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その手をとって 最終話

 黙ったまま、素直に、手を取らせてくれた。胸の前で組んだ、その両手を合わせて、包んでやる。

「大きい手ね。穂村さん、背も高いし、ああ、あと、思ってたの」
「なんですか?」
「小さい時、女の子みたい、って言われなかった?」
「え?」
「目が大きくて、まつ毛が長いから」
「ああ、あったらしいです。母親が言ってました。赤ん坊の時かな。よく、わかりましたね」
「そうかなあと思いました。これね、女性が羨むぐらいの、まつ毛ですよ」

 貴女だって、結構、大きな瞳じゃないですか。
 ちょっと、たれ目で。狡い感じの。
 ・・・って、口に出して、言えばいい。

 それにしても、本当に、手が冷たい。女性特有の感じなのかな?

「あったかい。大きい手ですねえ。掴み取りしたら、得ですね」
「ああ、やったことないです」
「絶対、得だわ。今度、出くわしたら、やった方がいいですよ」
「じゃあ、そうさせてもらおうかな」
「ええ、そう・・・あ・・・」


・・・・・・・・・・・・・


「・・・晩生おくてで、引っ込み思案だから、独りだったの?」
「まあ・・・そんな感じ」
「嘘」
「同じ言葉、返したいんだけど・・・」
「どこが、晩生なの?」
「全部」
「嘘つき・・・」

 そうだったのか?貴女だって、随分な・・・、解らないものだな。

「雪に感謝かな」
「雪がなかったら?」
「っていうか、本当に、道を知らなかったの?」

 あ、クスクス、笑ってる。

「ここ、素肌の方があったかい」

 また、腋に手を挿し入れてきた。変な癖だ。

「インクレイズって、知ってる?」
「要らないでしょ?・・・そんなもの」
「あああ、嘘、そんなこと、言うの?」
「だって、そうでしょ?うふふ・・・」

 まだ、雪は止まないらしい。明日も、ゆっくりでいいかもしれないな・・・。


 ・・・まあ、渡会には、しばらく、黙っておくことにする。


・・・・・・・・・・・・・

「あれ、ただの粉糖入りの、微量の小麦粉と、身体に悪くない、むしろ良い感じの諸々だったんだけど」
「はあ?」
「良かったじゃん」

 渡会にしてやられたか。まあ、何にしても、背中は推してもらえた、ということにはなるのか・・・。

「洗面所が壊れた時、給湯で、女性達、歯磨きしてたじゃん。あの時だよ。奴が言ってたの、多分、それじゃねえの?」

 ああ、後輩のあれね。わざわざ、言うかな。まあ、わざとなんだろうけど・・・。

「やったな、おめでとう。・・・全員出し抜いたな、安パイの穂村さんがよ」
うるさい、それ、もう言うなよ」
「あははは・・・今度、奢れよ」

                             ~おしまい~


みとぎやの小説・連載中 「その手をとって」全7話 最終話

 お読み頂きまして、ありがとうございます。

 以前「その変わり目」という作品がありました。ラベイユシリーズの第一作目でした。この「その手をとって」は、その第二作目に位置します。前作にもありました解説を、今回は、後書きとして、付記させて頂きます。

解説「晩生と未亡人」

 なんか、関係性を題名にすると、下世話な印象ですが、まあ、カテゴリー的に表記させてもらいました。

 社内恋愛ものですね。「その変わり目」が若いver.で、こちらは、年齢的には、上になります。

 主人公の穂村と、ターゲットの彼女は、一応、同年齢ぐらいの設定となりますが、そのライフサイクル的な立場が、全く違う。

 彼女は、一応、「萩君のお仕事」の大家さんです。これは、「if」を含んだ、ラベイユ版です。ご主人が亡くなった後に、彼女が、駅向こうの会社に勤めていたら、どうなるか・・・という感じですね。穂村は、ここまで、独り身という設定になります。

 今回も、男性側に誘引の要素がありました。また、友達に助けてもらってますね。渡会わたらいさんは、協力者という、サブキャラの代表になりつつあります。

 これは、たちが悪いですね。嵌めようとしたんですよね。結果的には、上手い結果になりましたが。つまりは、渡会は、晩生の穂村の背中を押す為に、お守り的に、媚薬と称して、分包を渡したのです。

 でも、頂けないですね。あまり、良いことではありません。でも、良いばかりではない。そんな力でも借りたい、となった穂村・・・どうやって、誘うか、引き込むか、本当に、何かの力とか、偶然とか、お相手の感じとか、色々と考えていて、数年程、足踏みしている、という図を、親友は見かねたあまりに・・・。

 ほらほら、競争率が上がってきたよ。事実は進行していく、噂も流れてくる。信憑性を帯びてきて、やっと、お尻に火がついて、親友に愚痴ってきた穂村に、渡会が、魔法のアイテムを渡した・・・にしても、頂けない。


「穂村さんは、関係ないですから」

 彼女としては、言葉通りなのに、穂村自身、これには、カチンときたみたいですね。

 昔は解らなかったんですけど、男の人は、とても、嫉妬深い。そして、恋愛に打たれ弱い。好きな女性から「関係ない」とは、きついらしいんですよ。まあ、聞き間違えというか、思い込みだった。別に、埒外だと、わざわざ、言って寄越すはずもないのに、そもそもの自信のなさから、勘違いして、勘ぐってる・・・。

 それでも、彼女は、結局、他の人とは行かずに、穂村さんと出かけたわけです。本当に、モテなかったらしいのですが、それは、過去に於いて、お尻が上がらなかっただけのようで、渡会は、それも見ている。

 細かいことは、本編で、ということですが「その変わり目」という視点においては、スイッチは入っていて、大人ですから、流れはつきやすかったのかなと。

 推測は少しにします。「穂村さんなら、いいかな・・・」とか、彼女の方でも、一度くらい、思ったことがあったのかもしれませんね。時期的にも、次に行ってもいい頃合いだったのかもしれませんしね。

 恋愛小説は好きです。あんまり、上手くないのですが、描いてみたい分野の一つですね。それについても、また、別の所でお話できたらなと思います。

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