見出し画像

#378 こころ を捉えるために 認知科学講座①②③④

本文1,200字

認知科学講座/東京大学出版
『心と身体』
『心と脳』
『心と社会』
『心をとらえるフレームワークの展開』

 新年度に備え、教育・教職の授業で扱う児童生徒の心理について知見を深めている最中。

 面白半分にアホなことを書くことの多い私であるが、こう見えて人目に触れないところでは、猫と一緒にゴロゴロしたりダラダラすることに余念がない。

 心身に関する学びを深めることによって、フィジカルとメンタルのコントロールもサル知恵からヒト知恵に進化するに違いない。

 これを若い頃にやっていたら、私はMLBでイチローと共に野球殿堂入りしていたかもしれない。我が人生、そこだけ悔いが残る。
我、悔い改めよ。

 未来に何も期待が持てないと考え、虚無感や喪失感に苛まれるのは精神の問題以前に、肉体的な疲労やストレスが原因である場合が多いと言われている。

 「よく動いて、よく食べて、出すものは出して、よく眠って、よく考えて」というサイクルの中のどれかひとつでも歯車が狂うと、心身のバランスが崩れて正常な思考が働かなくなる。

 時間に追われる毎日を過ごしていると、大切なことも、ほんの小さなことも見過ごしてしまい歯車が少しずつ狂っていく。
 気に病むのは「心持ち」のせいなのか?

 私たちを支配している時間は直線的であるが、それは時間観念のひとつのあり方に過ぎない。体内では確実に無意識に体内リズムとしての時間を刻んでいる。
 タイムマネジメントも大切だが、私たちはそこに医学的なことと共に認知科学や心理学を導入して、少しでも上手くコントロールすべきなのだろう。

 認知科学が登場する以前は、心や脳はブラックボックスのような捉え方をしてきた側面があり、そこに哲学と宗教が混ざり合い、時に「不思議」「スピリチュアル(霊性、精神性、神秘性)」も入り込み、それがビジネスやカネと結びついてきたりもした。

 認知科学は、心と知性を科学的・学際的に探究する学問として50年代に登場し、日本で注目されたのは80年代あたりからだという。

 伝統的な医学の立場からは単なる情報の入り口と出口とみなされていた「身体」は、現代の認知科学では知性の重要なパートナーであることが明らかになっている。

 脳科学によって、脳が備えている神経ネットワークの驚異的な働きが解明されはじめている。
 私たちの心は、身体、脳にとどまることなく、ヒト、モノ、カネ、コトのネットワーク、すなわち社会との関わりの中でさまざまな調整を行いながら日常生活を巧みに営む基盤となっている。

 それでも難しい「こころ」と「からだ」

 大学に勤めてこの4年間で学生との面談(お悩み・愚痴傾聴&コーチング&カウンセリング)が延べ400件を超えた。
 そこでわかったのは、問題を類型化することはできても、実際の対応は十人十色であるということ。私の手に負えないケースは公認心理士や精神科医につなげてきた。
 誰かにつなげてそれで終わりということはなく、専門家や関係者とのケース会議で新たな課題が見えてくる。

 小中高校の教員や行政職員と連携して、不登校の児童生徒や、ひきこもり青年の事例研究や家庭訪問を行う中で、当事者だけでなく、保護者の思いを酌み取るための方策や理解を求める説得も重要だと感じている。

 何かと足りないことの多い私だ。
「自分の社会性はどれほどのもんだ?」と不安になることがある。

 自分自身の本源的な社会性は、さまざまな行動によって露わになる。改めて「心と身体」「心と脳」「心と社会」「心をとらえるフレームワークの展開」を学ぶ機会を得たと受け止めている。

 春から再び学生たちと共に学ぶ。

【主要目次】
認知科学講座①『心と身体』
序 身体性認知科学から「ポスト身体性」の認知科学へ(嶋田総太郎)
1 自己認識――身体的自己と物語的自己(嶋田総太郎)
2 身体性認知科学における言語研究の射程(佐治伸郎)
3 思考・創造とエンボディメント(阿部慶賀)
4 心と身体を結ぶ内受容感覚――感情と記憶から考える(寺澤悠理)
5 身体表象と社会性の発達(宮崎美智子)
6 知能・身体・関係性(長井隆行)
7 バーチャルリアリティによる身体拡張と自己の変容(鳴海拓志・畑田裕二)
8 身体性に基づいた人間科学に向かって(田中彰吾)

認知科学講座②『心と脳』
序 認知科学研究における「脳」研究の来し方行く末(川合伸幸)
1 知覚の神経基盤(楊 嘉楽・山口真美)
2 恐怖学習と脅威検出の神経機構(川合伸幸)
3 深層学習による脳機能の解明(林 隆介)
4 脳と社会的認知(平井真洋)
5 脳―環境―認知の円環に潜む人類進化の志向的駆動力――三元ニッチ構築の相転移(入來篤史・山﨑由美子)
6 意識の神経基盤――クオリア構造と情報構造の関係性を圏論的に理解する(土谷尚嗣)
7 心の自然化(鈴木貴之)

認知科学講座③『心と社会』
序 関係性の認知科学の多様性(鈴木宏昭)
1 社会的認知の発達と可塑性・多様性(千住 淳)
2 認知と感情の文化差(石井敬子)
3 状況論とポスト状況論――アクター・ネットワーク・セオリーとポスト資本主義の狭間で(香川秀太)
4 日常生活場面の相互行為分析(高梨克也・坂井田瑠衣)
5 協調学習を通した知識の転移(益川弘如)
6 ヒューマンエージェントインタラクションと環境知能(小野哲雄)
7 科学・身体・他者――哲学的観点から見た関係性の認知科学の可能性(長滝祥司)

認知科学講座④『心をとらえるフレームワークの展開』
序 第三世代の認知科学の可能性(横澤一彦)
1 統合的認知(横澤一彦)
2 プロジェクション科学(鈴木宏昭)
3 内受容感覚の予測的処理(大平英樹)
4 自由エネルギー原理――ホメオスタシス維持によるあらゆる脳機能の実現(乾 敏郎)
5 圏論による認知の理解(布山美慕・西郷甲矢人)
6 記号創発ロボティクス(谷口忠大)
7 全脳アーキテクチャ――機能を理解しながら脳型AIを設計・開発する(山川 宏)