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【読書】フェリペ・フェルナンデス‐アルメスト『世界探検全史 道の発見者たち』
東アフリカに発生した人類が十数万年かけて地球上に拡散したあと、再び接触し相互に影響しあうために行われた数千年の"通路の再発見"の歴史を概観します。
この本ではこれを分岐のあとの"合流の物語"と位置づけています。
上巻ではシルクロード、インド洋の季節風ルート、15世紀の大航海時代などを、下巻では太平洋とシベリアの横断、北西航路、オーストラリアやアフリカ内陸部踏査などを扱います。ひとつひとつの探検についてもう少し詳述されるのを期待していたのですが、視点が思ったよりマクロ的でした。考えてみれば、わずか678頁で地球規模の数千年を扱うのだから仕方ないですね。
地球の半球が未知の領域だった時代を思うと、航空機による極点経由のルート(大圏コース)まで手に入れた現代はもはや地球を征服したかに見えます。
── 通路発見とその地図化の主要な歴史的作業はほぼ完成し、19世紀の中葉という時点で明らかに終わりに近づいた。(中略)今やグローバル化が、離れ離れになっていた数多くのコミュニティを一つの世界に変えている。(9章 グローバル化(制限された水平線 1850年~2000年)より)
極点、チベット、ニューギニア。終章に向けて、地球上に未知の領域がどんどんなくなっていく様子には、なんだかちょっともの寂しさを感じたりもします。ぼくらの時代には、地球はすっかり狭くなってしまっている。
しかし、一方では「二十一世紀初めの時点で、ブラジルにはまだ接触を受けていない原住民のコミュニティが40以上はあると推測されている」とのこと。
やっぱり「地球征服」はおこがましいか。
なにしろここ日本でだって、その気になればまだ自宅近くの里山で道に迷って遭難しそうになることだってできるのだから。
それがちょっとうれしいっていうのも、なんだかおかしな話だけど。
(2017/6/22 記、2024/12/7 改稿)
フェリペ・フェルナンデス‐アルメスト『世界探検全史 上 道の発見者たち』青土社(2009/9/24)
ISBN-10 479176501X
ISBN-13 978-4791765010
フェリペ・フェルナンデス‐アルメスト『世界探検全史 下 道の発見者たち』青土社(2009/9/24)
ISBN-10 4791765028
ISBN-13 978-4791765027