「読書感想文」約束の猫
村山早紀さん+げみ さんの作品です。
猫にまつわる、心にじんとくる4編のお話。
子供向けの作品として描かれたもの。
村山早紀さんの作品は、「百貨の魔法」と「桜風堂ものがたり」を読んだことがあります。そのお話の中でも、猫は鍵となる存在でした。彼女にとって、そのくらい、猫はなくてはならない存在なのでしょう。
彼女の描く猫は、決して雄弁ではありません。膝に擦り寄り、見上げ、見つめ、寄り添っています。ふわふわと、やわらかであたたかな猫たち。
私も猫と暮らすようになって5年になります。
知りませんでした、こんなにも猫があたたかで、ふわふわなのを。そして、そっと寄り添うように、じっと見つめ、そばにいてくれる寛容を。
猫と暮らす前まで、私はよく知りもせず
「猫ってきまぐれ」「猫はわがまま」「猫は家につく」という勝手なイメージを持っていたのです。
友達のお姉さんが、犬の散歩中に保護した、小さな黒い猫。まだ青い目をして、いつもおっかなびっくりみたいな顔をして、ぴょこぴょこ跳ねるように歩いていた彼を、
「うちにおいで」と迎えることにしたのです。
彼が子猫のうちは、わんぱくで家中をアスレチックのように登ったり走ったり飛び降りたりしていました。遊びおえると、家族の誰かのお膝の上やお腹の上や足の間で、くるんと寝ている、人懐っこい性格で。
窓の外を見つめ、家族を見つめ、ナァーとくっついてみたり、宿題の上に寝てみたり。家族の声を聞きながら、目を閉じ、スースーと眠るのです。知らん顔で、わかったように。
子どもたちが学校へ出かけていって、夫が会社に出かけていって、私が仕事へ出かけていく。「いってらっしゃい」とも言わないけれど、ケージの中でくるんと丸くなって眠るのです。知っているもの、帰ってくること。
げみさんの描く少女と子猫。
人間を見上げる角度と、猫を抱く手。
決して雄弁ではないけれど、わかっていて、そばにいて、その命がおわったとしても、ずっと見守っていてくれる。
胸の奥のほうを
そっとあたためる優しい本でした。
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