光の世界の金魚たち
図書館の静けさの中、カメが書架の間を彷徨っていると、入り口の方から、突然、荒い息づかいが聞こえてきた。カメがそちらに目をやると、ウサギが膝に手を当て、肩で息をしているのが見えた。
「毎日こんなに暑いのに、無理しないでね」と、カメは心配そうに声をかけた。ウサギは息を整えながら、少し微笑んだ。
「走るのは大好き。でも、走り終わった後って…やっぱりきついわ」
「頑張ってる君と一緒に行きたい場所があるんだ」と、カメは少し照れくさそうに言いながら、彼女の指先にそっと触れるように、冷えた紅茶を手渡した。
銀座駅に降り立つ頃、ウサギの足取りは少し軽やかになっていた。二人は笑顔で目を合わせ、そのまま静かにアートアクアリウムの入場ゲートをくぐった。
「見て!なんて幻想的な柱なのかしら」
宙に浮かぶ幽玄な燈籠をくぐり抜けると、
ウサギは引き寄せられるかのように、輝く列柱に駆け寄った。
「え、ちょっと待って。これ、中に金魚が泳いでるの?」光の色がゆっくりと変わる柱の中で、小さな金魚たちが静かに、そして優雅に泳いでいた。
「ここは竹林をイメージしているのね。竹の中で金魚たちが泳いでるなんて、ちょっと不思議な感じね」
「金魚とお花の色合いがとても綺麗だわ。着物の帯で飾られているなんて、なんだかプレゼントされたみたいね」
「ここはただ涼しいだけじゃないのね。どの演出も幻想的で、まるで別世界に迷い込んだみたい。こんなふうに心を奪われるなんて、思ってもみなかったわ」
うちわを片手に、すっかりご機嫌なウサギに向かって、カメがそっと囁いた。
「もうひとつ、君に見せたいものがあるんだ。気に入ってもらえるといいな」
二人は、静かにTHE HOUSE K.MINAMOTOに移動した。ウサギは店内を見回しながら、小さく呟いた。「ここって、もしかして…?」
心が期待でふくらむ中、金魚がふわりと泳ぐかき氷が、静かに彼女の前に置かれた。