言葉にした途端にウソになる?
自分の内的体験を言葉にするのは難しい。
「悲しい」という言葉の意味は誰もが知っているから、「悲しい」と言えば、悲しいのだという事実は伝わる。
でも、なぜ、どのように、どのくらい悲しいのかは、本人の内的な体験であり、内的体験をそのまま言語化して他者に伝えることはできない。
自分の内面を他者に正確に伝えることはできない。
言葉で伝えられることには限界がある。
もし自分の内的体験を正確に言葉で言い表せたとしても、その言葉が何を意味しているのか、どういう時に使われるのかという共通理解が成り立つ範囲内でしか、意味は伝えられない。相手には伝わらない。
加えて、自分の内的体験を正確に言葉で言い表すことなんて、その時点から無理がある。言葉で掬い取れる部分は、ほんのごく一部の氷山の一角に過ぎない。
そう考えてみると、自分の内的体験や、気持ち、感情を言葉にした時点で、すでにウソをついていると言ってもいいのかもしれない。
言葉で正確に掬い取れないから、結果としてウソになっているという意味で。
言葉を通じてしかコミュニケーションできないけど、言葉だけでは掬い取れないものの方が多い。
そのことをちゃんと認識しておかないと、伝えたつもりだけど伝わっていないということになる。
言葉で伝えることは難しい。
伝わらなくて当たり前。それくらいに思っておいた方がいい。