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【読書】ブルース・チャトウィン、ポール・セルー『パタゴニアふたたび』

市内遠方の図書館に蔵書がありました。よかった。

すでに絶版。発売時の定価は1,500円なのに、アマゾンでリストされる古本はどれもだいたい5千円以上してます。変なプレミアがついて、写真も載っておらず、誰もレビューを書いていない。(※)

いったいどういう素性の本で、なんでまた共著なんだと気になり、内容もさることながら解説を読むのが楽しみでした。以下、訳者池田栄一さんの「あとがき」からの抜粋を交えつつ。

── 南アメリカ大陸の南緯三九度以南に広がる荒涼たる大地パタゴニア。強風吹きすさぶ乾いた台地と、太平洋岸の大氷河を特徴とするこの地は、「地の果て」の代名詞として、久しく西洋人の想像力をかき立ててきた。
(中略)様々な文学的連想が絡みついたパタゴニアをめぐり行く旅は必然的に「歌枕」の旅となる。そして、その旅に二人の水先案内人が許されるなら、ブルース・チャトウィンとポール・セルーの名前を挙げることに、おそらく誰も異存はないであろう。(P107)

ぼくは全然知らなかったのですが、ポール・セルーという名前は日本ではブルース・チャトウィンよりも知られているそうです。『モスキート・コースト』というのが代表作らしく、ハリソン・フォード主演で映画化もされているとのこと。

── こうして本書は、「パタゴニア」という土地(主題)をめぐる、チャトウィンとセルーの架空「再訪記」の形をとることになる。かつてこの地を放浪した思い出から、大航海時代の様々な文献、あるいはパタゴニアにまつわる文学作品の引用へと、お互いの話を受けながら、話題は次々と展開していく。このあたりの呼吸は、どこか連歌を巻く呼吸に似ている。さしずめチャトウィンが宗匠格といったところか。次第に二人のテンションが高まり、競い合って手持ちの文学作品を引用する後半部の白熱ぶりを、存分に味わっていただきたい。(P108)

連歌というのは短歌や俳句の世界の話でしょうか。自分が例えるなら、そうだなあ……ジャズバンドのフロント二管のかけあいにも似ています。スプリット・キック(「バードランドの夜」1954年)のときのクリフォード・ブラウンとルー・ドナルドソンみたい。でも、池田さんも言っているとおり、やっぱりブルース・チャトウィンの方が一枚上手な気がしますね。

── 本書はPatagonia Revisited (Michael Russell, 1985) の全訳である。もともと二百五十部の限定出版であり、二人の著作リストからも漏れているという意味でも、まさに「幻の書」と言っていい本だろう。この希覯本を探し出した目利きは白水社編集部の平田紀之氏であり、訳者はそれをできるだけ乾いた文体で日本語に移しかえたにすぎない。(P109)

訳本『パタゴニアふたたび』は、ブルース・チャトウィンが亡くなった1989年から4年後の、1993年に発行されています。当時この作家を知っていたら急いで買っただろうと思いますが、現在では入手困難です。やれやれ。
翻訳されているブルース・チャトウィンの著作で読めていないのは、あと『ウッツ男爵』と『ウィダの総督』。いずれも絶版ですが、前者は市立図書館にあるようでした。

ポール・セルーに関しては、ご本人よりも、引用されていた『白鯨』の方に興味が出ました。作者メルヴィルには、以前『バートルビー』でうんざりさせられて、「二度と読むか!」と思っていたのですが……まあ、いずれ再挑戦してみますか。

(2012/12/28 記、2024/1/8 改稿)

※ 2012年時点の記述です。現在は新装復刊していて、新品、定価で入手できるようです(2024/1/8)


ブルース・チャトウィン、ポール・セルー『パタゴニアふたたび』白水社(1993/12/1)
ISBN-10 4560043159
ISBN-13 978-4560043158

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