まごわやさしい。
ふっくらと笑顔の似合う、つい「おかあさん」と呼ぶに相応しい女性が、たまたまついていたテレビの画面で笑っていた。
「〝食べることは生きること〟だから」
そう言って、コロコロと笑っていた。
思わず見入ってしまう。
彼女は、家族のために日々、ごはんやおやつを楽しんで作っていたけれど、ご主人をガンで亡くされ、娘たちは大人になり、誰かのためにごはんを作ることがなくなってしまった。心にぽっかりと穴があいてしまい、これではいけないと、彼女は一念発起し勉強、「ごはんカフェ笑」を営むようになったのだという(だいぶ掻い摘んで、ざっくりまとめてしまったけれど、西田敏行さんと菊池桃子さんのナレーションでほっこりする番組です)。
「『まごわやさしい』を心がけて作ります」
彼女の作るごはんは、一汁七菜、家庭料理の彩り豊かなご膳。地産地消の肥えたお野菜と、お味噌、どれも彼女が実際に食べて、その味に惚れ込んだものを使っている。
難しいことも、凝ったこともしていない。
大きなボールでザッザッと混ぜて、ちょこんと味見。
「んっ、おっけ。おいしっ」
副菜の小鉢がずらりと並ぶ。
帰ってからも自分で作りたいというお客さんには、作り方や味付けも教えてしまう。
「ご家族やお友達にも食べさせてあげてほしいじゃないですか」と、ワッハと笑う。
毎日のように通う独身男性は、空のお弁当箱を持参で「テイクアウト」までしていく。
「私、胃袋つかんじゃったかもしれない」
と、彼女はウフフと笑っていた。
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ここのところ、私は、ちゃんとごはんが作れていないなぁ、と思っていた。
毎日のことだから「作っては いる」けれど、どこか間に合わせだったり、ササッと作れるものだったり、お腹の膨れるものだったり。作るのめんどくさいなぁ、手間だなぁ、が先にたち、体を思って作ることや、食材を楽しみながら作ること、「まごわやさしい」を意識して作ること、から遠ざかっていたなぁと思い、省する。
里芋や、土付きニンジン、カブや大根を
「お~ぅい、いるか〜?」
と近所のおじさんが持ってきてくれてた。
道の駅の朝市には卸せない、キズのついたものや形の悪いものを「余っちまった」とわけてもらっていたんだった。
〝食べることは生きること〟
「ごはんカフェ笑」の、
おかあさんのふくふくの笑顔を思い出す。
土から出た不揃いの野菜たちをながめて。
個性的でかわいい。
風が冷たいから、
豚汁にしよっかな。