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NPSって何? 顧客満足度と何が違うのか調べてみた

最近、NPS(Net Promoter Score)というものを調べている。顧客満足度と同じものかと思っていたら全然違った。初めて耳にする言葉だったのでとても気になる。気になったものを放置しておけない性分なので、備忘録も兼ねてNPSについて調べたものをまとめた。

※noteの終わりに、参考にした書籍のURLを貼っています。もっと詳しく知りたい方は読んでみることをオススメします。


NPS(Net Promoter Score)とは?

NPS(Net Promoter Score)を一言でいうと、「顧客が企業の製品やサービスを他者に薦めるかどうか、それを測る指標」のこと。

測定するための質問もとても単純。「この製品やサービスを友人に薦めますか?」というもの。この質問に対して「0~10の尺度」で回答を求め、顧客が付けた点数を次の3つに分けて考える。

a. プロモーター(9~10点):熱心に推薦する顧客
b. パッシブ(7~8点):特に推薦も批判もしない顧客
c. デトラクター(0~6点):否定的な意見を持つ顧客

この分類を行ったのち、

プロモーターの割合(a) −  デトラクターの割合(c)を全体の回答総数で割り、それに×100したものが最終的なNPSとなる。この数値が高いほど、企業側が良好な顧客ロイヤリティを築いていると判断できる。

NPSの考案者であるフレデリック・ライクヘルドによれば、著書の中で「企業成長には顧客ロイヤリティが欠かせないもの」であるとし、その重要性を説いている。NPAが高いことは、他者に推奨される企業となる。それは同業種の競合他社よりも速いペースで成長する傾向があるという。

一見するととてもシンプルな質問が、実はビジネス成功の鍵を握ることにつながっている。


NPSを利用する有名企業

NPSは、国内外の多くの企業で活用されている。
その事例をいくつかご紹介すると、

ヤマトホールディングス

近年では単なる愛着度だけでなく、ドライビングファクターごとのペインや期待することなど、お客さまのサービス目線を測ることも可能であり、ヤマト運輸では、「自社に関すること・競合比較・世の中の当たり前」この3つの視点を軸に、個人・法人のお客さまからの評価をいただき改善に役立てています。

ヤマトホールディングスウェブサイトより

楽天グループ

楽天では、お客様への直接・間接的なアンケート、面談などの手法を用いて、楽天の商品やサービス、ブランドに対して顧客が持つ愛着や信頼(顧客ロイヤリティ)をNPS®として数値化し、顧客体験の評価と改善に活用しています。

楽天グループウェブサイトより

富士通

2023年度に発表した中期経営計画において、お客様や社会に対する貢献と、自らの持続的な成長を可能にする土台の強化について測定・検証するため、「お客様ネット・プロモーター・スコア(NPS®)以下略…をKPIとする非財務目標を設定し、進捗を確認しています。

富士通ウェブサイトより

第一生命ホールディングス

当社グループでは、「お客さま満足度」の調査からより踏み込み、お客さまからのダイレクトな評価として知人・友人などへの「推奨度」を測定するNPS®(Net Promoter Score)を重要指標として導入しました。

第一生命ホールディングスウェブサイトより

住信SBIネット銀行

当社口座を保有されているお客さまを対象とした意識調査「NPS®(Net Promoter Score※:正味推奨者指数)調査」を半年ごとに実施(2023年7月21日~同年7月31日、2024年1月19日~同年1月29日)いたしました。当年度の自社意識調査※※ではNPS®29.1となりました。

住信SBIネット銀行ウェブサイトより

三菱地所

マンションはお客さまにとって、生涯に関わる大きな買い物です。購入前はもちろん、ご入居後も長く満足していただけるよう三菱地所レジデンス(株)では、顧客ロイヤルティを測る仕組みNPS(Net Promoter System)に取り組んでいます。初来時、契約時、引渡し時、入居1年目、入居2年目と、フェーズごとにアンケートを実施し、お客さまからの推奨度を計測すると同時に、その理由も頂戴し、関連部署にフィードバック。ものづくりやサービスに活かしています。

三菱地所ウェブサイトより

JAL

https://www.jal.com/ja/sustainability/human/satisfaction/

2017年度より「他者推奨意向」を数値化するNPS(Net Promoter Score)を経営指標とし、 お客さまのご意見・ご要望を商品・サービスの改善に繋げています。

JALウェブサイトより


他にもたくさんあるが、これらの企業はNPSを単なるスコアとして扱うのではなく、サステナビリティの一環として顧客体験を深く理解することに努め、継続的な運用改善に利用している。

なぜ顧客満足度ではなく、NPSを用いるのか

従来の顧客満足度は、「顧客が利用中の製品やサービスに満足しているか」を測るものだ。一方、NPSは「この製品やサービスを他者に薦めたいか」を問うことで、満足度以上に「顧客のロイヤリティ」や「推薦の意欲」を計測している。

例えば、移動経路や時刻表を調べたりするアプリ。
同じようなサービスは複数ある。

そこで特定のアプリを常用的に使う利用者がいて、その満足度も比較的高かったとする。でも、競合サービスと比較して特筆すべき魅力がなければ、その体験を他者に薦めることはまずない。NPSは、この推薦意欲に着目し、顧客が企業の成長にどの程度貢献する可能性があるかを明らかにする。

推薦のもつ力

製品やサービスに推薦者が存在することは、マーケティングにおいて計り知れない影響力を持つ。リアルでもネットでも、露出された複数の広告から情報を得るよりも、自分と近しい友人や家族の意見に一定の信頼を見出す傾向が強い。そのため、NPSで高スコアを得ることは、「いつの間にか拡散してくれる強固な広告塔」を持っているのと同じ効果が期待される。

NPSを用いる場合のメリットとデメリット

こうしてまとめると、NPSを活用することは良いことばかりに見えるが、僕の考える懸念についても記述しておきたい。

まず、活用のメリットをまとめると、次のようなもの。

単純(シンプル)に計測できる
スコアの計算、算出が明解。とても簡単。

顧客ロイヤリティが把握できる
推薦者の割合から、顧客との中長期的な関係を見極められる。

メリット

次に、ここが抜けると片手落ちになるのでは?と感じる部分をまとめると、次のようなもの。

回答者の深層理解が必要であること:
スコアだけだと、回答者が「なぜその評価になったのか?」を把握できない点。

自由記述の活用が不可欠であること
回答者の数値に加え、その評価の際のコメントを分析する必要がある。これができないと、運用改善につながらない点。

業界差の影響が顕著であること
前提として、業種によってスコアの平均値は異なる。業種間での他社比較には慎重さが必要であり、一足飛びにスコアを上げることに注目してはならない点。

デメリット

回答者が評価を行う時、
「なぜ、そのスコアにしたのか?」
その理由について深堀りすることが、実は一番大事だったりする。ここが抜けてしまうと、顧客ロイヤリティ強化のためにどんな施策を実行するか?その計画を立てられないことにつながる。否定的なスコアをつける人が全員、企業にとって有益なコメントを残してくれる確証もないわけで、ここは非常に難しい問題と感じる。

具体的な計測方法(ウェブサービスやアプリの場合)

NPSの質問設計はとても簡単だ。

質問例:「この製品を友人や知人に薦めますか?」
回答スケール:1~10の範囲で選択方式。

質問設計

データの収集に関しては、利用者が一定のタスク完了後にポップアップで回答を促したり、アカウント宛に質問回答ページのリンクを送付したりする。また、常用的な利用者に対して、ログイン時に定期的に質問を提示し、回答を得るという方法もある。

僕が最近遭遇した例をあげると、アメリカンエクスプレスのクレジットカード。アプリにログインして、利用明細を確認しようとしたところ、

「簡単な調査にご協力いただきたい」旨の通知があり、
「このサービスについて、評価スコアを選択してほしい」

という質問が提示された。僕はNPSというものを理解していなかったので、チェックせずにスルーしてしまったが、今思えばこれもNPS評価だったということに後々気づいた。

評価には、回答者の自由記述欄が必要不可欠だ。
推薦する場合には推薦理由、推薦しない場合には「なぜそのような不満を感じているのか?」を自由に記述してもらう。この記述欄については、テキストマイニングを通じて、頻出ワードやテーマを抽出し課題別に分類する。

繰り返しになるが、スコアだけにとらわれないこと

僕が感じるNPSの最大の落とし穴は、「スコア」だけを追い求めてしまうことにある。スコアではなく自由記述に対し、回答者がしっかりと記述してくれることは、企業にとって耳も痛い話もあるかもしれない。でも、それはとても貴重な利用者の声になるわけで、その声に耳を傾け、具体的な改善案につなげることがとても大切だ。

おわりに

NPSは、とてもシンプルながら、顧客ロイヤリティを測るための強力な指標である。NPSの捉え方は、スコアだけにとらわれず、顧客の背景に迫り、なぜそのような回答をしたのか?を理解することが鍵となる。この記事がNPSの理解と活用のヒントになれば幸い。

参考にした書籍


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