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御相伴衆~Escorts 第一章 第三十話 奥許し③~皇后の器 桐藤と一の姫⑥

「怖いですか?」
「・・・少し・・・」
「そうですね・・・」

 納得して頂けるかは、わかりませんが・・・

「お父様、お母様が、可愛い娘の貴女を膝に抱いて、頭を撫でますよね。可愛らしくて、堪らなくなって、頬ずりしますよね。そのようにして、頂いてきましたよね?」
「・・・小さい頃のお話ですね」
「そうですね。それに似ています。その延長線上にあることのような気がします。いずれも、愛情のなせる技ですから・・・」
「・・・桐藤、もう、大丈夫です。私、考えていることがあるのです。だから、その後で、そのことをお話したいと思っています」
「・・・なんでしょうか?」
「それは、後で・・・」

 この期に及んで、そのような強い眼差しで、何かを決意されたような・・・。思いも拠らないですね。貴女は、やはり、一の姫様です。

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 桐藤は、一の姫に尽くす。
 一の姫は、その流れについていくように、取り縋る。
 その施しで、一の姫は、感覚を極めていく。

 御相伴衆の子は、それが生業の如く、求められ、磨き上げられた、第二皇妃の自慢の賜物と言われている。

 ・・・その実、このようなことは慣れていた。お母様と呼んでいた、その女性は、ある頃には、そうではなくなっていた。俺の、寝所における、細かい感性のようなものが磨かれたのは、ひょっとすると、彼女の施しのお蔭だったのかもしれないが・・・。

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 こんな幸せな感覚、身も心も満たされる、というのは、このことなのかもしれない。最愛の女性ひとと結ばれたという、初めての感覚・・・。

 一の姫は、俺に全てを預けてくださったのだ。

 一の姫は、泪を拭い、髪を梳き一纏めにし、リボンで左耳の下あたりに止めた。まだ、名残りで頬が赤い。衣服は纏わずにいながらも、彼女なりに、きちんとしたかったのかもしれない。毛布の中で寄り添う。

「先程、お話したいこと、させて頂いて、よろしいですか?」
「はい・・・そうでしたね」
「桐藤を、皇帝陛下にしてさし上げたいです」
「柳羅姫・・・」
「そうなる為の一番、盤石な方法、それは、お父様の血筋を持つ長女の私が、桐藤の赤ちゃんを産むことです。皇統を紡ぐ証が明確で、さらにその子が男の子であれば、尚のこと、良いと思います」
「・・・ああ、そんなことを・・・『奥許し』ということだけでも、貴女には負担がかかったのではないかと思いましたのに・・・いつから、そんなことを考えてらしたのですか?」
「・・・桐藤が、私に付くことが決まった時からです・・・」
「ああ、姫・・・!!!」

 思わず、抱き締める。ただ、私に心酔してくださっているだけではなく、私の思い、野望まで、鑑みてくださったのですね・・・。なのに、少し、虐めてしすぎてしまったのではないですか?貴女には、いつも驚かされる。やはり、皇后の器を持つ方なのですね。

「どう、この気持ちを現したらいいのか、わかりません。本当にありがたき幸せです。何があっても、僕は貴女を護り通しますから・・・」
「桐藤、・・・愛しています」

⚔📚


 翌朝、姫と、ゆっくりと部屋で、朝食を取り、その後、着替える為に、私室へ戻ろうとしていた時だった。

「おはようございます。桐藤」

 廊下で、声をかけてきたのは、柚葉だった。

「昨日は、おめでとうございます」
「・・・ありがとう。柚葉」
「桐藤にとってみれば、念願だったのでしょう。一の姫は。よかったですね」
「・・・」

 あまり、こんな時に、他の人間と、話はしたくないものだが・・・。

「これで、君の、昔年の願いが叶いますね」
「・・・何の事だ?」
「皇帝陛下の椅子」
「・・・お前の方は・・・二の姫様は、その後、お元気でいらっしゃるのだろうか?」
「そうですね。元気過ぎて、困りますね」

 まさか、解っているのか?・・・公安の情報、柚葉も捉えているのか?

「桐藤、君が、少しだけ、羨ましいです」
「まさか、柚葉、お前、一の姫のこと・・・?」
「まさか、そんなこと、思いも拠りませんよ。でも、桐藤は、大好きなスメラギの地で、その筆頭の姫君と、国の先々のことを語りあえる、という感じですよね」
「柚葉、お前、素国に帰りたいと思っているのか?」
「まあ、・・・そうでもないんですけどね、まだ今は・・・」
「二の姫のことで、手をこまねいているのではないのか?」
「・・・何か、ご存知で?」
「いや・・・」
「公安の情報なら、逐一ですがね」
「柚葉・・・」
「まあ、いいんですよ。君も、僕の悪い癖、ご存知でしょう?」
「・・・」
「全てが予定調和というわけには参りませんから。そのことは、ずっと、重々、承知しておりますからね。二の姫様を抑えきれなくて、申し訳ございません。スメラギを揺るがすような、スキャンダルになるようなら、君のように、僕も、対応を考えておりますから・・・」
「事を荒立てずにいければ、いいと思うが、二の姫を抑え込んだら、俺が褒めてやるから・・・しかし、お前には悪いが、あの姫のお相手は大変だ。決められたこととは言え、お前も苦労をするな」
「じゃあ、桐藤、君が、僕の空いた隙間を埋めてくれますか?あの高官接待の時のように」
「馬鹿な・・・、この期に及んで、なんてことを・・・思い出させるな、そんなこと」
「冗談ですよ。・・・まあ、僕には、可愛い慈朗がいるんで」
「・・・そうなのか?」
「ふふふ・・・あーあ、バラしちゃった」
「いや、大丈夫だ・・・聞かなかったことにするが・・・成程・・・」
「桐藤も一の姫と・・・よかったですね。これで、君の時代がやってくるのですね。楽しみですね」
「柚葉、その時は、協力してくれ。君を片腕にと思っているから」
「御意、ありがたき幸せ」
「まだだ、揶揄からかうな」
「では、また」

 あの日の柚葉は、少し、彼らしくない、・・・と感じた。

 同胞と呼ぶべき、彼らの為にも、先々を整えて、進んでいきたいと考えている。二の姫は、柚葉がそのようだから、見限って・・・というわけでもなさそうだ。皇宮で見る限り、二人は、常に一緒に過ごしているようだし、『奥許し』も当然、済んでいる仲であるから・・・。第二皇妃は、どのようにお考えなのだろうか。いずれ、二の姫を素国の王族の遠縁である柚葉に帰参させた上で、嫁がせるお心算なのだろうか?柚葉なら、上手くやれると思う。性的嗜好は、仕方ないが、解消する方法はあるだろうし、二の姫に世継ぎができれば、それはそれで、安泰なのではないか。

 一の姫がお待ちだ。私室に戻って、着替えて、そうだ、『恋物』の続きを取り寄せてある。お持ちしよう・・・。

                     ~桐藤と一の姫⑦につづく~


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     第三十話 「奥許し③~皇后の器」
               桐藤と一の姫⑥ 御相伴衆~Escorts 第一章

 さて、めでたし、めでたし。
 ・・・となった感じではありますが、そこに柚葉が現れて、何だか、怪しいことを沢山言ってますし、取り交す会話の中にも、え?と思うやり取りがありましたが・・・。どういうことなんでしょうか?

 この後の回は、まだ、2人のターンではありますが、皇宮内での、御相伴衆一同の動きが絡んできます。メンバーが勢揃いするシーンが入ってきます。それぞれの子たちの距離感、動きが解ってくるようなお話になると思います。お楽しみになさってくださいね。

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