プリンセスを夢見て
その日、図書館の閲覧席でカメが物語の世界に浸っていると、汗だくのウサギが現れ、息を切らせながらカメの隣に座り込んだ。
「こんなに暑いと、冷蔵庫の中にでも飛び込みたくなるわね」
カメはゆっくりと顔を上げ、静かに言った。「それなら、冷蔵庫の中に飛び込もうよ」
頭の周りに疑問符を浮かべるウサギの手を取り、カメは駅へと向かった。二人がたどり着いたのは横浜アリーナだった。
アイスショーの会場に足を踏み入れた瞬間、二人はひんやりとした空気に包まれた。冷たいスケートリンクを目の前にして、ウサギは声を弾ませた。「なるほどね。本当に冷蔵庫の中にいるみたいだわ」
「小さなプリンセスがたくさん来てるわね。みんな綺麗に着飾って、魔法の世界のプリンセスに会いに来たのね。私は子どもの頃、ジャスミンが一番好きだったな」と、ウサギは懐かしそうに語った。
ショーが始まると、ミッキーマウスたちが会場を盛り上げ、アリエルやラプンツェルなど、次々とプリンセスたちが登場すると、銀盤の上を華麗に舞った。
「ここは涼しくて心地いいね」とカメが言うと、ウサギはそっと首を振った。「私、プリンセスに夢中で、熱くて仕方ないわ」
「雪が降る景色を見ていると、真夏だってことを忘れてしまいそう。まるで魔法で季節を飛び越えたみたい」彼女はうっとりとリンクを見ながら、アナ雪の歌を口ずさみ始めた。
「久しぶりにプリンセスになった気分だわ。でも、プリンセスには王子様がいるのよね。私にも王子様が現れてくれないかなぁ、なんて。ねえ、カメくん?」ウサギは照れくさそうにカメを見た。
さっきまで涼しさを楽しんでいたカメだったが、突然、身体が熱くなるのを感じた。二人は外の暑さを避けるためにここに来たはずなのに、いつの間にか違う熱が静かに二人の間に生まれていた。