幸せな悪夢
「電気消していい?」
カーテンの隙間から月明かりが漏れる
月の明るい夜に
優しく
とびきりやわらかに
はやる気持ちを
心音にとじこめ
そうっと口付ける
膨らみも窪みも硬さも
心もとない薄っぺらな下着を
そろりと指先にかけてひく
クスリと笑う彼女は
「柊も脱いで」
とタンクトップを引っ張る
火照った肌が
彼女の冷たい部分に触れて
「あったかい」
と分かち合う
立てた膝が悶え
背中を反らせた
彼女の息で
脳が真っ白になって
狂わせて
独り占めしたい
私を刻みつけて
奥へ 深く
誰も知らない彼女を
この手に
汗ばんで果てた二人と
漏れた月明かりが
密かに
とろんで這わす
唇の区別など
月が陽とかわるまで
吐息に溶けて
クスクス笑う
すべておかしくて
幸せな悪夢