かまってちゃんはこまったちゃん
宝くじ売り場で働いています。
大抵は1人きりで働くのですが、いきなり1人で働くわけではなく、ベテラン先輩との研修を経て、1人で働くようになります。
研修中、先輩が
『あ〜ぁ、あの人あんなになっちゃって』と呟いたので目を向けてみると、枯れ枝のように細いおじいちゃんが、杖をつきながら、小さな歩みで、ゆっくりゆっくり歩いていました。
先輩の話は続いて、
『宝くじを買いに来るお客さんて、お年寄り率が高いのよね〜、よくあるんだけど、毎日のように来てた人が、突然パッタリ来なくなるわけよ。入院でもしたのかなぁ?とか、死んじゃったのかも〜なんて思うのよね〜』
物憂げな様子でベテランさんは話す。メモ取ることに必死な新人は、ふぅ〜ん。へぇ〜。と聞き流していた。
毎日ナンバーズを買いに来る一人暮らしのおばあちゃんが、老人ホームへの入居を迷っているという話しをしてくる。
年齢のせいか、話しに一貫性がないのと、話の内容が変わっちゃったりするので、真意の程は分からないけれど、なにかと迷いはあるようだ。
長い話しに耳を傾け、相槌を打つ。手は仕事。私に正解を求めているわけではないので、聞き役に徹している。(笑)
こちらの仕事にはお構いなしで、気の済むまで話し、ナンバーズを買うと帰って行く。
話好きなお年寄りは他にもいて、、、あちらこちらで店員を相手に、同じ話しをしている。
人生の大先輩にも、かまってちゃんはいるのです。
困った友人がいた。
リアル世界でも、SNSの世界でも、自から仕掛けていく。
嘘。暴言。失言。悪口。その他…
何かとトラブルになり、最終的には逃げる。を繰り返しているような人。
はじめのころ、私は、自分事のように本気で心配し、親身になっていたけれど、ただのかまってちゃんだってことに気づいた。
SNSの世界でも、散々揉め散らかしていたようで、しばらくすると、しおらしく『皆様、今まで仲良くして下さいまして……』などと書き込み、発信したものを消し、コメント欄を閉じる。
反省の末に、発信したものを消すのなら、全てを、アカウントごと跡形もなく消えればいいのに。
それくらいするのであれば、覚悟のほどが伺えるのだけれど、アカウントと、揉め事に関係のない発信は残したまま。
さらにその人は、意味深なことを書きこんだりもする。あざとい。
気を引こうとしているのが見え見え。
かまってちゃんは女々しい。
この人の、かまって!かまって!に対して、善良かつ優しい人達が、〝待ってるよ!とか、元気出して!とか、そのままのあなたでいいんだよ…〟などとメッセージを残しているのを、いたたまれない気持ちで眺めていた。
本人は、それらの言葉を待っているのだから、さぞ嬉しいことでしょう。
その人は、完全に消えることをしないばかりか、別のアカウントを立てては、そちらでもまた揉め事を起こしているらしい。
どうにもならなくなれば、どうせまた、全ては消さずに、しおらしい書き込みをするんだろうな。早く気づけてよかった〜
「潔く」「飛ぶ鳥跡を濁さず」「退路を断つ」これくらいしてこその本気だと私は思う。
少しでも何かを残している人は、ただのかまってちゃんだと、私は思っている。私は、かまってちゃんが嫌いだ。
『世の中、あんたみたいにバッサリ切っちゃう人ばかりじゃないでしょ』
友達に言われたことがある。
私は決して、勝ち気な人でもなく、気が強いわけでもない。むしろ逆な方だと思う。
ただ〝思わせぶりな人〟が、嫌いなだけ。
私はプライベートだと、人の好き嫌いがハッキリしている。無理して嫌いな人に合わせるのは仕事中だけで十分。
『あんたがモテない理由がわかるわぁ』また別の友達にそう言われたこともある。
たしかに、恋愛•友達•人気関係において、気を惹くためにあれこれするとか、思わせぶりな態度を取るとか、駆け引きをすることは、苦手。というより、面倒くさい。
けど、好きな人には、「好き」「大好き」「愛してる」素直にストレートにそう言っている。
プライベートで、うわぁー嫌なやつ〜!めんどくさ〜と思ったかまってちゃんとは、さっさと縁を切ってしまう。
そうすることで、清々した気分になれるから。
負の感情はできるだけ持ちたくない。
老人ホームを迷っているおばあちゃんとの関係は、仕事上で、買ってくれるお客さんと店員。お客さんだから無碍にはできない。
ある日、おばあちゃんが、大きな袋を携えてやって来た。
『あら、どうしたの?大荷物だね〜それ、な〜に?』
いよいよ、老人ホームに入ることを決めたと言う。
『思い切って物を処分しているの。売れる物は売ろうとおもってさ、わざわざ持って来たのに、何も買い取ってくれなかったのよ、どうしたらいいのかしらぁ…捨てるのはもったいないから…』
『そうなんですね〜 大変だねぇ』と言っただけで、
『中身はな〜に?』とは聞いていないのに、
『バッグと香水なんだけどね…』と言って、おばあちゃんは袋の中の物を披露してくれた。
プンと樟脳の匂い。
なかなか見ないような古めかしいバッグが数点。レトロというよりは、古めかしいだけのバッグ。しかも、虫に食われたような穴があったり、ほつれてたり、擦れていたり。
(こりゃ、買取なんてムリでしょ、、)
『ちょっとキズとかあるから、買い取って貰えなかったのかなぁ?』やんわりと言ってみた。
香水などは、昔からあるブランドのものではあったが、明らかに変色していたり、使い掛けだったり。
困ったことに、おばあちゃんが、何か1つでもいいから私に貰ってほしいと言ってきた。
『捨てちゃっていいから、お願い!』
『香水はさ、使いかけだから、お手洗いとか玄関に置いて、芳香剤代わりにしてみたらどうですか?』
『それいいわねぇ、じゃあそうするわ!』
『老人ホーム、本当に決めたんですか?』
『そう、来年から。物を持っていけないの。バッグなんだけど…捨ててもかまわないから、あなた貰ってくれない?売れると思ってたから、がっかりしちゃって、こんな重たい物を持って帰る気力がもうないわ。はぁ〜ぁ…』
(う〜ん。困った………)
『分かりました!じゃあ私、頂きます!』おばあちゃんは『わぁ!助かる〜』と言って、小さく手を叩いた。
売り場の中で、受け取った三つのバッグを見る。
とても使えるような代物ではない。
おばあちゃんはホーム入居を決断し、潔く、物を処分している。微力だけど、お手伝いしよう!!
明日は、、、おっ!ゴミの日だ。よしっ!
嵩張る重たいバッグを家まで運んだ。
翌日私は、バッグをゴミに出した。
(終)
長くなっちゃった〜。
一日一善!!
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