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御相伴衆~Escorts 第一章 第二十二話 忍んでおいで~柚葉と慈朗④「大好きだよ」

 こんなに余裕のない、柚葉の姿、見るの、初めてだった。今までのやり取りで、僕も本気出して逃げようとしなかったのも、事実なんだけど、でも、それは、どうやったら、柚葉を傷つけないで離れるか、難しくて、解らなかったから。柚葉は、柚葉で、あれで、随分、自制してくれてたのが、よく解った。・・・でも、この後の柚葉は、もう、僕を絶対に、逃がしてくれなかったから。

「・・・、慈朗シロウ、好きだよ」
「ん・・・だ、ダメだよ」
「嫌がってないじゃん、一つも」
「・・・ああん、どうしよ・・・」
「どうもしないで、いいよ、そのままでいれば、いいんだから」

 こないだの高官接待の時、帰り際にしてくれたやつ。疲れて、麻痺してたから、冗談だと思っていたんだけど・・・、同じ風に、柚葉は、僕にしてきた。唇を外さずに、もっと、長く、強めたり、緩めたり、・・・あんまり、女の人は、こういう風にしないよね。

「はぁ・・・」
「苦しかった?」
「・・・はぁ・・・なんか、凄い・・・」
「・・・そうなんだ、・・・好かったってことかな・・・嬉しいよ」

 弱いんだ。そういう風にされちゃうと、どんどん、嵌まり込んでくの、多分、柚葉は、僕のそんな感じを見抜いてる。自分でも、情けないぐらい、スイッチ入るの、早くて、簡単なの。・・・でも、仕事の時は、これが楽なんだから、もう、そうしちゃってるんだ。頭の中、普通にしてたら、やってられないから、こうなっちゃう方が、自分を護れる気もするし、お相手も悦ぶの、・・・あああ、でも、柚葉は、お客さんとかじゃないから・・・

「しがみついてくれて、ありがとう。今夜は、そんな可愛い慈朗を、いっぱい、見せてもらうから・・・」

 結局、こうなるんだよね。ましてや、柚葉だもん。優しくて、カッコよくて、頭良くて、きっと上手で、憧れてたんだからね。逃れたくても、無理だったのかも・・・。もう、柚葉のペースに引っ張られてく・・・してくること、してくることが、全部、僕のツボを刺激して、クルクルと、螺旋階段、っていうやつ、登っていくみたいな感じになってく。よく知ってる感じに、首筋や、耳元、鎖骨を唇でされて、ブラウスのボタン外される。もう、僕がどんなになってるかなんて、僕自身、もう、お約束な感じだから・・・

「可愛いよ、もう、いっぱい、声、出してくれて、何が、ダメなのか、意味なんてなかったでしょ・・・んっ・・・」

 ブラウスを肌蹴させた所から、順に、柚葉の唇がなぞられていく。

「ああっ、そこ、ダメっ・・・」
「女の子並みの反応だね、・・・ああ、やっぱり、慈朗は綺麗だね。・・・聞いたんだ、あの日の慈朗のお相手がね、また、会いたいんだそうだよ、紫統様伝いで・・・ねえ、あの軍人に何してあげたの?」
「や・・・、何もしてないよ、僕はされてただけ・・・」
「こんな風に?」
「んー、違う、柚葉みたいに優しくないから・・・虐めないでよ、思い出したくない、こんな時に、やな記憶と重ねたくない・・・」

🔑

 言ったね。ありがとう。もう、どっぷり、嵌まり込んでくれてる。ちょっとね、予想より、こうなるまで、時間がかかったけど、そんなことは、却って、いい刺激になって、惹き上がれる。

 天性なんだろうな。本当に、可愛すぎて・・・頬を赤らめて、耳まで、真っ赤だよ。本能に忠実で、とても素直で綺麗だね、・・・君を天使と評する、大人たちが狂うのは、当然だよ。こんなの見せられちゃ、堪ったもんじゃない。

「ここ、弱いんだ・・・これ、・・・んっ」
「ああっ、やだ、柚葉、そんなに強くしないでぇ・・・」

 涙目になって、懇願してる。そんなに気持ちいんだね。止めるわけないじゃん。

「や、やぁだ・・・、柚葉・・・ん・・・」
「泣いちゃったね。可愛い顔して、もう、顔ぐちゃぐちゃだね・・・・・・、締まりなくなって・・・そんなに、好かった?」

💚💚

 はあ・・・、もう、ダメだあ。わかるんだ。お客さんは、自分勝手にするだけだからね、その間、声あげて、耐えてればいいんだけど・・・、柚葉は違う、ちゃんと、僕を惹き上げようと企んでいて、見逃さないんだ。すごく、狡くて、僕のこと、お見通しで、先回りして、逃がさない。手が奮えちゃうよ、ボタン、外すだけなのに・・・、あああ、ダメだよ、柚葉の身体、綺麗で、なんていうのか、やっぱり、柚葉なんだよ。頭悪い僕には、言葉が浮かばない。柚葉らしい、いい匂いがして、・・・それと、やっぱり、凄い、色っぽくなってるんだ・・・。

「・・・そう、いい子・・・これで、お互い、どこ触っても、素肌で気持ちいいから・・・あああ、もっと早く、お前とこうなりたかった、慈朗」
「柚葉、あったかい・・・」

💚💚💚

 抱き締めてやると、ウットリとこちらを見る。頃合いだね。困った顔で、取り縋るが、身体を、床に押し付けて、仰臥させた。

「あ・・・ああ・・・やっぱり・・・」
「やっぱり、だよ、段取りから行くと、そうなるでしょ、っていうか、もう準備万端って感じじゃない、これって・・・慈朗、お前は、本当にいい子だよ、大好きだよ」
「ちょ、ちょっと、待って、解ったから・・・」
「ふふふ、怖い?」
「あのさ、あれは、ダメだから、最後のは、痛くて・・・」
「ああ、可哀想だったね、わかってる。それは、いきなり、しないから。本当に、もっと早く、僕と先にしてれば、よかったのに、高官接待の前は、君の所に、お妃様が入り浸りだったからね・・・」
「言わないで、今、お妃様のことは・・・」

 へえ、いいね。悪いことしてる風なんだね、慈朗にとっては。でも、言ったじゃん。もう、お妃様にはバレてるって。堪らないね。お前、無意識に、煽り上手なんだよ、解ってるのかな?もう、可愛すぎるんだけど・・・。

💚💚💚💚

「やだ、柚葉、やっぱ、恥ずかしい、そんなに見ないでよ・・・」
「もう、見えてるから、俺も同じになってるの、見ていいから・・・ねえ、ランサムの礼拝堂、行ったことある?」
「何?・・・ランサムに行ったことなんかないよ・・・」
「あそこの天井画に、慈朗がいるよ、天使の姿で♡」
「・・・え?その絵の天使とかに、似てるってこと?」
「簡単に言うと、そういうこと。とっても、綺麗で艶やかで、見た時、すごく感動したんだ」
「・・・」
「今度、お許しをもらって、一緒に観に行こう。慈朗、きっと、お前、絵心をそそると思うから・・・」

 こんな時に、こんなことに思いを馳せられるのは、やっぱり、柚葉なんだな、急に、普段の顔に戻ってる。すごい、不思議なんだけど、流れが止まったようで、でも、柚葉がすごい嬉しそうにしてるのが、解ったから、やっぱり、何、文化的とか、ぞうけいが深いとか、そういうやつなんだろうね。僕からは、逆さに振っても、出てこないよ。

「見てみたくない?ああ、後で、蔵書の画集を見てみよう・・・でも、それは終わってからね・・・」

 ああ、なんとなく、頷いちゃったんだけど・・・あ、始まっちゃった・・・多分、あんま、持たないかも・・・

「あああっ、もう、だめ、多分、すぐきちゃうから・・・そんなにしないで・・・」
「じゃあ、焦らそうか?」
「ん、もう、柚葉が触ってるだけで、ダメだと思う」

なんで、わざわざ、良い声で、耳元で言うかな・・・狡いよ、柚葉、あああ、もう解んなくなってきたあ・・・

💚💚💚💚

 ランサムの礼拝堂の天井画の画集を本棚から取り出す。

 御揃いのガウン着て。俺の特注だから、慈朗には大き過ぎて、腕を捲って着ている。

「これも匂い、しっかり、入ってるね。いい感じだね。ちょっと香ばしいけど、柚葉のティーツリーだ」
「試しにね、頼んで、香木を焚きつけてみたんだけど、良い頃合いだったかな・・・」

 まだ、頬が赤いな。唇も。可愛すぎるから。抱き寄せると、どちらからともなく、軽く口づける。これだね。ちゃんと、恋人同士になった証拠だ。

💚💚💚💚💚

 普通の柚葉に、戻ってる。絵のこととか、色んなこと知ってて、勉強の時みたいに説明してくれて。なんか、ますます、優しくて、穏やかな感じになった気がする。・・・これで、良かったのかな・・・。

 僕が柚葉にされた後、お願いされて、お返ししたんだ。あの後。そしたら、柚葉、びっくりするぐらいに、女の子みたいな声上げて、可愛くなってた。・・・あああ、僕って、こんななのかな、って思ったんだけど・・・。

「あまり、広くない建物なんだけど、綺麗に昔の装飾が残っていてね、歴史を感じるんだよ」
「わあ、確かに、綺麗。写真だから・・・ああ、もう少し、なんか、工夫すれば、よく見えるのにな・・・」
「それって、撮影の方法?」
「うん、御爺ちゃんだったら、もう少し、違うのかな・・・と思って」
「御爺ちゃんって、写真、撮ってたんだ」
「うん、写真展、っていうの、やってたぐらい、いっぱい撮って、上手だったから、確か、若い頃、スメラギの文化大臣賞、というの、貰ったことがあるって」
「へえ・・・すごいんだな、ちょっと、待って。どんな、写真撮ってたの?」
「なんでもだよ。でも、得意なのは、自然の風景かな?気に入った所に、毎日通って、1日中、光の入り具合とか、草木の伸び具合とか、影とか、いろんなのを見て、良い頃合いの風景になったら、撮るんだって」
「それは、辛抱強いね。えーと、これかな、ナチュラルフォトセレクション、多分、スメラギのその文化大臣賞、もらった人の特集本みたいだよ」
「わあ、御爺ちゃんの、載ってるかな?」
「近年30年ぐらいのかな。ああ、どうかなあ、ギリギリ、載ってたらいいね」
「見てもいい?」
「勿論・・・、ちょっと、冷たい飲み物、持ってくるから」
「うん、ありがと・・・うーんと、あ、これ、あった。あったよ、柚葉」
「へえ、本当に?良かった、本を出してきた甲斐があったね」
「懐かしい、これ、スラムの風景、遠くに入ってる・・・この写真、見たことある・・・」

 ちょっと、懐かしくなって、泪が出た。御爺ちゃんはいないけど、お父さん、お母さんは、新しい綺麗な家で、上手く暮せているのかな?

「ホームシックになっちゃった?」
「ああ、うん、大丈夫」
「おいで」
「あ、うん」

 また、膝の上に乗せられた。一度、ギュッてして貰ってから、一緒に、その分厚い、重い本を見る。何枚か、御爺ちゃんの撮った写真があった。

「あ・・・これ、僕だ」
「赤ちゃんの写真だね。これ、慈朗なの?やっぱ、天使だ、ああ、見てよかった。これ、大事にするよ、なんだ、今も変わらないよ。ほら」
「それは言いすぎかも・・・でも、見せて貰えて、よかった。ありがとう・・・」
「え?慈朗の御爺ちゃんって、スゥォード・ナヴァリなの、ひょっとして?」
「あ、そうだよ。書いてあったでしょ。隠 御剣なばり みつるぎが、本名だよ」
「慈朗、凄い人のお孫さん、ってことなんだよ。世界的に評価された写真家の5本の指に入る人なんだよ。あああ、・・・ただ者じゃなかったんだねえ。皆が知ったら、きっと、一目置くと思うよ」
「ああ、言わないで、いいから。そんなの。僕には関係ないし・・・」
「でも、絵を描いたりが上手いのは、御爺ちゃんの血筋なんじゃないか?」
「写真じゃ、ご飯は食べられないって」
「・・・誰かに言われたんだね」
「貧乏になっちゃって、スラムに行くしかなくなっちゃった。御爺ちゃん、人がいいから、写真撮ったけど、それを売って、お金にする権利、盗られちゃったみたいでさ」
「・・・そうか、ねえ、慈朗、もしも、この皇宮が、戦争とかが起こって、危機に陥ったら」
「え?そんなことって、あるの?」
「今後、ないとは言えない。その時は、俺について、素国に来ないか?」
「・・・素国って、北の大きな国だよね」
「うん、ここより、寒いかもしれないけど、豊かな国だよ。皆に平等に、仕事について、お金を分配する考えの国だ。基本的に、ここのスラム地区のような所はない。土地が広いから、色々な農作物が取れて、貿易も盛んでね、食糧の自給率も高くて・・・」
「柚葉、桐藤みたいだ」
「え?」
「自分の国、大好きなんだね・・・帰りたいの?」

 柚葉?・・・ああ、ニッコリしてくれた。なんか、・・・よかった。一瞬、変なこと、聴いちゃったかなって、思っちゃった。

「いずれはね、・・・だから、その時は、一緒に来ないか?」
「うーん、遊びに行くのはいいかもしれない。素国も、あと、礼拝堂見に、ランサムに行くのも・・・でも、スメラギを離れるとか、考えたこともないから・・・」
「そうか・・・慈朗は、これから、勉強したら、ものすごい、色んなことがわかるようになると思うから・・・、その時に、俺の側にいて、助けてくれたら、嬉しいんだけどな」
「・・・なんだろ?それ、桐藤と同じようなことかな?」
「・・・」

 柚葉、黙っちゃった。・・・どうしたのかな?

「どうする?明け方まで、少し眠ろうか?そしたら、数馬のとこ、帰ったら、丁度いいかもよ。それとも、朝まで、ここにいる?」
「うーん、柚葉さえ嫌じゃなければ、今夜は帰ろうかな、なんか、その方がいい気がする。本、ありがとうね」
「わかった、じゃあ、これね」
「うん・・・」

 優しいキスしてくれた。お休みのキスだね。

「慈朗とこうなれて、良かった」
「うん、なんか、びっくりだけど、僕も・・・」
「大好きだよ、慈朗」
「うん、柚葉、僕も・・・」
「また、忍んでおいで・・・」
「うん」

        💚「柚葉と慈朗編」終わり・本編、他のお話につづく💖


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              忍んでおいで~柚葉と慈朗④「大好きだよ」
                      御相伴衆~Escorts 第一章

 お読み頂きまして、ありがとうございました。

 柚葉の想いが叶ったということで。このことが、密やか(?)に、ベースにあると思いながら、今後の多くでの絡みを見て頂くといいかもしれませんね。一応、この関係は、秘密で密やかに進んでいくもの、の筈なんですが。

 次回はまた、別の人間関係のシリーズになります。

 ここで、出てきましたが、慈朗のお爺ちゃん、スゥォード・ナヴァリ
素国人の柚葉ですら、知っている有名な写真家だったということですね。

    みとぎやがnoteを始めた月に投稿しています。慈朗のルーツのお話となります。よろしかったら、読んでみてください。

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