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御相伴衆~Escorts 第一章 第八十一話 暗澹たる日々⑪「西のお城にて2(アーギュ・女美架side)2」

「素敵な湯船のお風呂でしたね。一人で入るのは、勿体ないぐらいでした」
「薔薇の花びらが浮かんでましたね。温浴剤まで、ダマクスローズでした。女美架メミカも、こんな素敵なお風呂は初めてでした・・・」
「・・・後で、ご一緒しましょう」
「えーと・・・」

 それは・・・ちょっと・・・でも・・・、

「ああ、ドライヤー、あまり、好きでないので、少し、このままでいいですか?」
濡烏ぬれがらす、というのでしょう?髪のお色、女美架と全然、違うんですね」
「よくご存知で。・・・貴女のタイプなのかな、その辺りは」
「・・・」

 え?・・・今のは、どういうこと?

「あああ、すみません。混乱させる気は、毛頭ありませんから、少し、タオルドライにお時間を・・・可愛らしいですね。ピンクのナイトウエア、とても、女美架様っぽいですね。お風呂上りは、温かいかもしれませんが、ちょっと、薄布のような気がしますね」
「寒くなったら、ガウンを着ます」
「僕がいますから、大丈夫です・・・はあ、このくらいでいいかな、どうでしょう?濡れ髪の男は、ダメな感じですか?」
「王子が良ければ、王子の楽な方がいいです」
「ありがたき幸せ」

🦚🍓

「初めて、お会いした時にも思っていたのですが、女美架様の髪と、瞳のスメラギゴールドは、ちょっと、ピンクがかってるのですね。ランサムにも、市井に、金髪の方が、結構おられますが、貴女の色は、品があります。ああ、いつも、ここに2つある、可愛いのがないんですね」
「ああ、女美架のポンポンですね。夜はおやすみです。あ、ハンカチ、お借りしたもの、洗ってきました。女美架、自分でアイロンかけました。ありがとうございました」

 女美架は、あの東屋で借りたハンカチを、アーギュに返した。

「ああ、ありがとうございます。お部屋に置いてあったのですか?貴女の匂いがします」
「ああ、ごめんなさい、普通にお部屋に置いてあっただけなのだけれども・・・」
「いいえ、消えないといいのですが・・・って、お別れみたいですね。違いますね」

 アーギュは、バスローブのまま、ベッドサイドに腰かけた。

 思えば、こんなに、色々と考えて、自分としては、周到な準備を施して、時間をかけているお相手は、初めてのことで・・・。

 慌てて、仕留めて、獲物を手に入れるような、焦るような、急ぎの狩りとは、既に、若気の至り。ゆっくり、お相手に合わせて、まだ、目覚めたばかりの、その咲きかけた蕾、覚えたての女としての感覚を、更に惹き上げるには、ひょっとしたら、もう、計算は要らないのかもしれない。

 禁句を並べて、前回、彼女を詰った自分は最低なのに、意を決して、ここまでついてきてくれた女美架姫に、心から報いたいと感じていた。

「いいですか?先程の続き」
「え?」
「皇語訳で、回答を、と思っていますが」
「あ、はい・・・」
「I love you more than you will ever know.でしたね。あああ、もう、いいのではないですか?」
「え、そんな風なんですか?」
「違いますよ。傍に来てください。お近くでいう言葉です。『恋物』のようにね」

 あ、・・・もう、そんな感じなのかな・・・

「・・・ちょっと、狡いです」
「すみません。・・・でも、そうしないと、貴女に触れられない」

 会ったら、すぐ、こないだみたいになるのかなと思って、皆と一緒の会とかにしたいとか思ってみたり、勿論、今回は、前回とは違うのは、解ってたから。

 でも、・・・こないだの王子の感じから見たら、多分、だいぶ、お待たせしてるんだろうな。

「女美架は、どこに行けばいいですか?」
「・・・来て頂けますか?」
「・・・はい」
「本当に小さくてらして、私の前へ、もう少し傍に・・・」

 女美架は、ベッドサイドに腰かけている、アーギュの前に立つ。

「ああ、私が座っているのと、貴女が立っているの、同じぐらいの背丈なのですね」

 アーギュは、そう言いながら、女美架の髪を撫で、頬を軽く抓んだ。

(こないだと同じかも・・・)

 一瞬、ギュッと、女美架は目を伏せた。

「お嫌ですか?」

 女美架は、首を横に振り、アーギュに近づく、そして・・・。

「そう、どうぞ、こちらに、・・・え、あ・・・そうですか?びっくりしました」
「ああ、ごめんなさい、つい・・・間違えてますか・・・?」

 アーギュは、急に至近距離に飛び込んできた、女美架に優しく微笑んだ。

「ああ、違いません。こんなのに、正解はないのです。しかしながら、あまりにも大胆で驚いただけです」

 あ、なんか、やりすぎちゃったみたい・・・。しがみつかないで、いけばよかっただけだったのね。つい・・・。

「あああ、やり直します。ごめんなさい」
「僕は、大感激で、いいのですが、密着しすぎて、貴女のことが全然、見えません」
「ごめんなさい・・・」
「可愛いですね。どうして、こんなことに?・・・まあ、嬉しいのでいいのですけども・・・はい、持ち上げますよ、一度。軽いですねえ。ベッドに降ろしていいですね。後で、もう一度、これが相応ふさわしい時が来ますからね。今は、離れてください。脚を、私の身体から外して、伸ばしていいですよ」
「ああ、ごめんなさい」
「今しか、言いませんけど・・・、一度だけね、泣かないでくださいね。癖が出たんですね」
「あああ・・・」
「もう、言いません。お終い。可愛い癖です。とても、大胆で。嬉しいです」
「ごめんなさい」
「これはね、ダメです。出ますから。貴女が気づかないだけで、僕が繰り出すことも、その殆どが、過去の経験からなんですよ。こういうことですら、人は学習しているのですから」
「なんか、なっちゃいました。ごめんなさい」
「大丈夫ですよ。こんなことで、貴女をおかしいとか、思いませんからね。・・・貴女は、私が、どれだけ、貴女のことを愛しているか、解らないと思いますよ」
「あ・・・」
「よくわかりましたね。そうです。先程の皇語訳です」
「そうやって、使うんですね?」
「まあ・・・、ちょっと、強引にねじ込みましたが・・・もう、よろしいですか?藍語のお勉強は・・・」

 二人は、そのままの姿勢で、声を立てて、クスクスと笑った。

「ありがとうございました」

🌹🍓

「随分、我慢しました。ここからは、本当に、触れてもよろしいですか?」

 女美架は、言葉を受けて、見降ろす、アーギュの首に縋りつく。

「それは、OKと取りますが・・・ずっと、お会いしたかったのですよ。また、貴女が見えなくなってしまいましたね。少し離れて、可愛いお顔を見せてください」
「・・・」
「こうすると、伏し目がちになるの、こないだも、そうでしたね、そういう所も、いいですね・・・、くださいね。はぅ・・・」

 今更ながら、彼の懐は大きくて・・・
 女美架なんて、小さな子みたい。食べられちゃうのかもしれない。
 女美架の唇、全部、取られそう。

「ほら、こないだみたいに・・・できますよね?・・・」

 どこから、どうすれば、それになるのか、女美架は解らないけど、多分、されたら、同じ感じに返すと、そうなのかもって。
 応えると、お相手の方は、嬉しいとか・・・

「・・・んっ、はぅん・・・」
「・・・嬉しいですよ、そう・・・やっぱり、お上手ですね・・・」

 ダメな感じ。女美架の中で、記憶がごちゃ混ぜになってるの、解っていて。

 なんか、頭の中が、こないだは真っ白だった感じで、色んなこと、わかんなくなってたと思うけど、今、もう一人の女美架が、ちゃんと見てる。
 見てて、たぶん、気持ち良く感じちゃうのは、その女美架なんだ・・・。
 女美架、やっぱり、おかしくなった。もっと、ダメな感じ・・・。

「何か、考えてますね?」
「解るのですか?」
「うん、解りますよ・・・触れてるとね、余計です」

 王子は、狡いけど、優しいから。
 今は、あんまり、怖くない、かな・・・良かったかも。
 女美架のおでことか、髪の毛とか、大きな手で撫でてくれてる。
 それは、安心できる感じ。
 でもね、また、困る所に、それが、ずれていくから。

 できるだけ、思い出さないようにしてるのに、一瞬思い出す、何かがあって、ハッとするの。
 同じなのに、違って、こんなに近過ぎるから、勘違いしてるのかな。
 もうね、お相手の髪の色も、香水も、女美架が、こういう風になる時の合図だと思うことにした。偶然だからって。

・・・こういうことですら、人は学習しているのですから

 その時に、女美架に都合が良いみたいに考えれば、辛く感じることも少なくなるのかもね。

🌹🍓

「・・・何か、憂いてるのですか?・・・聞きませんが・・・」
「ごめんなさい・・・大丈夫です」
「ああ、今日は、色々と、サプライズが多くて・・・でもね、貴女が頑張って、色々なことをされてきたこと、今日に向けてという意味だけでなくて、それが解るので・・・私は、それが、一番嬉しいんですよ」

 そう、覚えてしまった過去のもの、それは、気持ちとそれが伴なった、強い絆とでもいうべきものなのでしょう。
 残念ながら、貴女の中から、それが、そう簡単に消えないのも、私は、解っているんですよ。
 もしも、彼と同等の立場、条件だとしたら、勝てないのかもしれない・・・本当に、我ながら、珍しいぐらいに弱気です。

 それが、私が、一国の王子であること、そして、貴女が皇女という立場なのだということ、それが、私に追い風を送ってくれるなら、今は、それすらも利用したい、そんな、私は、浅ましくも、愚かな男です。

「とても、怖いです」
「え?」
「また、無碍をして、仕掛けて、狡いことをして、と思われてませんか?」
「・・・王子」
「嫌われたくないのです、貴女に・・・」

🍓

 東屋の時の王子なら、もう、とっくに・・・
 なんか、今日は、お話が多いな、とは思ってたけど・・・。

 バルコニーでお話を聞いていた時、女美架も、王子の気持を、何度も聞いたり、・・・今思うと、・・・また、子どもっぽい質問してたのかも。・・・でも、あの時の王子は、きちんと、女美架の所まで、下りてきてくれていた感じなのかな。

 でも、今の王子はなんか、ちょっと、違くて・・・

 女美架の隣にいて、女美架が見ていて解る感じのとこにいて、こういうの、女美架はよく知ってて。
 距離の近い人とのことで、こういう恋人の関係とかもあるのかもしれないけど、よく知ってる感じがして・・・今、距離感、似てる気がする。

 その時は解らなかったけど、貴方とは、大事な準備してたのかもね。
 
 ・・・数馬。


~暗澹たる日々⑫につづく~


みとぎやのメンバーシップ特典 第八十一話 暗澹たる日々⑪
  「西のお城にて(アーギュ・女美架side)2」 御相伴衆~Escorts 第一章

 女美架姫は、アーギュ王子との逢瀬に際して、そのことに気づいたようです。数馬の役割が、今の自分のこの状況に置いて、慌てずに済むように、既知の経験として、もたらしてくれていたことを。

 そして、アーギュ王子もまた、自分の心に気づいたのですよね。
 今までの戯れの恋とは、一線を画した、その自らの心持に・・・。

 お互いの距離は、この後、深まっていきます。
 次回をお楽しみになさってください。

 

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