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#159 笑うから楽しい

#155の掲載に関連して改めてピックアップ。

脳研究者の池谷裕二教授は、笑顔と脳の関係を説いている。
笑顔が行動を変え意識を変えるという話だ。

私たちは「楽しいから笑う」と考えている。

しかし、脳研究では「笑顔をつくるから楽しい」とし、私たちが認識している一般的な「因果関係」「原因と結果」とは逆転している。

笑顔の表情をつくるとドーパミン系の神経活動が変化するという。

ドーパミンは快楽や幸福に関係した神経伝達物質なので、笑顔をつくることによって楽しくなるということらしい。

そうだ、末期患者の緩和ケアも「笑い」「笑顔」が大切だと言っていたな。

身体の変化が先で脳が後という順番は、笑顔だけに限らないそうだ。

恐怖や嫌悪の表情が脳に恐怖や嫌悪の感情をもたらすという。

表情だけでなく姿勢も同様なんだかとか。

姿勢に関する実験では、背筋を伸ばした姿勢と背中を丸めた姿勢を比較すると、姿勢を正したほうが自信を持てる結果が出ている。


やや飛躍した話になるが、陶芸の先生から教わった「学びの身体技法」を思い出し、今ごろになって腑に落ちた。

大工や陶芸、工芸、板前、洋裁・手芸などの職人技は、すべて伝統的な所作の文脈の中に身を置いて、師匠や指導者の仕事ぶりを目の当たりにしながら「身体で覚える」ものだ。

完成品をイメージしながら勘を働かせ、コツ、呼吸、さじ加減がものをいう世界だ。

なぜそうなるのか理屈で説明しづらく、いわば奥義として受け継がれているものが多い。

陶芸を体験した時の話だ。

粘土をこねるところから始まり、腕、肩、指先の関節と筋肉の動きを感じなら、身体をその作業になじませていくのは正に身体技法だ。

粘土の成型、乾燥、素焼き、下絵、釉薬うわぐすり、本焼きの一連の作業はすべて、理屈ではなく感覚として身体に刻み込んでいく。

神経を研ぎ澄まし、黙々と身体を動かす。

そして一定の形と質の陶器が焼き上がる。

先生の作業は、勘どころをきちんと押さえた無駄のない動きを通して、素晴らしい作品を創り上げる。

教える→学ぶ」とは別次元だ。

伝統芸の世界で言う師匠と弟子の間にある「仕込み→仕込まれる」という世界だ。

「考えるな、感じ取れ!」
Don’t think,fell! 
「燃えよドラゴン」のブルース・リーのセリフだ。

考えてみれば、いかなる教科・技芸、武術であれ、身体技法が先にありきだ。

勉強は、まず椅子に座り机へ向かう。
教科書を開く。
ペンを持ち書く。

学びの空間における身体技法を改めて考えると、教師自らが学問や技芸に熟達し、その道に精通した「知の職人」として振る舞う必要がある。

万能である必要はない。
子どもが憧れる技芸や知に関する奥義を持つ大人でありたい。

学ぶことは楽しさばかりではない。

教師は、学び続けることの苦しさや忍耐の道を通過してきた経験者ではないか。

そうしたことを無言のうちに伝えられる教師も必要だ

そんな中でも、教師が笑顔で授業をすれば子どもも笑顔になれるはずだ。

口角を上げるだけで気持ちが変わるという。

笑おう。