お金がすべて。個人的意見。

やや大きめな『すみません！』にビクッとした。

小雨が降り始め、客足も途絶えていたので、事務仕事に集中していたときだった。

元気はつらつに声をかけてきた初老のお客さんは、ネクタイなしの白シャツにグレーのジャケット、手入れのされている短髪で、清潔感漂う身なりをしていた。
小指に付けてる黄色っぽい石のついた指輪が雰囲気と不釣り合いだった。

『なに買おうかな。買わないと当たらないからね。　大当たりじゃなくていいけど当たりたいもんだね。』
『そうですね〜』と私。

『あなたお金好き？』

『えっ、まぁ、ある方がいいです』

『だよね、ボクはね、お金が大好きだよ　
ハハッ
結局はお金だよ！
お金があれば他にはなにもいらないくらい。
お金より大事なことがあるとか、お金が全てじゃないとか、お金に縛られたくないだのってさ、普通に暮らせてる人達が、今より充実した幸せなんかを願ってあれこれ言ってるんだよ。
それなりの、最低限のベースがある前提でしょう！そうじゃない？
ボクは絶対にお金が1番！お金は裏切らない！
アハハッ

どん底味わって、食べることもできない、住む場所も無くなるほどの体験したらさぁ、一番必要なのはとにかくお金なんだよ。』

『大変だったことがあったんですか？』

『あったあった、語り尽くせないくらいあったね　ハハハッ
自営でさ少しばかり成功してたんだよね、そこから転落したの。
なにもかも無くしたよ。ぜーんぶ無くなっちゃったの』
男性はちょっとおどけた調子でそう言った。

『貯金が無くて…なんてレベルじゃないの、ほんとうにお金が無いと、いけないこと考えちゃったりするんだよ。
情けないもんだよ〜。
街ゆく人見てさ、自分は今、日本一の貧乏人なんだな、なんて悲しくなったりね。ワハハッ

頼る親族もいないし、知り合いや友達なんかにも恥ずかしくて言えないわけ。
でも1人だけ、打ち明けてみたんだよね〜

そしたらさ、セミナーってゆうの？マインドなんとかみたいなのを紹介されてさ、
メシ食えないくらいお金ないのに、セミナー受けるお金あるわけないじゃない。ワハハッ』

『フフッ、たしかにそうですよね』

『セミナー受けるにもお金がいるわけよ、いまさ、横文字の胡散臭いセミナーだとか自己啓発？なんてのがたくさんあるでしょ、話しなんか聞いたって、腹の足しにもならないからね　ハハハッ　
買い物できるってことがどんなに幸せか、身に染みたね〜。
だからボクはなによりもお金が1番！
お金さえあればいいの。

今はなんとかなったけど、お金はもっと欲しいからね、無理じゃない程度のお金は賭け事に使って、増やそうとしているんだよ　ハハハハ〜ッ』

なるほど。

『長々話しちゃったね、仕事中にごめんね！
当たったらお姉さんにプレゼントしますよ。
ハハハッ　じゃあ！』

自営の仕事に失敗したあと、どん底まで落ちて、どうやって這い上がることができたんだろう。
復活までのサクセスストーリーを聞きたくなった。

どうにもならないくらいどん底なとき、良い話しを聞いたって、腹の足しにもならない…か。

なるほどね。