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【BEST OF 映画紹介② 耳をすませば】

今日は1995年に公開されたスタジオジブリ制作のアニメ映画「耳をすませば」を紹介する。
(今回はネタバレも含んでいるため、苦手な人は要注意)

実は私はジブリ作品は得意なものと苦手なものがある。「もののけ姫」は幼稚園の頃、触手のシーンがグロすぎてトラウマになって観れなくなったし、初めて映画館で観た「崖の上のポニョ」も金ローで何度も観た「千と千尋の神隠し」も面白くて大好きだけど、どこか怖く感じてしまい心の底から大好き、といえる作品になかなか出会えなかった。

耳すまを初めて知ったのは小6の金曜ロードショーだった。

本が大好きな月島雫という主人公が、ヴァイオリン職人を目指す天沢聖司という少年と出会い、彼の祖父のヴァイオリン工房で交流を深めながら自分の中にある「物語」を書きたいという気持ちに目覚め、挑戦し、夢に向かってまっさぐな聖司と惹かれあっていくという物語。

初めて耳すまを観た夜、何故か感情移入してしまった私は胸の鼓動が止まらなくなって眠れなくなってしまった。
当時私には長年思い続けていた好きな人がいた。それでもすれ違ってもそこまで感情が揺れることはなかったはずなのに、耳すまを観たあの日から今までの10倍以上意識してしまい、
顔も見れなくなってしまったのである。

少女漫画ばかり読んでいた私にとって、耳をすませばで描かれるラブストーリーはとても新鮮だった。もちろん、耳すまの原作だって少女漫画だけれど、それでも私には彼らの姿は他人事ではなく、自分がこれから経験するかもしれない未来を予感させるようなそんなリアルさがあった。

ではこの作品の何が当時の私の情緒を激しく揺さぶったのだろう。

まず、思春期特有の男女の微妙な距離感やそこにあるなんとも言えない恥ずかしさを上手く描写していた点にあると思う。
昨日投稿した「陽だまりの彼女」にもそんな描写はあったが、あちらは大人になった2人の回想シーンや現在からの対比として思春期の甘酸っぱく切ない感情が描写されていたが、耳すまは中学生のラブストーリーが主題。
主人公2人は夢とは何かを探しながら先の見えない未来に向かって懸命に模索している。
そんな中で「異性」の存在を意識し、その感情と戸惑いながらも心を通わせていく姿はまだ何も見えない未来に漠然と希望と不安を抱き、必死に恋していた当時の私にとって大きな共感を抱かせたのだろう。

そして2人が惹かれあっていく姿は、どんな少女漫画よりも自然でひたむきだった。
2010年代の少女漫画は「好きです!鈴木くん」や設定が少し突飛でギャグめいたものから「今日、恋をはじめます」のような刺激的なものが多くそれはそれで面白かったのだが、ナチュラルで純粋でまっすぐな恋愛は
だいぶ少なくなりつつあった。

この作品には当時私が触れていた流行りのアホみたいにドSでイケメンな先輩のような設定はなく(聖司くんは充分キラキラしてるし、少しだけドS要素はあるけど)、絵のタッチもどちらかというとキラキラ感の強くない素朴な素朴なタッチで雫の男友達が雫に告白するシーンや、雫が学校で揶揄れるシーン、カントリーロードを歌う情景は自分が中学校になったときに体験するであろう出来事を想起させるものがあったし、実際その後体験した風景がそこには詰まっていた。


でも、きっと1番心を揺さぶらせたのは聖司のラストシーンのセリフだろう。
未来に希望と不安を抱いている中学生の聖司がありったけの思いを込めて雫にプロポーズをする。小学6年生の私にとってあのシーンは衝撃だったし、どんな少女漫画よりも感動した。

初恋が実ることは殆どないと気づきかけていた当時の私にとってあのシーンは希望であり、小さな夢になった。


初めて耳すまを観たあの日から11年。
色んなことがあった。当時好きだった彼と両思いになったり、一度失恋して泣いた日もあったし付き合って2人で帰り道を歩いた幸せな日もあった。受験を機にすれ違い、別れてそのままお互い全く違う場所でそれぞれの生活を送っていた。その後、彼とまた再会して恋に落ちたけれど、私は夢のために恋を終わらせることを選んだ。


雫と聖司みたいになりたいと願っていた当時の私の心はきっと泣いていたと思う。でもあの選択は間違っていなかったと言い切れるし、あのとき初恋が実ることを信じて純粋に誰かを好きでいれたことも本当に大切な記憶になっている。

耳をすませばで描かれる2人の姿は、ずっとまっすぐだ。
思春期の小中学生には絶対見てほしい映画であり、まっすぐさを失いそうな大人たちに大切なものを取り戻させてくれる映画だと言い切れる。

現実に初恋が実ることは、本当に少ない確率だとしても、奇跡は絶対信じた方がいい。そして、誰かをまっすぐに思う気持ちを大切にしよう。耳すまはそう思わせてくれる作品だ。

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