紙がいっぱいはさんであります。このまま外して返すのは惜しい。気合を入れて全部メモするしかないか……
(2015/1/31 記、2025/10/6 改稿)
哲学の本を読むのは楽しいのだけど、人が思索だけでなにかにたどり着けるなんてことがあり得るだろうか、という懐疑だけは昔からぬぐい去れずにいます。
それに、ぼくらは単に結果としてここに発生しているのであって、その存在に目的やら必然性があるとは、どうも思えません。
けど、人間そのものが考察の対象なら「思索」は方法のひとつとして有効なのかもしれません。
さしあたって、人の持つ価値観の出処がどこなのか、というテーマには大変興味があります。細かく見ればそれは人それぞれで異なりますが、コミュニティの中では似通ってくるように見えます。きっと地理や文化や歴史の影響を受けるのでしょう。けど、もっとマクロ的に見ても、「人間」全体が持つ価値観には共通性がありそうにも思えます。
それは教育がなくても人間に発生するものなのか。それは種の保存という生物の主要命題と関わりなく発生可能なのか。人間全体の価値観に必ず共通する部分はあるのか。
(2015/2/2 記、2024/10/6 改稿)
木田元『反哲学入門』新潮社(2007/12/1)
ISBN-10 4103061316
ISBN-13 978-4103061311