【読書】マイケル・サンデル『それをお金で買いますか ── 市場主義の限界』
NHKの番組「白熱教室」でおなじみマイケル・サンデル教授のベストセラー『これからの「正義」の話をしよう』に続く第二弾です。
前作が「正しいこととは何か」について、さまざまな考え方を学んでゆく内容だったのに対して、本作は「市場主義への論駁」に焦点をしぼっていて、前作よりもサンデル先生のとる立場が鮮明に出ている気がしました。
白熱教室でもそうでしたが、サンデル先生は身近な事例に対する思考実験で考察を進めてくれるから、自分のような素人でも、内容がちゃんと胃の腑に落ちていきます。それに言葉は丁寧なのに論説の切れ味が鋭くって小気味がいい。
こういうテーマを真面目に掘り下げるところに、アメリカという国の凄さを感じたりもします。かの国は、人種や民族ではなく「理念」の基に人々が集っているので、あるべき社会の姿をちゃんと考えないと求心力を保てない。日本はせまい国土と似た人種、民族というところにあぐらをかいているんじゃないか……そんなふうに考えたりします。ま、あくまでも素人の所見ですが。
ところでこの本はブックオフで360円と格安でした。この値段だったら買って帰っても、たぶんかみさんに怒られないので気が楽です。
ぼくはこの本に格安の対価しか支払わなかったけど、市場主義への論駁を本懐とする先生なら、ぼくが先生の切れ味鋭い論説の価値を不当に低く見積もっているのではないことを、きっと理解してくれるに違いないと信じます。
(2017/3/26 記、2024/11/2 改稿)
マイケル・サンデル『それをお金で買いますか ── 市場主義の限界』早川書房(2012/5/16)
ISBN-10 415209284X
ISBN-13 978-4152092847