好きなものを探しに
その日、ウサギとカメは神田古本屋街をぶらりと歩いていた。靖国通りに面しているその場所は、時の重みを感じさせる書店が静かに軒を連ねていた。二人が足を運んだのは、ブックハウスカフェ」という絵本専門店だった。
「ここよ!」とウサギは言いながら、透明なガラスのエントランスを風のように駆け抜けた。カメはその場の空気を味わいながら、ゆっくりと後を追った。二人を出迎えたのは、香り高い特製カレーやさまざまな飲み物を楽しむ人々で賑わうカフェだった。「名前の通りカフェでもあるのね」と、ウサギは呟いた。
カフェの両側には天井まで届くかのように書棚がそびえ立ち、特設コーナーでは絵本の原画が丁寧に飾られていた。店のオリジナルグッズや、絵本のキャラクターグッズも丁寧に並べられており、店全体がそっと物語に包まれていた。
絵本の世界を十分に楽しんだ二人がお店に別れを告げると、次に「ここだ!」と言ったのはカメだった。彼が静かに歩み寄ったのは「鶴屋洋服店」というお店で、よく見ると、店の看板には小さく「元」と付け加えられていた。
さほど広くない店内は、所狭しとレトロな品々で埋め尽くされていた。布製のポシェットやカバンもぶら下がっており、かつてのテーラーの面影を残しているようだった。
「まるで昔のおもちゃ箱の中にタイムスリップしたみたいね」と呟くウサギの隣で、カメは一品一品に目が釘付けになっていた。
レトロな雑貨の世界を十分に楽しんだ二人がまた歩き始めると、ウサギは「文銭堂」の看板に目を留めた。店頭のショーケースで彼女の目を引いたのは「銭形平次最中」だった。「古書店が並ぶこの街にはぴったりだね。ちょうどお腹も空いたし、食べていこうか」とカメが言うと、二人はお店の入口をくぐった。
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