「十月の始まり」
「寒いな」
九月後半のとある夜。僕はあまりの寒さに身を震わせた。この間までは夜でも蒸し暑かったというのに今日はやけに寒い。
とうとう夏の終わりが来たのだ。脳裏に今年の夏に過ごした思い出の数々が蘇る。バーベキュー。キャンプ。海水浴。川下り。どれも素晴らしい思い出だった。
よくよく思えば虫の数も夏に比べて、落ち着いた気がする。そこら中で鳴いていたのにパタリと止んでしまった。これはこれで少し寂しさを覚えるというものだ。
「さて今年の秋と冬はどう過ごそう」
不意に吹く風に少し寒さを感じながら、僕は家に向かった。