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女性の輝きを支えるヨガ的骨盤底筋トレーニング:理論と実践

女性の輝きを支えるヨガ的骨盤底筋トレーニング:理論と実践

骨盤底筋は一つの筋肉ではなく、骨盤の底にハンモック状に広がる筋肉群です。排泄や生殖機能を支え、体幹や姿勢の安定にも欠かせません。特に女性にとっては骨盤底筋ケアはとても重要です。

今回は、骨盤底筋がなぜ女性に大事なのかに注目しながら、実践できる簡単なポーズのご紹介もしていきますね。

理論編からのスタートですが、ご存知の方は後半の実践編に進んで構いません。今日からどんどん鍛えちゃいましょう。

骨盤底筋ってどんな筋肉?

まず骨盤ですが、左右一対の寛骨(腸骨・座骨・恥骨が癒着して一つの骨になったもの)、仙骨、尾骨から構成されます。左右の坐骨(座った時に床に着く骨)の間が骨盤底です。

この骨盤底に下から臓器を支えるようなかたちでハンモック状に広がる筋肉を総称して「骨盤底筋群」と呼びます。

骨盤底筋群は、肛門挙筋、尾骨筋、深会陰横筋、尿道括約筋、肛門括約筋から構成されています。ここには意思で動かすことができる随意筋に加え、自律神経支配の不随意筋が混在しています。

この筋肉群は年齢や生活環境の変化によって衰えやすい性質を持ちますが、そこには不随意筋が混在していることもその一因かもしれません。また、女性にとっては、人生の節目ごとに大きな影響を受けやすいのが特徴です。

骨盤底筋の筋力が失われる3つの高リスク要因


1. 妊娠・出産

骨盤底筋は、妊娠中には胎児と羊水の重みによる負荷、ホルモンや血流の変化等で影響を受けます。さらに出産時には大きなダメージを受け、産後は子育て時期特有の無理な姿勢によるコリや痛みが生じやすくなり姿勢悪化のリスクも。姿勢の悪化は骨盤底筋の筋力低下を加速させる可能性があり、早めの対応が効果的です。

2. 更年期の変化

更年期には筋の弾力や強度を保つエストロゲンの分泌が減少し、筋力低下が起きやすくなります。生殖機能の低下に伴って筋力を失いやすくなる骨盤底筋は、特に初期に衰えやすいという性質があります。骨盤周辺への血流を促し、筋力維持を心がけましょう

3.運動不足と現代の生活習慣

座りっぱなしの生活運動不足は、骨盤底筋が不活性の状態に。さらに、家事や仕事で忙しい女性は、データによれば男性より平均の運動時間が短いことがわかっており、特に中高年層でその差が顕著だそう[1][2]。筋肉を意識的に使って、骨盤周りの筋力低下を防ぎましょう


骨盤底筋の筋力低下が起きやすいタイミングがご理解いただけたのではないでしょうか。運動不足は全世代に関わることですが、2と3は重なり合うことも多いはずです。

では、骨盤底筋が衰えることによってどのような問題が起きるのでしょうか。

骨盤底筋が衰えることで起きるリスク


骨盤底筋の筋力低下によるリスクは以下のようなものがあります。

尿もれ・排泄トラブル
骨盤底筋が弱ると、膀胱や直腸を支える力が低下し、尿漏れや便秘が起こりやすくなります。出産後や更年期以降の女性に多い悩みです。

腰痛や姿勢の悪化
骨盤底筋は体幹の一部として姿勢を支えています。筋力が低下すると骨盤が不安定になり、腰痛や猫背の原因になります。

子宮脱や臓器脱
骨盤底筋は、膀胱や子宮、直腸などの骨盤内の臓器を支える役割を持ちます。衰えると臓器を支えられなくなり、子宮や膀胱が下がって膣から突出する子宮脱や、直腸が突出する直腸脱などが起きることも。出産経験者や更年期以降の世代が高リスクです。

④感覚の鈍化やセクシャルウェルネスの低下

骨盤底筋が衰えることで血流が悪化し、骨盤周りの感覚が鈍くなることがあります。性的な満足感の低下や自己肯定感への影響も懸念されます。


実践① 微細なエネルギーを制御して、骨盤底筋をコントロールする方法〜Bandha(バンダ)

身体とエネルギーの統御を目的とする「バンダ」というヨガ独自の概念をご紹介します。身体の特定の部分を引き締めることで、微細なエネルギーの流れを制御し、体内に集中させることが目的です

特定の部分というのは以下の3つ。

1. 喉(甲状軟骨と胸骨の間)ジャーランダラバンダ
2. 横隔膜から腹直筋周辺 ウディヤーナバンダ
3. 骨盤底 ムーラバンダ

このうち、特に骨盤底筋と関係するのはもちろん3。骨盤底筋を引き締め、エネルギーを体の底から引き上げます。バンダについてもまた近いうちに記事にしますので、今日はムーラバンダを取り上げ、骨盤底筋トレーニングの準備をしましょう。

ムーラバンダを意識しながらアサナ(ヨガのポーズのこと)を行えば、いつもの練習も骨盤底筋トレーニングとしての効果が高まります。アサナの安定はもちろん、次第に骨盤底筋群が鍛えられ、日常生活に役立つはずです。

まず、ムーラバンダを意識する練習から始めましょう


ムーラバンダを意識する方法

骨盤底にあるチャクラのエネルギーを持ち上げて腹部で炎として浄化する、
伝統的にはそんなイメージで捉えられています

①姿勢を整える
背筋を伸ばし、骨盤がまっすぐに立っている状態に保つ。
*最初は座ってやるのが簡単です
*骨盤は恥骨とおへそを結んだラインを床と垂直にした【ニュートラルポジション】(写真下)を保ちます。このポジションに整えるだけで骨盤底筋が目を覚まし始めます

左が骨盤ニュートラル、右は骨盤後傾
最初は難しいのでお尻の下にヨガブロックやクッションなどで高さを出します

②骨盤底筋を意識する
この記事でも紹介した図を思い出してイメージしましょう。骨盤がニュートラルのまま腸骨を左右に引き離します。尿を途中で止める感覚、または肛門を軽く締める感覚を再現してみるのも良いでしょう

③尾骨を意識する
肛門を真下に向け、尾骨を内側に軽く引きます。会陰部を中心に持ち上げるようなイメージで骨盤底筋を引き上げます

④呼吸を合わせる
息を吸いながら骨盤底筋を引き締め、吐きながら緩める。この動きを繰り返し、収縮とリリースの感覚を深めていきましょう。強く締めすぎなくても、十分な効果が得られます


非常に繊細な感覚で、大きく身体が動くわけではないため、最初はわかりにくく感じる方もいらっしゃるでしょう。疑問点があればコメント欄をご利用くださいね。スタジオに通っている人はもちろんクラス前後に聞いてくれてもOKです。

実践②応用編:ポーズの中でもバンダを意識しよう


ではさらに、動きながらバンダの意識をしてみましょう。まずは日常でできる椅子を使うワークから始めてみます。座って意識するより「やりやすい」と感じる方もいるかもしれませんね。

1. 座って行うキャット&カウ

反るときに吸い、吐きながら背骨を丸める。間にニュートラル状態を意識することも忘れずに

①椅子に座り、骨盤をニュートラルに整える
②頭の後で手を組んで肘を張り、肩はリラックス
③息を吸いながら骨盤を前に倒し(骨盤前傾)、肩甲骨を寄せながら胸を開く。吸い切った時に最も胸が開いているように
④息を吐きながら骨盤を後ろに倒します(骨盤後傾)。この時、ムーラバンダを意識しながらゆっくりと背中を丸める。頭まで押し込み息を吐き切る
⑤呼吸に合わせて①~④の動きを何度か繰り返す。移動の際に骨盤のニュートラルポジションを通るようにするとなお効果的

2. 橋のポーズ(セツバンダーサナ)

ヒップアップ効果があるポーズとして知られている橋のポーズですが、尾骨を膝に向けるように心がけると、骨盤底筋トレーニングとして有名なケーゲル体操とも似ています。体幹とお尻の両方を鍛えられるポーズです


①仰向けになり、骨盤幅に足を開き両膝を立てる。手のひらは上向き
②尾骨を膝に向ける
*この時、ムーラバンダが活性化しているはずです。意識してみましょう
③手の甲で床を押しながら、胸と膝を一直線になるところまで腰を持ち上げる(写真②)このまま止めてもOK。
④さらに胸と顎を近づけて肩甲骨を寄せる。背中が反るとムーラバンダの意識が外れそうになることにも注意してみましょう
⑤数呼吸キープした後、背中を丸めてゆっくりと背中を床に下ろす

3. ランジ

①片膝立ちになり、後肢のつま先を立てる。手は骨盤に
②後肢の膝を床から離し、伸ばす
③後肢側の腹が横に流れているのを前に向け直し、骨盤を正面に
④息を吸いながら背筋を伸ばし、吐きながら尾骨を下に向け、骨盤をニュートラルに。*反り腰になりやすいポーズなので、改めてバンダを意識して尾骨をコントロールして見ましょう
⑤腰に置いた手で骨盤の向きに注意しながら数呼吸保持した後、片膝立ちに戻る
⑥反対側も同様に


最後に

女性の人生には月経や更年期といった身体の変化、妊娠や出産を経験する人もいれば、これらに関わらない選択をする人もいます。いずれのライフイベントも、身体だけでなく、日常生活や社会との関わり方に影響を及ぼします。

骨盤底筋ケアの必要を感じていても、エクササイズ時間にもジェンダーギャップがあり、限定された時間の中で行う大変さを感じる方もいるでしょう。だからこそ効果的な方法でエクササイズやケアを行うことが大切です。

これを読んで実践したあなたが素敵に変化をすれば、自信に繋がるだけでなく、ケアの重要性や変化する喜びが周囲に広がっていく可能性もありますよね。忙しい毎日の中でも、少しずつ身体と心を整える楽しみを見出してもらえれば嬉しいです。

【資料】
[1]厚生労働省 令和4年「国民健康・栄養調査」の結果 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_42694.html
[2]厚生労働省 健康日本21 (身体活動・運動)https://www.mhlw.go.jp/www1/topics/kenko21_11/b2.html

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