寂しさは…
紅葉の季節の寂しさがしんしんしみ込んできて、胸のあたりがすっかり冷えきってしまった…日はどんどん短くなり、あっという間に暗くなって… 1日の時間に追いつけなくなって…ついに眠れなくなった。
眠れない夜… 深夜、夢をみた。
からだのなかにしみこんでいた〝寂しさ〟がひゅう〜んと出てきた。
〝寂しさ〟に襲われると、身震いした。ついに〝寂しさ〟に抹殺されると覚悟する。
今年、秋の〝寂しさ〟は生命を落としかねないほど痛烈で、危険なくらいに身にしみていた。
威圧するように、すごい勢いで現れた〝寂しさ〟が、深夜、目の前で妖精のようにひらひら舞っている… あっけにとられた。
透明だけど、どうやら楓やもみじを纏っているようで、美しくひらひら舞いあがったり、まあるくなったり…木の葉とともに、くるくる回転している。
襲ってくる気配はなさそうなので、〝寂しさ〟にそっと目を凝らす。
なんだか… 透き通った紅色をしている。怖々ふれてみると、冷たくも尖ってもいなくて…
蹴鞠のようで、柔らかく温かい。
まあるく紅い、透きとおる蹴鞠を両腕で抱えてみると…寂しさ〟を持っていることがちょっと嬉しいことに気がついた…
身に沁む辛さもなく、ふんわりとまあるい
〝私の寂しさ〟を両手で持って、私はすぅ〜っと…阿修羅像みたいに立っていた。
「紅い色をしていたんだね。」
とてもきれいな〝紅い寂しさ〟なら、ずっと抱えていても、空に向かって放り上げても大丈夫そうだから、やさしく枕元に置いて…すやすや眠った。
朝食にりんごが食べたいと思った。
サイフォンがぷくぷく音をたて、いつもの朝がきた。
紅いりんごを割ったら、なかから光が溢れでた! 〝みつ〟入り!光色の蜜!
天の恵みが入ってる!りんごに大喜びして、朝の時間が輝いた。
紅い寂しさのなかに何が入っているのか…わかったような気がした。
透明で、まるくて、紅い!〝寂しさ〟
を大切に抱えて、冬を越そうね…