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戦艦三笠の記憶
図書館の静かな閲覧席で、ウサギが神妙な顔つきで本のページをめくっていた。カメが隣に座り、しばらくすると、彼女はそっと顔を上げて呟いた。
「今日は終戦記念日だから、平和について考える良い機会だと思って、戦争に関する本を読んでいたの」
「それなら、実際に戦争の記憶が残る場所に足を運んでみない?」カメは優しく彼女の手を包み込み、そのまま静かに立ち上がると、図書館を後にして駅へと歩き出した。
横須賀中央駅に降り立った二人は、自然と海の方へと足を向けた。潮の香りが漂う三笠公園で待ち受けていたのは、歴史を背負った戦艦三笠。過去の記憶を宿したその姿は、時を超えてなお力強かった。
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「すごい…これが、戦争で戦った船なのね」と、ウサギは思わず驚きの声を漏らした。
「この船はね、120年前の日露戦争で、東郷司令長官が乗って指揮を執っていたんだ」と、カメは静かに言葉を紡いだ。
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「大きな大砲ね」と、ウサギは目の前の主砲を見つめながら思わず声を上げた。
「こんなのが当たったら、船なんてひとたまりもないわね。そう考えるだけでも、戦争の悲惨さが伝わってくるわ」
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「戦争は決して過去のことじゃないんだ」と、カメは静かに言った。「今でもたくさんの人が戦争によって苦しんでいる。誰も戦争なんて望んでいないはずなのに、それでも戦争はなくならない」
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8センチ砲20門、45センチ魚雷4門
「戦争の記憶を風化させないことが、私たちの使命なのかもしれないわね」とウサギは静かに呟いた。「そうすれば、少しでも未来に平和を繋げることができるかもしれないわ」
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二人はそれぞれの想いを胸に、静かに戦艦三笠を後にした。やがて、ペースを合わせるように足並みが揃う。それは、平和への思いがそっと重なり合った瞬間だった。
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