![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/146661923/rectangle_large_type_2_364f8f9a690d5bed8a90a289ac0ab139.jpg?width=1200)
宙を飛ぶ大きな猫
その日、ウサギとカメはGINZA SIXの広々とした吹き抜けの下で足を止めた。二人の目は、天井から吊り下げられた大きなオブジェに釘付けになっていた。ウサギはカメの袖をそっと引いて、小さな声で囁いた。
「ねえ、見て、あれ…。私の目には岡本太郎の太陽の塔に見えるんだけど?」
カメは目を細め、その大きなオブジェをじっと見つめた。しばらくの間、二人の間に静かな時間が流れた。
やがて、彼は穏やかに口を開いた。
「僕にもそう見える。上に行けば、何かが分かるかもしれないね」
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/145445827/picture_pc_ffbbf00b0ef0be3642657226c4456215.jpg?width=1200)
二人はオブジェから目を離すことなく、エスカレーターを乗り継いで、静かに上の階へと進んでいった。
「宇宙船みたいにも見えるわ。ほら、宇宙服を着た猫ちゃんが乗ってる」
ウサギは、そっと指をさして囁いた。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/145449158/picture_pc_8252b3e0e06fb9f20476a18d963f1850.png?width=1200)
二人は「太陽の塔」の模型とオブジェの案内板の前を見つけ立ち止まった。
「オブジェを造ったヤノベケンジさんは、1970年の大阪万国博覧会の跡地の近くで育ったんだね」カメが案内板を読みあげた。
「それで岡本太郎と繋がっているのね」と、ウサギは頷き、穏やかな微笑みを浮かべた。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/145434298/picture_pc_2f8c63b3e3dae5e27da24519c9edf492.jpg?width=1200)
オブジェの興奮が冷めないまま、二人はさらに上へと進み、屋上庭園へと足を運んだ。屋上庭園に辿り着くと、まぶしい陽射しと、爽やかな緑が二人を包み込んだ。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/145434191/picture_pc_4e1294f85e1637d68444f98b0850669b.jpg?width=1200)
二人は周りのビル群を見渡しながら、緑に囲まれたデッキをゆっくりと歩き始めた。柔らかな風が頬を優しく撫でるたびに、日常から解き放たれたような感覚が広がっていった。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/145450240/picture_pc_dff045dedd1261ec13a6492646bbef57.jpg?width=1200)
「見て、銀座四丁目の交差点が見えるわ。こうやって上から見ると新鮮ね」ウサギは手をかざして、眩しさを和らげながら言った。
「ショッピング街も歩いてみたいわ」
彼女の微笑みには、新たな冒険への期待が込められていた。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/145434475/picture_pc_20ae148595206d6bf667407c8ce688a8.jpg?width=1200)