うつ病に対して正しく理解するために必要なこと
うつ病は心の弱さが原因ではない
『うつ病は心の弱さが原因ではない』
監修:近藤一博 漫画:にしかわたく
河出書房新社
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①「心の問題派」VS「脳の病気派」
《そもそもうつ病って病気なの?》
医学の祖ヒポクラテスは鬱病のことをメランコリーと呼んでいた。
Melan(黒い)+Cholê(胆汁)が体に溜まるとうつ病になると考えていたんです。
つまり古代ギリシャではうつ病は「身体の病気」だった。
しかし現代人は、「メランコリー」を「憂鬱」という心の状態を表す言葉として使っている。
ヒポクラテスの時代は胆汁でしたが、解剖学の発展で人体構造が分かってくると、問題は脳にあると考える「脳の病気派」が現れる。
しかし脳には目に見える異常は何もないため、うつ病は脳の病気という証拠は見つからなかった。
この結果をうけて優勢になったのが、「うつ病は心理的な問題」と考える「心の病気派」が現れる。
Question:芥川龍之介や太宰治が自殺した原因も、うつ病ではないのか?
当時は「うつ病のような性格」も「個性」と捉えられていたため、そう考えることもできるという一つの仮説。
②実は終わっている?セロトニン説
〜30年前から進歩なし。うつ病界の天動説〜
「30年前の説」と言うものの、セロトニン説が間違っていると言っている本は一冊もない。その上、脳内のセロトニンを増やす抗うつ剤 SSRI で実際にうつ病患者が治っているという事実がある。
そもそも「セロトニン説」は、1950年代とある結核病棟で使われていた「イプロニアジド」という結核の薬の副作用として、脳内物質モノアミンの濃度を高くしたが、モノアミン濃度の高くなった患者は陽気になった。
そこでうつ病の患者も、モノアミンが不足しているんじゃないかと考えられたのがきっかけだった。
そこから「モノアミン仮説」が誕生しこの説に基づいて抗うつ剤の改札開発が始まる。
1980年代開発された SSRI により、うつ病に劇的に効いた。
こうしてするセロトニン説が生まれた。
しかし、
①抗うつ剤で治る患者は50%
②タイムラグが発生する
③近年、脳内のセロトニンが測定可能になり測定してみたところ、うつ病患者のセロトニンは減っていなかった
という事実が発覚した。
うつ病の原因は一つではない
一つの原因としてウイルスがある。
【ウイルスとうつ病の関係】
①人が100%保菌しているヘルペスウイルス
②ヘルペスに対する抗体が体内に作られる
③抗体の制で脳内にストレス物質が増加
④ストレス物質によりうつ病になる
《解説》
ヘルペスとは口の横にできる“あれ”のことであるが、ヘルペスの量により抗体の値が決まってくるため、その抗体の値が高ければ高いほどうつ病になる確率は上がる。
それは検査でわかるため、企業はあらかじめ「うつ病になりやすい人は雇わない」となるのが予想される。それを防ぐため、ウイルスが原因だと大々的に発表できないというジレンマがある。
感想&考察
うつ病というのはいろいろな原因でなっていることは分かっているが、根本的に「これが原因だ」という「一つの原因はない」ということが分かる。
しかし本書にも書いてあるように、うつ病の原因というものは徐々に解明されてきている。
脳内ストレスを上げないための薬というものが開発されると、ウイルスが原因だということが大々的に発表できるようになり、その先にはうつ病患者にとって明るい未来が待っているような気がする。
そんな明るい未来が早くやってくることを心より祈りたい。
そして何より、私たちのうつ病に対する偏見や誤解を解かなければならない。
正しい知識を正しく理解して、現代病であるうつ病を持っている人も、健やかに生きられる世の中を作っていくべきだと思う。
私達に残された課題は山積していると実感した。