ラベリングのその先にあるレイシズム
1.文化放送「おはよう寺ちゃん」
文化放送2024.03.07「おはよう寺ちゃん」での藤井聡(京都大学大学院工学研究科教授)さんの発言が気になってしましました。
タイトルは『「付け焼き刃の対策は最悪の帰結を導きます」特定技能制度による外国人労働者、5年間で82万人受け入れ』というもので、藤井聡さんは・・・「こういう付け焼き刃の労働者確保対策は最悪の帰結を導きます。労働力ではなくて人間がやってくるんです。」と発言しているのですが、ここまでは同感できます。同氏は更に続けて・・・
ようするに、藤井聡さんは、違う文化、規範を有した外人が日本に押寄せて来るから、日本社会の秩序が崩れていく、社会が混乱すると主張しているのです。
移民というものが起こると治安悪化・秩序の崩壊が必然的に起こるという主張です。
これは明らかに、外国人にラベルを貼り、日本人とは違うという負の評価を与え、差別に繋げていくロジックになっていると思います。
2.川口市のクルド人「暴動」?
藤井聡さんが例として挙げている、2023年7月に埼玉県川口市で起こった「クルド人の暴動」ですが、これについては、以下の報道が参考になります。
これらのクルド人は主にトルコ出身の方々で、1990年代から分離独立を求めるクルド人組織とトルコ政府との対立が激しくなり、日本に難民申請するために観光ビザで日本に入国した人たちで、現在までに約9700人以上(法務省資料から一橋大学 橋本直子准教授算出)おり、そのうち、難民認定されたのは、たったの1人だといいます。
難民申請が認められず、退去が確定した外国人は、原則として退去まで、施設に収容されることになっていますが、近年、新型コロナの感染対策として収容所の密をさけるためや、人道的な観点から、施設の外で生活する「仮放免」の人たちが増加しているというのです。
このような方々は、国外への退去手続き中という立場のため、日本政府は就労や健康保険への加入を認めていません。医療費は10割負担で、病院で治療を受けることができず、生活に支障をきたす人も少なくないといいます。 埼玉県川口市のクルド人(約900人程度)は難民認定を受けれずに中途半端で劣悪な状態に放置されているのです。
それでは、川口市の治安はクルド人のせいで悪化したのでしょうか?
川口市の広報によれば、犯罪の認知件数は10年ほど前と比べて半数ほどになっています。
犯罪は半分に減っているけれど、問題は『体感治安』だといいます。
日本語で意思疎通ができない人が夜中に集まっていたら、恐怖を感じる人も多いから、なんとなく不安を感じ、治安が悪化していると思ってしまうようです。
日本政府の基本的には難民を認めない政策の犠牲者(クルド人等々)と日本政府が労働力不足を補うための特定技能制度や育成就労制度で日本にやってくる外国人労働者たちを同じ次元で語ることも問題でしょう。
難民認定されないクルド人の背景、事情を全く考慮せず、「暴動」というレッテルを貼り世論を誘導していこうとするのは、百害あって一利なしだと思います。でも、社会的に影響力のある著名な方々による、このような言説、報道が増えていくのかもしれません。
3.排除・同化それとも連帯?
日本で働く外国人労働者が200万人を超えました。
今後、さらに外国人労働者のお世話にならなければならない日本なのですが、はたして共生することができるでしょうか。
海外から来た方々に一方的に同化を求めていく、同化できなければラベルを貼り、差別していく、そんな生きづらい社会になってしまいそうで怖いです。
朱喜哲さんは「われわれ」の範囲を広げてゆくためには、人々の苦しみ、苦悩、困難さへの共感と自らの加害可能性についての自覚が大切だと説いております。
日本の難民認定は基本的には排除の論理です。「面倒な外国人は日本に来るな!」という排除の論理です。
育成就労ー特定技能制度は日本経済のための安い労働力確保政策です。安い労働力としてなら日本にきてもいいよ!育ててやるから!、でも、「日本の文化、ルールに頑張って同化しろよ!、まぁ同化したとしても二級日本人だけどね!」。ようするに、同化とは、外国人労働者を二級日本人にしていくことです。
連帯とは、朱喜哲さんがいうように、「わたしたち」の範囲を広げていくことです。
さて、日本は排除と同化の論理で外国人に相対していくのか、それとも、異なる文化、規範を有した方々との連帯を求めていくのか、今、岐路に立っていると思います。