ペンション メッツァ に泊まったら。
近ごろ、世の中が再起動し出して目まぐるしく、末端の作業を担う工房も忙しい。土日も、家に持ってかえって作業をしている。
休みを使ってのお家作業に、せっかくなのでお供はradikoだったりNetflixだったり。
「ペンションメッツァ」
小林聡美さんの、どこまでが芝居でどこからがアドリブなのかわからない自然な演技が大好きで。そんな彼女のペンションに、ふらりと自然に泊まりくるゲストたち。
「常木」という荷物も何も持たない謎の客人。ソロキャンプの女性とのテント。写真家の昔ながらの女性との焚き火。日本一周自転車の旅の若者。食料配達ヤマビコショップの配達員。などなど。
ペンション店主のテンコさんの料理が美味しそうで。どんなお客さんでも、自然に迎える。心地よい風と、木々のざわめきや鳥や虫の声と。朝や昼や夜に、ペンションの雰囲気もどことなく変わっていき、時の流れをその空気感で悟っていく。
私は、手を動かしながら、そのゲストとテンコさんのしっとりとした会話を聞く。
私の仕事。
安い工賃だけで、おおよそ採算の取れていない昔ながらの作業。もう担う人も少なくなり、周りが廃業していく中、かろうじて生き残ったがゆえに、仕事が集中して手が足りないほどの忙しさだけれど。手は2本しかないのだし、こなしていける仕事を地味にやっていく。作業をしている間は、ただただ単調な手仕事を丁寧に、淡々とこなしていく。世に出回る陶器に、母や私の作業の存在を気にとめる人もいないだろう作業だけれど。
ペンションメッツァへふらりと泊まりに行ったら、私はテンコさんと、どんな話をするだろう。
「どうぞ楽になさってくださいね」
美味しい料理と、静かな森と、
「ちょっと飲みます?」
と一緒にワインなんかをいただいて。
ぽつりぽつりと、自分の話をしてしまうのだろう。こぼすように、いつの間にか。
「さっきのお皿、私が絵付したものかもしれません」
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