幸せの名はかき氷
「ここだわ! 」カメの手を引いたウサギは足を止めた。「人気店だから行列も覚悟していたけれど、今なら直ぐに入れそうだわ。私の日頃の行いのおかげね!」かき氷専門店の入り口で、彼女は満足そうに微笑んだ。
「私を悲しませた罰ね」と、ウサギに罰ゲームを言い渡されたカメは、全く心当たりのないまま、彼女の選んだかき氷専門店に連れてこられていた。ウサギが選んだのは『雪うさぎ』というお店だった。
「友だちが去年の夏からかき氷にハマっているのよ。毎日のように食べに行っているわ。それをずっと聞かされていたら、私も食べたくなったの」メニューを見ていたウサギはそう言うと、「私はこれね!『ずんだクリームチーズ』にするわ」
「それにしても店内が暖かいわね。友だちはカイロをお腹に貼って食べに行くと言っていたから、私もたくさん着てきたのにね」と、テーブル席に着いてもウサギは饒舌だった。
目の前にかき氷が運ばれ、一通り写真を撮り終わったウサギはさらに続けた。「サラサラの氷が口の中で直ぐに溶けるわ。噛むというより、飲んでいる感じね。このずんだは塩味が効いててとっても美味しいわ。あっ、カメくんの『やきいもみるく』も少しちょうだいね。わぁ、甘くて美味しい」
店を後にしてからもウサギは上機嫌だった。「カメくん、物語を書く時はまた相手をしてあげるわ。ちゃんと呼んでね」と、ウサギはカメの目をのぞき込んだ。カメに今日初めて話すチャンスが訪れた。「いや、僕は同じ過ちは繰り返さないから」口ではそう言いながらも、カメの目元は優しく笑っていた。
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