蛙鮫

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初めまして、小説家志望の蛙鮫です! noteで毎日投稿開始! 下記の投稿サイトでも毎日投稿しています!よろしくお願いします! https://kakuyomu.jp/users/Imori1998  Xとインスタもやってます! よろしければフォローお願いします!

最近の記事

「ズレ」

「もうここにくるんじゃないぞ」  警備員に言われて、俺は頭を下げた。今日,俺は出所した。俺がこの刑務所に入れられていた理由は昔、詐欺をしていたからだ。  地元の先輩に誘われて、やった事がきっかけだった。人騙すだけで何百万も入ってくる。最初は多少、罪悪感はあったがそれも無くなっていった。  だけど俺はもう違う。これからやり直すんだ。俺は頭上に広がる青い空に強く誓った。  早速、俺は仕事を探し始めた。知り合いに頼ろうとしたが風の噂では俺は縁を切られたらしい。自力で探すしかな

    • 「痴漢と怒り」

      「痴漢です!」  金切り声を上げながら,中年の女が僕の腕を掴んだ。そんな事をしてないし,第一吊り革を両手で持っていたので、不可能だ。 「誤解です! 第一僕は両手でつり革を持っていた!」  周囲から刺さる無数の冷たい目線。誰も僕を味方してくれない。そりゃそうだ。痴漢冤罪の認識が広まったとはいえ、まだまだ女性の主張が強い世の中だ。視界が闇に覆われ始めた。まずい。終わる。人生が終わる。  「いや、その人やってないですよ」  その言葉を聞いた瞬間、目の前を覆っていた闇が晴れた。声の

      • 「底なしの試練」

        曇り空の下、俺は自分の股の間を覗きながら、ため息をついた。性病になった。理由は分かっている。ここ最近、遊びすぎたからだ。本当にいろんな相手と経験した。  快楽の代償は大きかった。今後は気をつけるようにしよう。決心した後、携帯が鳴った。数ヶ月くらい前から関係を持っている相手からだった。 『生理こない』  その一言で俺は膝から崩れた。どうやら俺に今後なんてないらしい。  

        • 「おばちゃん」

           行きつけだった駄菓子屋のおばちゃんが亡くなった。かなりの年だったという事もあり、すんなりと受け入れられた。寡黙な性格で一人、レジでタバコを蒸していた。見た感じ親しい人もいなくて、一人で黙々とレジとタバコで時間を潰しているように見えた。中学生の時、友達とノリでタバコを買おうとした。 「お前にはまだ早いよ」  おばちゃんは鼻で笑って、俺の手からタバコを掻っ払ってまたタバコを吸った。  昔の思い出に浸っていると、電話がかかってきた。友人からだった。呼ばれた場所に来てみるとそこ

        「ズレ」

          「ラグビー」

           大画面の向こうで男達がボールを巡ってぶつかり合っていた。  筋肉と筋肉のぶつかり合い。剥き出しの本能とパス回しから伝わる確かな知性。  今もそうだ。一人の男が相手のゴールライン目掛けて,走っている。額から大粒を汗を流して、ゴールラインに食らいつこうとしていた。  しかし、そこに相手選手の壁が立ちはだかった。ボールを持った選手は抜けようとしたが、相手選手の守りは硬い。  その時、右のほうから同じユニフォームを着た選手が現れた。選手は仲間にボールを投げた瞬間、その選手は

          「ラグビー」

          「屍の上の極上」

           厨房の前、静かに頭を抑えた。また上手くいかなかったのだ。  目の前には汚れた包丁と無惨に散らばった材料。理想へ行けないのだ。  これ以上、失敗はしたくない。失敗した料理の数だけ無駄な屍が生まれるからだ。  料理をミスすればする程、食材への敬意が軽んじられる気がする。しかし、同時に他人からの畏敬は向けられやすくなる。  ここで止まってはいられない。僕は再び、包丁を握った。全ては屍の上の極上を目指して。

          「屍の上の極上」

          「もどかしい」

          上映中、映画に心を奪われていた。予告編からすでに面白さが溢れ出ていたが、さらに素晴らしいものになっていた。  あまりに良すぎるので俳優や監督、音楽がもっと知りたくなった。今すぐにでも調べたくなったが、マナーの都合上、携帯を取り出せない。その事がもどかしくて仕方がない。  しかし、そんな葛藤を映画が飲み込んでいく。余計な考え事はするなと言わんばかりに画面に引き寄せられる。面白いという事に恐ろしさを感じたのは初めての経験だった。  鑑賞後、館内に出たあと、多幸感に包まれた。

          「もどかしい」

          「スーパーエナドリ」

          コンビニの中、僕はエナジードリンクの缶を手に取っていた。数日前に販売された新商品だ。何よりこれまでのものよりも遥かに効果があるらしい。早速,購入してコンビニの近くで飲むことにした。プルタブに指をかけて,喉に流し込んだ。  その途端、脳が痙攣した。電流が走るような感覚が体内を駆け巡り、未知の感覚に僕は小さな恐怖心と凄まじい興奮を覚えた。  僕は走り出した。世の中の常識や社会的通念を捻じ曲げる勢いで走り始めた。車よりも早く鳥よりも高く,どこまでも動いた。躍動に任せて走った。テ

          「スーパーエナドリ」

          「廃れゆく」

          「ああ、まじか」  目の前の更地を見て、もの寂しさを覚えた。ここには昔、駄菓子屋があったのだ。店主は一人のおばちゃんでよく子供達で賑わっていた。高校生に上がったくらいからいかなくなったが、久しぶりに行くと無くなっていた。  あと数日後には地元を出るから寄って見たかったっていうのが本音だ。ため息が出る。お菓子は今の時代どこでも買える。でもここでしか体験できなかったものもある。  一体いつから店じまいをしたんだろう。僕が呑気に過ごしている間にこの駄菓子屋は衰退の意図を辿ってい

          「廃れゆく」

          「HEY! タクシー」

          夜の繁華街。今日も今日とて人を乗せる。それが私の仕事。この街は変わらない。どこかで誰かが酔い潰れて、喧嘩して、泣く。ここはそのオンパレードだ。  乗車してくる人間も少しガラの悪い人間が多い。まぁでも人通りも多いからその分儲かるから悪くはない。そんな事を思いながら,今日も仕事場の近くに向かっていると破裂音が聞こえた。直感で理解した。銃声だ。  その音を皮切りに多くの人が一斉に繁華街の外に流れてきた。私は恐怖を感じて、引き返そうとした時、誰かがフロントにぶつかってきた。男だっ

          「HEY! タクシー」

          「原始に帰る冒険」

           森の中を一人で歩いていた。風で草木が揺れる音。川のせせらぎ。それらが都会で疲れた僕の心を癒していく。しばらくするととある看板が見えた。 『この先、クマ注意』  黄色と黒で装飾された看板に強烈な危機感を覚えた。ここに熊がいるのだ。テレビや動物園でしか見たことがない巨大な獣がこの森の中にいるのだ。そして命の危険を感じさせるこの看板。  普段、獣から襲われる心配のない生活を送っている僕からしたら見ることのないものだ。僕はゆっくりと引き返した。近くの茂みから低い呻き声が聞こえた

          「原始に帰る冒険」

          「ジェットコースター」

          青空を見ながら、僕は自分を行動を振り返っていた。何故、こんな愚かな事をしてしまったのか、そして明らかに人が来てはいけない領域に踏み入っている。  なんで人間はこんな愚かなもの絵を作ろうとしたのだろう。かつて空は神の領域だと教えられてきたというのに。僕は恨んだ。人類を。僕は恨んだ。これに乗る選択をした愚かな自分を。  そして、そんな後悔を吹き飛ばすようにジェットコースターが勢いよく落ちた。恐怖と快感。様々な感覚が頭を支配する。縦横斜め。様々な角度で揺らされる度に内臓の位置が

          「ジェットコースター」

          「孤独に塩」

          窓の外に二羽の鳥が枝に止まっていた。仲睦まじく体を寄せ合って、互いの存在を直に感じている。  僕は自分の携帯に目を向けた。画面には一人も引っかからないマッチングアプリが写っている。  誰からも通知が来ない。孤独な時間。この孤独を忘れる為にダウンロードしたはずなのに余計に孤独感が増している。  ため息ばかりが出てくる。孤独から目を背ける為に昼から缶ビールを開けた。  何度も開けた。これしかなかった。もう何もない。ならもういらない。僕はマッチングアプリを消した。  する

          「孤独に塩」

          「歪な再会」

          パチンコ屋の前で僕は呆然と立っていた。  新しく入った台がなんと俺が幼い頃、見ていたヒーローアニメの台だったのだ。  興味が湧いた僕は入店して、台の前に来た。  球が釘を渡っていくのを見ていると子供の頃を思い出した。テレビに張り付いてヒーローの活躍を見ていた。正義のために悪を退治する。そんなヒーローの姿に何度も心を打たれた。  しかし、現実にはそんなヒーローはいない。  歪なものしかなかった。かろうじて保っているものばかりだ。  そんな悔しさから僕はどこか擦れてしま

          「歪な再会」

          「YES! 土方!」

          「おら! しっかり動け!」  頭上からメガホン越しに暴言が飛んできた。ヘルメットを被って仕事をしているので、現場監督の表情は分からないが間違いなく怒っている。  俺は今、下っ端作業員として現場で穴を掘っている。スコップで何度も硬い地面を掘るごとに自分の心も抉られる感覚を抱いた。  現場仕事で嫌なのはきつい仕事はもちろん、現場が普段遊んでいる場所だと今のギャップとの差で心が傷つく事だ。  普段、友人と楽しく遊んでいる場所が自分を苦しめる地獄のような環境に変わっている。これ

          「YES! 土方!」

          「いつかくるその日」

           静けさが漂う夜。ワンルームの中、僕は重い溜息をついていた。  明日友人と出かけるのだ。出かけるのが非常に億劫なのだ。友人が嫌いなわけではない。ただ出かける。他人と会うというイベントが辛いのだ。  頭を抱えながら、僕は眠りについた。      朝を迎えた。憂鬱な気分も目を覚ました。ああ、足が重い。地震とか友達が急用になったとかならないものか。  ため息がここ数分で何度も出てくる。ここまで出るとギネス世界記録に残る自信がある。服を着替えて、友人宅へ向かった。  友達っ

          「いつかくるその日」