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無駄な時間の中にある幸せ

「あなたの無駄な時間を
時間銀行に預けませんか」

『モモ』ミヒャエル・エンデ著

無駄な時間を有効に使いたい。
無駄な時間を貯めておけたら!

と考えたことありませんか。

(私の願望でもあります😅)

ですが、無駄な時間をすべて無くしてしまった『モモ』の世界をみて、本当に幸せな時間って何だろうと考えさせられました。



『モモ』が書かれた時代。

著者エンデの母国ドイツでは、文学は現実的で社会に役立つものでなければならないという風潮がありました。

エンデの文学は子ども向けの空想物語とみなされ、正当に評価されるどころか攻撃されることさえありました。

主人公モモは、廃墟になった劇場に住み着いた小さな女の子。

することといえば、街の人の話を聞いてあげるだけなのですが、不思議とモモに話を聞いてもらった街の人は本当の自分に気づき、楽しい時間を過ごすことができました。

そんなある日、どこからか〈灰色の男たち〉が日常に忍び込んできます。


そしてモモの住む街の大人たちにある提案をします。

「わたくしは時間貯蓄銀行から来ました。あなたには、こんなにも無駄な時間があります。その時間を私たちに預けませんか」

灰色の男たちは具体的な数字とともに心を揺さぶる。


すると、1分1秒の無駄も無くなった大人たちは、どんどん忙しくなり、イライラして憂鬱な様子になってしまうのです。

「最近おれは、街で昔なじみの人に出会ったんだ、フージーという名前の床屋さんさ。しばらく会ったことがなかったので、しばらくの間彼だとは気づかなかったよ。とにかく彼はすっかり人が 変わってしまっていてね。とっても神経質で、とっても無口で、とっても無愛想になっていたよ。昔は彼はいいやつだったのになあ。歌をうたうのは上手だったし、何ごとについてもしっかりとした自分の考えを持っていた。ところが急に、彼にはそういうことをしている時間がなくなったのさ」
『モモ』における時間の本質について
おおぜいの人が時間の節約をはじめた街並み。


時間貯蓄銀行という発想

作者のエンデはすぐに『モモ』を書き上げますが、6年もの間、発行できずにいました。

ひとつのルールが見つからなかったからです。


それは、なぜ灰色の男たちはどの人間からも時間を盗むことができたのに、“モモの時間だけは盗めなかった”のかという疑問。


モモがカリスマ的な能力を持っていたから?
それは納得できませんでした。

エンデは悩みます。


そして、妻と朝食を食べているときにハッと気づくのです。

簡単なことでした。

時間が盗めるのは、時間を倹約して貯めている人だけだったのです。(ギクっ🤭)

モモのように、通り過ぎていく時間を止めようとしないものからは時間が盗めない。


盗むものが何もそこにはないからです。


「時間貯金銀行」のアイディアはここから生まれたのです。


“モモだけのための物語”を話せなくなった親友


物語の中で、特に切なかったのはモモの親友、ジジとのエピソードです。

ジジはおしゃべりで陽気な若者。

夢を持ち、いつもは大勢の観光客相手にお話をしますが、1番楽しみにしていたのは「モモだけのためにおとぎ話を聞かせる時間」でした。

ですが、灰色の男に時間を奪われたジジは物語作家として成功をおさめるかわりに多忙を極め、心と体を蝕まれます。これは著者エンデ自身の投影なのかもしれません。

最後はモモと話すこともなく飛行機で立ち去ってしまいます。



モモは一人、灰色の男たちから「人々の盗まれた時間を解放する」ために歩き出します。


モモと灰色の男たちの戦いの結末は是非本をご覧になってください。

人間から盗んだ時間をタバコにして補給しないと生きられない灰色の男たちも哀れ。



『モモ』は50年前に書かれた物語ですが今こそ心に刺さるテーマがありました。

作者の短いあとがきより

『モモ』を

過去におこったことのように話しましたね。

でもそれを
将来おこることとしてお話ししてもよかったんですよ。


わたしにとっては、どちらでもそう大きな違いはありません。


ミヒャエル・エンデ

#あなたの話を聞かせて

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