今夜は十六夜、
奥山に紅葉踏み分け人も泣く十六夜の月厭世の秋
(OKUYAMA NI MOMIJI HUMIWAKE HITO MO NAKU IZAYOI NO TSUKI ENSEI NO AKI)
わが身ひとつの秋にはあらねど、やっぱり秋は物悲しい
感じがする。
高い空に澄んだ空気。月は日によっても気分によっても
遠く近く、感傷はいつも身近にある。
分け入る山も鹿の鳴き声も日常にはないけれど、
涼しい秋の風と目に入る深い色たちが言葉に
しづらい淋しさを連れて来る。
昨日は夜空いっぱいに月が満ちて、月光が破魔矢みたいに
清廉な輝きを地上に放っていた。
今夜は月の出は遅い。
今年の十五夜の翌日に来る十六夜はとうに
過ぎてしまったけれど、今日は満月の翌日だから、
今夜の月も十六日目の月だ。
ペシミスティックな夜と季節に感覚を漂わせながら、
星も月もない夜道を帰る。
読んでくださって、どうもありがとうございます** きらめく50音の中から掬い上げた31文字が、 あなたに届くとうれしいです。 今日も明日も、あなたの毎日が素敵な日々でありますように。 あなたの人生と世界が、優しいものでありますように。 すずき春