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御相伴衆~Escorts 第一章 第八十四話 暗澹たる日々⑭「おまけ~永依可の結婚式」

🌟このお話は、第二十四話のエピソードに出てくる、永依可エイカという人物の結婚式という、おまけエピソードです。柚葉がメインのお話ですが、この時の事件が伏線となっています。おまけと見えますが、時系列的には合っていて、後半がまた、今後の伏線となるパートです。

 この永依可と柚葉のサイドストーリーを、次回から、少しですが、寄り道的にお送りする予定です。では、本編をお楽しみください。



「お兄様、ご結婚おめでとうございます。そうなんですか・・・どっちも行けるんですね」

 永依可は、軍部元帥の亥虞流イグルの娘との縁組が決まっていた。

 当然、花嫁には、秘密の癖だろう。かつて、桐藤キリトの策略の片棒を担ぎ、柚葉を襲おうとした。柚葉は、逆に、それを楯にとる。なんというのか。相手が悪過ぎたのだ。当然の事乍ら、あの時の一件は、対抗派閥のトップ、陸軍大将の志芸乃シギノにまで、つかまれてしまっている。

 結婚式の祝いの席に、青いバラの花束を持ち、永依何と花嫁の前に現れる柚葉。花嫁は妊娠中だった。顔色の変わる永依可。

・・・何年も前の事だと、お忘れになっていませんでしょうか?

「その節は大変、お世話になりました。上手くやったもんですね。はい、僕からのお祝いのメッセージカードです。すぐ、見てくれると嬉しいな」

 こっそりと、永依可に耳打ちし、その後、花嫁にもお祝いの挨拶をする。
 評判の柚葉は、うやうやしく、紳士的に振る舞う。

「綺麗な御相伴衆の方ですね。彼が、社交界の華、二の姫様付きの柚葉殿ですか」

 その後、永依可は、宴を離れ、慌てて、トイレで、その封筒を見る。数枚の写真、あの時の柚葉との姿だった。申し開きのできない証拠を突きつけられる。そこへ、志芸乃シギノが現れる。

「本日は、誠に、おめでとうございます。どうされました。ああ、いずれにしても、よろしゅうございました。それね、まだ序の口です。いくらでもありますよ。さて、義父の亥虞流殿に知られたら、どうなりましょうか?」

 以降、永依可は、志芸乃のスパイとなり、イグル派の情報を送り続けることとなる。桐藤が柚葉を虐めようとしたことに加担したことがきっかけで、却って、永依可は進退を脅かされる嵌めになった。

 一見して、桐藤キリトは激しい部分もあり、対外的に、攻撃的で、恐れられていたが、実質は、柚葉の方が策略家で、何枚も上手だ。柔らかい物腰で、穏やかな彼に、誰も想像はしえないだろうが、その実、✖✖✖であるのだから、当然のことなのだが・・・。

 その時、柚葉の部屋の隣で、この写真と音声を撮ったのが、維羅だった。つまりは、その時は、柚葉に対する、桐藤の虐めの証拠を集めていたに過ぎなかったのだが・・・

「維羅も来てたのか?珍しい」
「奥様の診察も兼ねてね」
「ああ、そうか。こういう時、医者ってスペックは、役立つんだね」
「ふふふ・・・まあ、そういうことね」
「この時のライブ観戦、いかがでしたか?もう、忘れかけちゃってるかもしれないけど・・・」

 柚葉は、遠い目をして、天を仰ぎ、維羅に視線を向けた。

「動かぬ証拠ね」
「僕は、これが、仕事ですから・・・皇宮の大人のお相手をするのがね。僕にとっては、こんなの、痛くも、痒くもありませよ。病床の皇帝陛下には、この事は、皇妃様が伝わらないようにしてくださってますから」
「これが役立つことも、そうそうないとは思われますが、あの男が怯えて、こちらの意図通り、動いてくれさえすれば、好いのですよ。もう少し賢くあれば、志芸乃大将に取り入るような動きもできたでしょうにね。あまり、器用な男ではなさそうね」
「彼は、真面目な、好い人です。凡庸な一兵卒が出世されて。こんな出会い方で、残念です」
「うふふ・・・」

✿🔑

「その後、数馬はどう?」
「うん、脚の怪我は、だいぶ、回復してきたみたいね」
「そう・・・脚じゃない方は?」
「んー、それこそ、リハビリ中ね」
「へえ・・・維羅、数馬、タイプでしょ?」
「わかるー?」
「うん、まあね、少なくとも、僕みたいなのよりね」
「数馬に言ってやったの。賢い桐藤より、優雅な柚葉より、可愛い慈朗より、元気な数馬が好き、って」
「クスクス・・・悪いお姉さんだ」
「えー、本気なんだけど?」
「維羅から、そんな言葉、聞くと思わなかったよ」
「そお?」
「普段の貴女から、想像できないな、そんな殊勝な言動・・・少なくとも、僕は、知らない」
「知りたかった?」
「まあ、いっかな」
「でしょう?慈朗シロウちゃんとは、上手く、行ってるみたいね」
「聞かないでよ。当たり前じゃない」
「あの子も、育つ毎、見る度に妖しくなっちゃって。あの寝所での艶技と媚態で、あの容姿でしょ。それとあの素直な性格ね。どこに出しても、恥ずかしくない、立派な天使ね」
「どこにも、出したくない」
「はいはい」
「数馬、とまあ、そういうことなら、良かったよ。あれはあれで、真面目だから、本当に、三の姫との事は、きつかったと思うし・・・」
「だいぶ、腐ってたわよ。最初の頃は」
「えー、見せるんだ、維羅には、そういう顔」
「まあ、同胞の君たちの前では、絶対、見せないだろうね。あの頑固者は・・・一途なだけに、本当に、女美架様の幸せ、考えてるじゃない。対外的には、流石に、役者だから、微動だにしない感じだけど、本当は、凄く脆いのよ。愛情に敏感で、優しくて」
「褒める、褒める」
「あらあ、柚葉のことも、褒められるわよ。ついでに、桐藤のこともね」
「流石、維羅姉さん」
「まあ、数馬は、もう、大丈夫だから、心配しないでやって」
「うん、だろうけどね、俺も数馬みたいな、心栄えの好い男は好きだな」
「・・・無理目、だと思うんだけど・・・」
「とは思うけど、試してみたいことがあるんだ、維羅」
「何?」
「今回の件、シェアできる奴かどうか、見渡して、同志としての力量のあるのって、数馬ぐらいしか、思いつかない」
「そうねえ、紫統様からも、新しいカードを求められている所だし・・・彼ね、拷問されても、口を割らない、って言ったのよね。聞き出したくて、会話を誘ったわけでもないのにね」
「試して、合格したら、こちらへ引き入れる」
「いい見立てね。私も、数馬しかいないと思ってた・・・」
「・・・あああ、そうだったのか。なーんだ。維羅の本気だっていうの、信じちゃったよ」
「えー、本気と実益兼ねて、何が悪いの?」
「わかった。じゃあ、高官接待の時に、数馬に『踏み絵』をさせる」
「よろしくね。合格させてやってね。彼が味方になれば、完璧だわ」
「いよいよだな」
「気を引き締めてね」

~次回、おまけのおまけエピソード「特別指令」につづく


 御相伴衆~Escorts 第一章 第八十四話 
           暗澹たる日々⑭「おまけ~永依可の結婚式」

 メインのお話ではなかったのですが、今後のお話に影響する出来事でしたので、このタイミングに組み込んだエピソードです。

 お読み頂きまして、ありがとうございます。
 次回は、今回のお話の元となった、永依可と柚葉の、過去のエピソードをお送りします。

 お楽しみになさってください。

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