−ほす、つける、うつ– 冬を迎えるための、新潟の知恵。
木々も色づき、だんだん風も冷たくなってきて、秋本番といったところ。朝晩には寒いと感じるほどで、冬の気配を感じるようになりました。
今日は新潟の冬支度についてご紹介します。
新潟の冬といえば「雪」を思い浮かべる方がほとんどかと思います。
そのイメージ通り、長く厳しい新潟の冬に備えた支
度には、雪にまつわるものが多く存在します。
ザ・豪雪地として知られる“新潟”ですが、海に面したエリアもあれば山々に囲まれたエリアもある縦に広い新潟県は、場所によって積雪量が異なります。
海に面している新潟市ではそこまで積もることはなく、降っても40〜60cm程度。一方で山に囲まれた長岡市や十日町市では250cmを超える積雪となることもあります。
冬に向けた準備もエリアごとに特徴あり、地形や気候といった風土が関係していることがわかります。
昔から今もなお、切っても切れない関係にある新潟の文化と雪。
毎年夏から秋にかけて採れた食材を効率よく保存するために・・・そこには新潟の土と水・風と、そこで育った食材を活かすための工夫が詰まっています。
ほす:干 「割り干し大根」
秋〜冬に採れた大根を4つ割や6つ割の太めに縦割りして、干したものです。今でも冬が近づくと、家々の軒下に大根が干されている光景を目にします。
干すことで水分が抜け、長期保存に適した状態になる上、栄養素や旨みがぎゅっと凝縮され、冬の間もおいしく食べることができます。
郷土料理:はりはり漬け
上越地方が発祥とされているはりはり漬けは、割り干し大根がメインのお漬物。昆布やするめと一緒に醤油ベースの甘辛い漬け地に漬けます。家庭によって加える具も様々で、冬を越すのに欠かせない常備菜の一つとして親しまれてきました。
つける:漬 「巾着なすの漬物」
夏にたくさん採れた巾着なすを冬の間も楽しむために。長岡野菜でもある巾着なすを漬物に使います。
巾着なすは身が詰まっていて水分が少ないので、漬物に向いているなす。辛子につけた「辛子なす」や味噌につけた「巾着なすの味噌漬け」など、ご飯がすすむ味わいで冬の食卓を支えています。
郷土料理:辛子なす
その名の通り、辛子漬けにした巾着なすは食感が特徴的で、クセになる味わいです。一般的ななすの漬物は浅漬けが多いですが、辛子なすは1ヶ月程度かけてじっくり・しっかり漬け込みます。
巾着なすならではのコリコリ食感と、つんと鼻に抜ける辛子の味わいが、ご飯にはもちろん日本酒にもピッタリです。
うつ:打 「打ち豆」
大豆を木槌などで打ってから乾燥させた「打ち豆」は、冬の間の貴重なタンパク源として昔から重宝されてきました。
加えて、潰すことで硬い大豆も水が浸透しやすく熱が通りやすくなり、調理の手間や時間もカットできるという優れものでもあります。
郷土料理:煮菜
体菜(たいな)という青菜を塩漬けにし発酵させた漬物と、打ち豆を使った煮物です。体菜は水で洗い塩を抜き、油炒めにします。打ち豆などの具を加え、お醤油で煮付ければ出来上がり。昔は冬の間には収穫できなかった青菜も一緒にいただける、知恵と工夫が詰まった昔ながらの味わいです。
おいしく食べるだけじゃない!雪を有効活用した新潟の知恵
小千谷縮(おぢやちぢみ)
国の重要無形文化財に指定されている小千谷縮は、独特のシボが魅力の麻織物です。丁寧に織り上げられた記事を降り積もった雪の上にさらすことで、地は白く、色は鮮やかに、ふっくらと仕上がるそうです。
通気性がよくさらっとした質感の小千谷縮は、日本のじめっとした夏を過ごすのに適した高級織物として知られる工芸品の一つです。
小国和紙
今もなお伝統的な製法で作られている小国和紙は2度雪を利用します。
1度目は原料であるコウゾを雪の上でさらす作業。雪解けの際の水蒸気や雪による照り返しが作用し、コウゾ内の色素が壊れて白くなるそうです。
2度目は水を絞る作業で。一般的にはジャッキで絞るところですが、小国和紙では重ねた和紙を雪に埋める「カングレ」という作業で紙の水を抜きます。
手間と時間をかけて作った真っ白な和紙は、まさに雪国らしさを感じる風合いです。
最後に・・・
今回は『新潟の冬支度』と題して、美味しいことから美しいことまで、雪にまつわる新潟の知恵をご紹介しました。
雪国という限られた地域の、限られた時期にしか見られない作業や景色、伝統があります。
こういった伝統は徐々に薄れていってしまう傾向にありますが、それを危惧して、昔から伝わる知恵を改めてレクチャーする・伝えるイベントや講習会が、県内の各地で開催されています。
地元の方はぜひその歴史に思いを馳せて・・・馴染みのない方はそれらを体験しに今年の冬は新潟に足を運んでみてはいかがでしょうか?
これえだ