なぜ頭のよい人は「3つ」で脳内整理をするのか?
頭がよい人って、どんな脳の仕組みなんだろうか?
IQには自信がない僕は、その昔、ふと考えたことがあります。結論から言うと、多くの人は”脳内整理力”に長けており、物事の本質を見極める能力が高いんですね。そのため、誰よりもスピーディーに成功の鍵を見抜き仕事で成果を生み出しているようです。
つまり、
頭の良さ = 脳内整理力の高さ
そこで、今回は「脳内整理能力」に着目し、どうすれば僕たちはスピーディーに仕事で成果を出せるようになるのか?そんな問いに挑みたいと思います。これは先日、スクーというネット番組でご披露した内容のダイジェストレポートになります。
1.マジックナンバー「3」とは?
脳内整理の方法論は様々ありますが、使い勝手が良い「日常使いの方法論」を今回はご紹介したいと思います。それは「3」という数字にこだわることです。この3という数字はラッキナンバーというわけではありません。脳内の情報を整理するときに「3つ」(の切り口)を使うと、なんでも整理がしやすくなるという意味です。
実際に、世の中には不思議と「3つ」の切り口を使って整理されているモノやコトがあふれています。
(例)
〇〇ベスト3、世界三大美人、上中下、心技体、報連相、過去/現在/未来、陸運/海運/空運、3度目の正直、3年目の浮気 (笑) 他
3つの切り口で、情報が整理されて世の中がスムーズに回っているのならば、意図的に3つの切り口を活用すれば整理がしやすいのではないか?そんなところから、「3」をつかって整理するコツを探求してみました。
探求してみた結果、「3つ」で整理されている事柄は続々と出てきました。
これらは一度は見聞きしたことがあるパターンではないでしょうか?
なるほど!頭がよい人は、実はこのような「3つ」の切り口をつかって瞬時に頭を整理するから、仕事でも成果につなげやすいのではないか。「頭の良さ=脳内整理力の高さ」という僕の仮説は、ますます解像度が上がってきました。
だとすれば、この「3」という切り口をつかさどる数字は、魔法のような数字「マジックナンバー」と呼んでもいいのではないか?そこでさらに探求を深めていきました。
2.なぜ「3」を使うとよいのか?
感覚論で言うと、なんとなく3つ程度の情報が”ちょうどいい”し、”安定感”を感じます。言葉づかいとしては、〇〇ベスト10や、7つの~という表現もよく聞きます。
しかし、10や7では、一瞬で頭に入らず、整理するうえではやや細かすぎるように思えます。そこで、まずはザックリとでもよいので3つ程度に整理することがよりシンプルである。そんな心理状態になります。
では、2つに大別して整理するのはダメなのか?
もちろん、2つでおさまりがよいケースもありますが、2つだと情報として少し物足りず、選択肢で考えると2項対立の発想だけで視野が狭くなるリスクを伴います。そこで、いったんは3にこだわって整理をしてみるのが良いというのが僕の仮説です。
「3」を使って世間に自分(自社)のプレゼンスを高めた例は、実際に枚挙に暇がありません。
たとえば、Appleのスティーブジョブズは、はじめて2007年にiPhoneを世界に発表した際、こう言いました。
iPodと電話、インターネット通信デバイスの「3つ」を盛り込んだ1つのデバイスとして”電話を再発明する”
また、牛丼の吉野家は企業のコンセプトをこう表現しています。
「うまい・やすい・はやい」の「3要素」を志向します。
考えてみると、カメラも三脚で安定感を出し、スピーディーに片づけもしやすくなっていることを考えると、「3」は心理的にも物理的にも”ちょうどいい”整理用の切り口なのかもしれませんね。
3.脳内整理の達人になるためのツボ
では、いったいどうすれば、脳内が3つの切り口で整理できるように切り替わるのでしょうか?自主練で場数を踏むこと。これに尽きます。日常生活の中で常にいったん3つで整理を試みるのです。
例えば、次の長期休暇に行きたい場所3つを挙げるなら?今度の友人との食事、おすすめの店を3つ挙げるなら?本日の重要な仕事ベスト3を挙げるなら?次のキャリアの選択肢を3つ挙げるなら?
このように、自分に質問を投げかけながら脳に3つで整理させる習慣をつけていきます。ところが、ここである問題が発生します。
3つではおさまりがつかないよ。情報は5つくらいあるし。
いやぁ、1つか2つくらいしか選択肢が出てこないよ。
これでは整理がつかないのでは?と。
こんな指摘をよく受けます。
おっしゃる通り、すべてのモノやコトが「3つ」で整理できるほど、万能な”特効薬”ではありません。あくまでも、「3つ」にこだわるだけでも、おおかた整理がしやすいため、3を基準に整理を試みてはいかが?というものです。
自分だけではなく、まわりの方にも3つで整理するための質問を投げかけてみると、面白いですよ。相手の志向性や思考パターンが垣間見えてきます。たいてい、1つ目の選択肢は、ありきたりで「まぁ、そうだろうね」って感じに。2つ目も、想定の範囲内。ところが、3つ目で、独自性か新規性が発揮されてくるため、普段の会話、会議などでも3を多用してみるのです。
ちなみに、僕が好きな食べ物3つを挙げて!と言われたら、すかさず「メロン、焼き鳥、白子」と挙げます。多くの人からすると、3つ目が印象的なようで会話が弾むなんてことがよくありますよ。
4.仕事がデキる人の脳内整理活用テク
それでは、ここで仕事の場面で、どう「3の整理法」を活用すればよいのか?について「3つ」ご紹介します。
(1)段取り
仕事はPDCAで高速回転しよう!なんて言われますが、はじめの「P(計画・段取り)」の段階から、「3」の整理力は威力を発揮します。効率、時間管理などで頭を悩ます人も多いことでしょう。
そこで、段取りや時間管理に「3つの切り口」で整理する方法の導入をおすすめします。
僕の場合は、1日を3等分にし、仕事の重点テーマの割り振りをして整理をしています。
たとえば、朝は頭がさえているため「頭を使う仕事」を中心に段取りを組みます。提案書の作成、戦略の立案、執筆など。昼は眠たくなる時間帯のため、「手足口を動かす仕事」を中心にします。何も考えずに入力だけのPC作業、顧客へ訪問、社内研修や会議などです。
最後に夜は「自己啓発や休養」にあてて、頭の切り替えを行うようにしています。なんとなくで仕事の段取りをするのではなく、重点テーマを設定し、3つの時間帯に割り振ることで、最大のパフォーマンスが出るように工夫する方法です。
(2)スケジューリング
また、スケジュール管理も同様に「3つ」の整理法を使います。
スケジューラーには単純に予定だけを入れることはありません。色分けが大切です。予定の種類に応じて3色に色分けすることで、適切な時間配分も直感的(視覚的)に現状把握できるようにしています。こうすることで、時間配分の良し悪しの判断や調整がしやすくなるためです。
ちなみに僕の場合は、赤は他人との予定、緑は自分ひとりで行いたい仕事、青はプライベートという色分けにしています。赤色で埋め尽くされるのか、それとも青の比重を増やすのか?理屈ではなく感覚的にもワークライフバランスのチェックを3色の仕分けで行いやすくなります。
(3)ノート術
ここでは、仮にスケジュールの中で会議やミーティングが多いとしましょう。その場合、ノートやホワイトボードへの板書で3の整理術はフル活用できます。
ノートやホワイトボードに縦線2本ひいて「3分割」して記録をとります。
これにより、単なる記録に終わらず、確実に行動につながる整理が可能になるからです。
例えば僕の場合は、「事実」「示唆」「行動」と3分割します。事実として”顧客Aが売上の8割を占める”という報告が入れば、示唆を考えます。”A社の依存度を下げないとヤバいな”と。最後に、”で、今後どうしよう?”と行動を考えて記録すれば、確実に仕事が前進していくのです。
ノートや板書は記録だけではなく、行動につなげるための整理をしなければ意味がないため、行動の項目を入れた3分割が有効なのです。
5.キャリアを救った3つの選択肢
人生がピンチに陥った時、こと進路の悩みに関しても「3の整理法」で壁を突破することができます。
今年で僕は起業してから20年目に入ります。思考の整理術を人に説いたり、企業研修を行う今とは異なって、起業当初はパソコン教室の経営やインストラクターの派遣のような事業をしていました。
ところが、1年を過ぎたころに売上は急降下し、預金残高は毎日急減というパニック状態に陥りました。そこで自分の心を落ち着けるためにとった行動、それが「3つ」で選択肢を整理するという手法でした。
不思議と、選択肢を紙に書き出すだけで「あれ、まだ俺には打ち手があった。残された道はあるので、パニックになっている場合ではない」と奮い立ったことを昨日のことのように覚えています。
仮に目の前の事業がうまくいかなくなっても、事業のテーマを転換することだってOKのはず。現金商売でラーメン屋をやったっていい。今の事業に固執しているのは自分の思い込みだったと色々なことに気づきます。
当時はまだ20代だったため、もう一度企業に就職することだってできたでしょう。さらに、一時的にバイトで苦境を乗り越えるという手もある。恥も外聞も捨てるだけだ!
色々と選択肢を考えましたが、結局、頭の中が堂々巡りするだけのため、3択が次の一歩を踏み出す上で”ちょうどいい”着地点だったのです。
6.ビジネスの戦略は3点セットで考える
さて、20代の頃の苦境に陥った話は、まだ続きがあります。3つの選択肢を出して上から順番に取り組んでいったのですが、その際に「3つの視点」で今後の成長戦略を考えていきました。
「誰に?」「何を?」「どのように?」提供するのか。
この3つの視点です。
なんだ、こんなことか。目新しくもないし、基本すぎることじゃないか?きっと、あなたはこう心の中でつぶやいたことでしょう。そうなんです、この基本の3点セットの視点に目新しさはありません。いや、目新しさなどいらないのです。原点回帰する基本的な整理の軸に頭を切り替えることが大切です。
「誰に」・・・どんな顧客に?
「何を」・・・どんな商品や付加価値を?
「どのように」・・・どうアプローチする?
たとえば僕の場合、個人向けの教室事業がコアだった対象を、企業向けに変えました。また、商品をパソコンを習いたい人ではなく、企業内でスキル習得をしたいというニーズに研修プログラムを売ることに変えました。
最後に、広告や訪問営業ではなく、ブログやセミナーによる情報発信で先方から問い合わせをもらえるようなマーケティングの仕組みに変更しました。
あれこれ、人に相談しビジネス書を読みあさったところで、結局、頭が整理できなければ自分なりの正解がでてきません。そこで、たった3つの視点で整理することで、飛躍のキッカケをつかめるようになったのです。
この3点セットで整理する戦略はビジネスの展開以外にも使えます。
たとえば、プレゼンする場面、事前に「誰に、何を、どのように?」伝えるべきかを充分練ることで、話し方がうまくなくても相手に刺さるプレゼンが可能になります。コミュニケーションスキルとしての整理にも使えるというわけです。
7.一瞬で相手を口説くシナリオ整理法
先ほどは、「誰に・何を・どのように」の3点セットで戦略を立てることは、コミュニケーションにも活用できるとお話しました。では、具体的にはどうするのか?についても、ここで触れておきます。
相手によって伝え方は変える必要があるため、相手がどのような性格で、どのような言葉が響くのかなど、人物の読み解きは大前提として必要です。
次に、もっとも伝えたい結論を明確にし、その理由を考えていきます。理由がないと聴き手の納得感が得られないことは言うまでもないことでしょう。ポイントは、理由の中身をどうするかという点にあります。
理由次第で、一瞬で口説くことが可能になるのかどうかが決まってくるからです。効果的な理由を準備できれば重みがでてきます。
そこで、おすすめするのが、相手を口説く際に、結論に対する理由は「3つ」準備することです。
理由は1つだけだと、聴き手からすると重みを感じません。2つ目になると、「おっ、よく考えてきたな」と思われる一方で、「まぁ、想定の範囲内だけどね」となるリスクがあります。
ここで3つ目の理由の登場です。
3つ目に独自性や新規性のある理由を準備しておくと、意外性から聴き手の気をひきつけることも可能になるわけです。
では、理由を複数準備することが説得力につながるのであれば、5個以上にすればいいのじゃないか?という指摘を受けることがあります。ただ、理由が多すぎると聴き手側で覚えられなくなるため、刺さり方が弱くなって逆効果のリスクがあります。
そこで、あるべき姿としては、相手に納得してもらう上で、「モレもダブりもなく、できるだけ異なる切り口」で「理由を3つ」考えるクセづけをしていきましょう。
急ぎの仕事を他の人にお願いしたい。そんな際は、たとえば「緊急度」「重要度」「成長度」という3つの切り口で理由をつけて依頼をしてみてはいかがでしょうか?
このような使い方で理由をつくる基準を「3つ」覚えておけば便利です。
8.人間関係を円滑にする第三の視点
先ほど、相手を口説くためには3つ理由を準備しましょうとお話してきました。ここで気をつけなければいけないことがあります。
仮に、これで相手を口説けたつもりでも、相手の内心では受け入れていない可能性も残されています。
また、そもそも口説くという行為が押し付け気味に感じられ、相手との人間関係に緊張が走ることもあるでしょう。最悪の場合、人間関係がコミュニケーション方法一つで破綻します。
そこで、「視点の持ち方を3つに整理」することで人間関係をスムーズにする方法を考えたいと思います。
一言で言うと、「第三者の視点」を常に意識するということです。
第一の視点は「自分」、第二の視点は「相手」、第三の視点とは「第三者」のことです。
たとえば、あなたが家族会議を開き、「そろそろうちの車も新車に買い替えたい」という話をしたとしましょう。他の家族は「いや、でも新車買うってお金かかるでしょ?増税で節約しなければいけないタイミングで、それは嫌だ」と対立構造になってしまっては残念ですよね。
仮にあなたが、「いや、新車を買った方が燃費もいいからコスパは良くなるよ(理由①)、それに今は大きすぎて車庫入れが難しいんだ(理由②)、ずっと白色の車は飽きたって言ってたじゃない!(理由③)」と、3つの理由で熱弁してもうまくいかない時があるでしょう。
そこで、第三者の視点を付け加え、状況を整理します。
「第三者なら、どうアドバイスするだろうか?」と客観視するのです。
たとえば、車を買い替えたい人と節約中で買い替えたくないというズレがあるなら、第三の視点として「カーシェアリング」ならどうだろうか?
これなら、新たな車種を楽しめるし、コストはおさえることができる!と着地点を見い出すことが可能になります。
つまり、自分と相手の2つの視点だけでは対立構造に終わってしまうリスクが高いため、もう一つ加えて第三の視点をもって、状況を整理することに努めること。これが人間関係に使える「3の整理法」なのです。
9.まとめ
ここまで、「3」という切り口数にこだわって脳内整理の方法論をご紹介してきました。
3つの切り口だけで、全ての整理がつくわけでは決してありません。それでも、”いったん3つで整理”しようという過程を通じて、脳内整理の時間を短縮化することが可能になるというお話でした。
冒頭にこんな問いかけをしました。
なぜ頭のよい人は「3つ」で脳内整理をするのか?
僕なりの答えは、こうです。
3つの切り口で物事をシンプルにすることで、本質の見極めがスピーディーになります。これは、情報やノウハウが氾濫する中でも、それに振り回されずに、最大のパフォーマンスを仕事であげることができるエンジンになる。これを外から見ると、”頭がよい人”に結果論として見えているだけではないか。
そして、仕事で成果を出している人は、3つの切り口をこれまでの経験の中から、使いこなしているのではないか。それが、意識的か無意識かを問わず。これが僕なりの見解です。
個人的にも、脳内整理は「3つの切り口」が9割!という体験を持ちますので、今回は経験に基づきお話させていただきました。
最後になりますが、今回のお話をグラレコ(グラフィックレコーディング)で描いてくれた「ネコっち」さん(アカウント名)の図をお借りして、まとめとさせていただきたく思います。ぜひアップにしてご覧ください。
まさに3分割されたグラレコです。
それでは最終メッセージをご覧ください。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
何かお役に立てば幸いです。
著者・思考の整理家 鈴木 進介