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映画感想文#4 アット・ザ・ベンチ(2024)

※本稿ではネタバレを含む感想を綴っております。
ご自衛ください。
画像の引用はすべて映画.comさんより
映画の紹介はそちらも併せてご覧ください

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私は毎日、だいたい毎日。
通院や予約制の用事がなければ、映画館に寄って映画を見てから帰ることにしている。

さて、今日は何を観ようか。
そういえば「アット・ザ・ベンチ」はもう始まっているのだろうか。そう思いながらwebページを開くと、ビンゴ!始まっていた。

第1編 残されたものたち 
脚本:生方美久さん

あ、そうか、これは章立ての作品なのか。
たくさんのキャストとエピソードが織りなすフライヤーを思い浮かんだのは、そのすぐ後のことだった。

広瀬すずさん、こんな声だったっけ?
無邪気にはしゃぐ姿が似合う爽やかさや、スーッと鼻筋の通った綺麗な横顔はそのままだが、声は記憶と違うような気がする。

スポーツドリンクがよく似合う、あの頃から変わらない横顔


最後に広瀬すずさんの出演作品を見たのはいつだったか、ぐるぐると考えていると、仲野太賀さんが登場する。
残業が似合うと後輩に言われた、とぼやく彼は、確かにその言葉がぴったりかもなあと失礼な感想が浮かんだ。

そんな二人の会話は、以下の大きな軸で進んでいく。
・幼き頃から訪れた公園がなくなっている。
・このベンチだけは残り、公園の跡地は保育園になるらしい。

彼らの会話は「残されたベンチ」の上で繰り広げられる。少し間隔を開けて座る様子から、二人の関係性が見えてきて、もどかしさを感じる。
しまいには遠回しに思いを伝えるも、言葉遊びのように絡まってしまう。
もう早く付き合っちゃえよ〜という言葉が頭をよぎり、そんな思いを抱えながら第一章は終わった。


第2編 まわらない 
脚本:蓮見翔さん

この章が一番好みだった。
まさか「アット・ザ・ベンチ」で爆笑必至大会が繰り広げられるとは思わなかった。
フライトキャップと革のジャケット、家具を抱えた岡山天音さんとラフな格好をした岸井ゆきのさん。二人が座るのも同じベンチで、家具を買い終えてピクニックを楽しむということらしい。

4年付き合っているという彼らだが、ひょんなことの積み重ねで岸井ゆきのさんのリミッター(本作では「寿司桶」と呼ばれていた)が限界を迎えてしまい、彼女の「安い寿司ネタのような小さな不満」が岡山天音さんにぶつけられていく。

この作品はどの章もキャスティングが的確だと感じていたが、特に岡山天音さんが最適解だと思った。
不憫なのに少しシュールに見える姿が面白い。ついこの間まで頭のキレる賊軍だったじゃないか。
彼が、一番見たかったタイプの役柄を演じているのがとても嬉しい。

さて、本章の結論を言うと、彼女が一番嫌だと思っているのは「バイク乗りでもないのにバイク乗りのような格好をしていること」ということだったが、これがまた面白すぎる。蓮見翔さんの解像度と想像力に感心した。
この人、昔、私がショートカットの時に耳周りの寒さに耐えかねてフライトキャップを被っていたら、「コサックダンスでもするん?」と言われた時、そこにいたのかな。

小気味いいテンポで繰り返される話や、にゅっと入ってくる荒川良々さんの存在、全てが良かった。

ぎゅっと鮨詰めに座って寿司桶の話題をしていた。ちょっと面白すぎる。

くすくすと笑いながら、次の第三章へと移った。

第3編 守る役割
脚本:根本宗子さん

心地よい余韻と共に第三章が終わると、突然響き渡る金切り声。ああ、癇癪だ。身に覚えがある、いや、覚えしかないトーンだ。

想い人を追いかけて東京まで来た姉(今田美桜さん)と、それを追ってきた妹(森七菜さん)との三章は、見ていて少し辛かった。

昔、家族で食事をする際、妹が集合場所がわからず迎えに行ったことがある。
彼女はそのことでパニックに陥り、「やめて!!こんとって!!かえる!!やめて!!さわらんとって!!!!!!」と金切り声で叫んだことを思い出す。
「(妹)ちゃんの好きなハンバーグのお店だよ、美味しいよ」と、子供騙しのように思えても、彼女の好きなもので安心させようと声をかけ続けた。
彼女の感情の昂りは収まらなかった。
「そっかあ、気をつけて帰ってね」と、根負けしたのか優しさなのか、よくわからない一言を交わして別々の場所に向かった私たちは、今では絶縁状態だ。

そんな思い出がフラッシュバックしていると、森七菜さんは「大切だから守る」と言いながら姉の横に佇み、三章は終わる。
ああ、こうすれば良かったのか。
そう思わずにはいられなかった。

第4編 ラストシーン
脚本:奥山由之

ベンチから見える世界がモノクロであることは、老朽化の象徴なのだろう。
老朽化したベンチの前で、撤去作業員の草彅剛さんと吉岡里帆さんが取り留めのない会話を交わしながら作業を進めている。
ああ、このベンチもラストシーンを迎えたのかと思ったその瞬間、ストーリーと画面が一変、二変……?し、色彩が鮮やかに変わった。

撮影風景が映し出される。
これはこの作品のラストシーンとして、実際のメイキングを見せているのかと思いきや、そうではなさそうだ。ネオンの羽織をお洒落に着こなす監督の声がどこか聞き覚えがあるなと思ったら、神木隆之介さんだった。あ、劇中劇のラストシーンなのね?やっと理解が追いついた。


奥山由之さんはネオンの似合う老けない方なのかと思った


前情報をほとんど入れていなかったため、奥山由之さんが全編を手掛けていたと思い込んでいた。しかし、章立てになっており、彼が関わったのはその一部に過ぎないと分かった瞬間、絶対に第四章は奥山さんだろうと思った。
そして、案の定、それは当たっていた。
この人の撮る秒速5センチメートル、楽しみすぎるかも。

第5編  寂しいは続く(寂しさかも)
脚本:生方美久さん

時の経過が描かれた後、再び目に映るのはあのベンチ。
そこに広瀬すずさんが現れる。彼女は再び仲野太賀さんを呼び出し、二人の間にはやはりわずかな距離感が感じられる。
お互いの気持ちを探り合うような遠回りな会話を交わす二人が「微妙な距離感の中学生」の話をするので、どうなったのかと心が焦る。

今回の話題は、広瀬すずさんの家族が飼っていたウサギのこと。
ウサギの名前が「しろまる」で、なんとも可愛らしい。しかも、かなりの長寿だったようだ。
天寿を全うした後に人を笑顔にできるのは素晴らしいことだね、と言う二人に、確かに、天寿を全うするかどうかは、自分一人だけの価値ではないのかもしれないと感じた。

二人が同じ家に帰ることが、会話からほんのりと伝わってくる。また、次の家を探すことも。

ああ、よかった。見ていた景色が変わることに寂しさを感じるが、悲しみが続くことはない。嬉しい変化も訪れる。

そんな温かい余韻が、胸に残った。

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