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御相伴衆~Escorts 第一章 第二十七話「お薬の時間です」桐藤と一の姫③
「嬉しいですよ。頑張って、お召し上がりになってくださったのですね。以前は、あまり、召し上がって頂けない時もあったので、安心致しました」「でも、桐藤は、足りないでしょう?」
「すぐ、お昼が来ますから、大丈夫ですよ。さて、お薬を飲みましょうね。ああ、随分、ありますね」
「御殿医の処方ですから、守らないと、病が進んでしまうのですって」
「それは、大変です。一つずつ、出して差し上げますから、手を出してください」
「そんな、そこまで、暁だってしません」
「そうですか?」
「小さな子ではないのだから、できますから・・・」
「わかりました」
お膳をワゴンに片づけ、水を注ぎ、姫にお渡しする。後は、対峙して、俺は、貴女がお薬を飲むのを見ているだけですね。いいお仕事ですね。
「あ、・・・あの、そんなに見られてると」
「困りますか?」
「恥ずかしいです・・・」
「じゃあ、僕はワゴンを外に出してきますから、その間にどうぞ」
「なんか、ごめんなさい」
振り返ってみると、また、慌てたご様子で。そんなに、焦らなくてもいいのに。
見え隠れする、・・・お気持ちの、その感じが、堪らなくなりますね。
「全部、飲まれたようですね」
「もう、お腹がいっぱいです」
「そうでしょうね。では、ゆっくりなさってください。では、お腹が楽になるまで、お話でもしましょうか」
「あ・・・えーと・・・」
「『恋物』の頁。正解です」
「・・・正解?」
「じゃあ、どうして、あそこに、栞を挟んでらしたんですか?」
「えーと、また、変なこと、言ってしまいそうです」
「大丈夫ですよ。多分、貴女の思われていることで、正解ですから」
「あの・・・あの登場人物の、お医者様と、昨日の桐藤のこの本を置いていかれたのが、重なると思ったので・・・」
うんうんと頷いて見せる。
「・・・変ですよね?」
「どうしてですか?・・・いえね、僕の意図が、きちんと伝わったので、驚きました。このお話になりましたので、大事なお話をしたいと思うのですが、よろしいですか?」
「じゃあ、私、変じゃないのかしら?」
「大丈夫ですよ。少なくとも、僕にとっては、ご理解を頂けた、貴女の感覚というか、本当に嬉しかったんです。こちらこそ、貴女を試すようなことをしてしまって、大変、申し訳ありませんでした」
「そんな、謝らないで、桐藤。でも、どうして、そんな風に・・・昨日の貴方は、私の方も見ないで、本を置いていかれて、何か、いつもと違っていたので・・・」
「昨日、何がありましたか?」
「あ・・・はい・・・」
目をギュッと瞑られて、下を向いてしまわれた。頬がまた赤らんで、耳まで真っ赤になられてる。
「お顔が見えないので、お隣にいってもよろしいですか?」
「え、あ、大丈夫です」
「もう、来てしまいました」
「はあ・・・」
溜息なんか、つかれて。困りましたね、とても、可愛いです。
「困っておられるのですか?」
「はい」
「嫌ですか?僕が隣にいるのは」
「いいえ」
「なら、良かった。肩に力が入ってます。リラックスしてください」
僕は、貴女の右隣、椅子の少し斜め後ろ、ベッドサイドに掛けていて、今は、左手で、貴女の右の肩に手を置いてます。軽く、指先で、トントンと叩く。
「できれば、落ち着いて、お話ができればと思っているんですが、どこからにしましょうか・・・?・・・あ、そうだ。きっと、貴女の方が、僕にご質問があるのではと思って」
「えーと、・・・あの、最後に仰ってた本のことなのですが・・・」
「はい」
「紫の本って、紅色の本の次の・・・?」
「はい、そうですよ」
顔を見ませんよね。少し、僕が後ろにいるからですかね。
「それが、どうしましたか?」
「あ・・・、なんでも・・・ありません」
「まあね、内容が内容なんで、紅色を読破してからの方が良さそうですね」
「そうなんですか?」
「僕も、そうは言ったものの、本当は、よく知りません。女性の読み物なのでしょうから。確か、東国のスノッブな三流作家が、『恋物』の集大成として、編纂したのが、紫なんだそうですよ。要は、大人向けのものみたいですね。お話が大人ものに書き換えられているみたいな感じだそうです」
「・・・、読まない方が良さそうですね」
「まあ、どうなんでしょうか?つまりは、こういうことです。桃色の本や、水色の本、オレンジの本などで、例えば、二人が結ばれました、と書かれていたとしますよね。その後日談がどうなったとか、後は、より具体的なお話になっているようですね」
「・・・後日談は、気になりますよね。お別れしてないといいと思います」
「貴女らしい、お答えですね・・・、まあ、手にとったその時で、これはいいと思いますよ」
「わかりました」
「ご納得頂けたようで。僕は、この紅色の表紙の本の方が、内容的には複雑で、面白い読み物かと思いましたよ。これは、読ませて頂いてます。まあ、実は、僕が読んだものから貴女にお渡ししようと思っていたんですけど・・・ここに、ご一緒にいる時間が長かったら、そうもいかなくなりそうですね」
「あっ・・・」
「すみません。貴女のお顔が見たくて、椅子の向きをこちらにかえさせて頂きました」
「・・・やだ、・・・これって」
「気づきましたか?」
「また、本の・・・」
「僕は、柚葉みたいに、かっこいいことができないんです。知らないと言ってもいいです。僕としても、工夫して、貴女にわかって頂けることを探りました。紅色の本ぐらいのことなら、僕にもできるかな、と思って」
「え、そんな、だって、これって・・・」
「そうですよ」
「・・・」
口元でしっかり、手を組んで、祈るような所作で、・・・あああ、目が潤んできてしまいました。
「すみません。・・・困らせてしまいましたね」
ハンカチで、涙を拭って差し上げる。
「嫌じゃなかったら、椅子から、こちらへお引越ししてきませんか」
足元がもじもじして、ずっと、足踏みされてますね。
「待ってますから」
⚔📚
伽産物語 第2章より
「すみません。貴女のお顔が見たくて、椅子の向きをこちらにかえさせて頂きました・・・ダメでしたか?
「そんな、とんでもない、嬉しいです」
「良かった」
今度は、会話で膝詰めされている。・・・まだ、距離が遠いと、隣併せて、ベッドサイドに腰かける。
「生真面目さん、色々、考えてらっしゃるようですね」
「あ、はい、あの・・・大丈夫ですか?」
「何が?」
「その、1先生、いや、筆頭と、先週あって・・・、次に」
「なんで、1先生の話なんか、するの?」
「え?」
「他の方は関係ありません。今は、貴方のお時間ですから」
いつの間にか、唇は触れ合って、重なって・・・。
⚔📚
「こんなに短い距離なのに、とても、遠いですね、何故でしょうか?」
「ごめんなさい」
「謝ることないですよ、立ち上がって、こちらへ来て頂ければよろしいだけです」
仕方ないです。こうですね。
「あ、ああ、ダメです、桐藤・・・」
「少しの間です。こういうのを、なんて言うんでしたか?市井では・・・」
「解りません。ああ、早く、降ろしてください」
ああ、なんか、三の姫が言ってた、まさに、それですね、と思ったやつなんですが・・・
「ああ、『お姫さま抱っこ』と、三の姫が言ってたやつですね。はい、降ろしますよ」
「はあ、これも、桃色の本で、読んだことがあります・・・」
「怖かったですか?」
「びっくりしました。少し高いけど、怖くはありませんでした」
「高さなんですか?・・くすくす・・・」
「え?」
「僕のこと、怖くなかったんですか?」
「え・・・あの、怖くないですよ、桐藤ですもの」
「良かった、じゃあ、これは?」
「・・・」
「怖くない?」
柳羅様はこくりと頷く。
・・・ああ、もう・・・お顔を上げられる前に・・・、
「もう、お迎えに行きますが、よろしいでしょうか・・・」
いつのまにか、唇が触れ合って、重なって・・・。
~桐藤と一の姫④につづく~
みとぎやのメンバーシップ特典 第二十七話 「お薬の時間です」
桐藤と一の姫③ 御相伴衆~Escorts 第一章
「ラベイユ」というマガジンでも、色々な年代のカップルエピソードというのを描いています。ちなみに・・・の宣伝です。
三人の姫が、三者三様で、御相伴衆との関係性が成っていく感じですね。
この後シリーズの後は、少し、学園物タイプの話の後、もう一組のカップルのお話になるかなと思います。
あちこちいって、わかりにくいのですが、よろしかったら、お付き合いくださいませ。今後とも、よろしくお願いします。
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