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御相伴衆~Escorts 第一章 第二十四話 回想・国の為に~黒皇子と白王子・後編

 以来、ジュニア(中学)に通う齢になると、俺と桐藤キリトは、ますます、比較されるようになる。どうでもいい。取り組んでいて、なるようになっているだけのことで、俺は、桐藤を意識しているわけではない。桐藤としては、将来のスメラギ皇帝を意識してのことがあるのだと思うが。学校での学問や運動面の評価、それぞれの得意がある部分もあるが、一応、要求されることとして、抑えているのは、俺は、その臣下の代表で、桐藤のサポートができるポジションであるべき、ということ。卒なく熟すことこそが、素国の為であると割り切っていた。

 そんな中、一の姫の事件以来、桐藤の俺への攻撃は、更に増し、これ以降、俺自身を脅かす、今まで以上の虐めが始まった。桐藤には、イグル派に親衛隊というべき兵士たちがついている。(その実、第二皇妃も黙認)大事な席にまた、出席できないように、拘束、髪を切るなどして、人前に出られないようにするなど、実力行使の虐めに、奴らは加担してきた。

 学校からの帰宅時、兵士たちに連れて行かれ、地下の倉庫に長いこと拘束された。動くこともできず、失禁してしまった。頃合いが解ってるのか、桐藤がやってくる。小突かれ、そのまま、風呂場に連れて行かれる。奴隷が身体を洗う場だ。桐藤の息のかかった下働きたちに、その姿が晒される。嘲笑の中、桐藤は、それぞれに金子を渡した。

「洗ってやって、黙っててやってよ。素国の王族が、こんなの・・・」

 その中で、その所業を不快に思ったルナが、俺を庇おうとした。俺は、その後に月が虐められたら、と思った。それを抑えて、金子を受け取るように勧めた。

「要らないんだろ」

 桐藤が去った後、月の分の金子は、他の下働きで山分けされた。月の悔しそうな顔は、金のことではないのが、見て取れた。エプロンを握りしめて、震えてくれた。しかし、俺の為に、巻きこまれる必要はない。ここでは、正直者が馬鹿を見る。後に、月にお礼を言った。素国の小さな天然石のお守りを渡した。ブルーレースという石だ。月は、嬉しそうに頭を下げた。

 ある時、桐藤の息のかかった、陸軍大尉の永依何エイカが、俺の部屋に潜み、待ち伏せをしていた。男色の輩を使って、俺を襲おうとしたのだ。これが、桐藤の誤算だった。桐藤の前では、抗い、逃げ回って見せた。しかし、その後、本性を利用して、永依何を味方につけることに成功した。ひた隠ししていた、男色のスペックは、却って、敵を篭絡させることに繋がった。

 このぐらいから、高官接待を通して、桐藤の虐めの実態を、紫統様が知ることになった。中のスパイが、俺が、どんな目に遭っているかをリークしたのだ。

「もっと早く、援けを求めるべきだった」

 運転士のウズが配属されたのは、この頃だ。

「坊ちゃん、いつでも、私にお話しください。紫統様が手を打ってくださいますから」

 また、維羅イラが、かねてから、素国側のスパイとして、潜入していたことが判明した。虐められた時など、慰めてくれることがあったが・・・ならば、何故、早く申し出てくれなかったのだろうか?当局側の事情なのだろうが・・・以来、強い味方となった。俺の部屋の隣の小さなスペースに潜み、情報の交換をするようになる。維羅は、以前の交わしもあり、俺のスペックを当然、知っていた。

 第二皇妃は、桐藤の虐めの一連の流れを把握していた。桐藤の傍若無人さは、スメラギ礼讃の息子の我儘として、皇妃は、相変わらず、目を瞑っていた。素国出身の俺は、客人扱いでもあるが、部外者であり、このナショナリストの息子が上位であるのは、間違えないから、とした。

「近いうち、本格的な、皇妃様の御渡りがあります・・・国の為に耐えてください」

 客人扱いは、そろそろ、本当にお終いと、第二皇妃は、再び、夜伽を命ずる。

「お前、本当は、そっちなのは、よく解ってるから・・・」

 頭の中は真っ白にした。ある程度の施しを受ければ、身体は勝手に反応する。辛いのは、こちらから、仕掛けろと言われた時だった。

「解らないので、教えてください」

 恭しく懇願すると、それは嬉しそうに、俺に、手取足取り指南する、第二皇妃だった。必要以上に過剰に、曲線を持った身体。余計の多過ぎる、それは、醜い肉の塊に見えた。

(ちなみに、後に、慈朗によれば、男の好む女としては、皇妃は最高なのだと。可愛い慈朗の口から、聞きたくない言葉を聞いた。冷めた目で、慈朗を見ると、意味が解らない様子だったのだが・・・)

 そんな中、俺に追い打ちをかけたのが、第二皇女だった。折しも、アスリートとして活躍中の、第二皇女美加璃ミカリ様が、シーズンオフで、ランサムから戻ってきた。俺より、二歳上で、当時、17歳だった。

「美加璃がね、向こうで、お前の写真を見て、大層、気に入りました。お前の容姿から見て、とても好むことが予想されたのだけど、思った通りだったわ」

 二の姫の帰還のこの時から、俺は、二の姫付きを命じられた。桐藤には、念願の、一の姫付きを、同時に命じられていた。・・・良かったな、桐藤、大好きな一の姫様が、お相手だ。

 天と地の処遇の違いだ。優しい一の姫に接することで、それ以来、桐藤の態度が変わってきたのは、明らかだった。俺への虐めは、成りを潜めていった。しかし、俺の苦悩は尽きなかった。

 二の姫は、三姉妹の中で、あの第二皇妃に一番似ていた。性的に旺盛で、人前でも憚らず、いちゃつこうとする。それを、いかに、紳士的に収めるかが、「柚葉」の骨頂なのだと噂された。学校では、遠巻きに、女子たちが、それを見ていた。周囲の羨望の眼差しを受けると嬉しいのだ、と、美加璃は、俺に言って退けた。頭が悪い女だ。俺を「利用しています」と言ったようなもんだ。少しは、可愛らしく、愛情を惹くことができないのだろうか。・・・まあ、別に、お呼びでないが。もう、どうでも良かった。

🔑

 慈朗が連れて来られると、桐藤の虐めが復活し、その矛先は、慈朗に向かった。俺にも、従って、一緒にさせるように仕向けた。

 俺は慈朗を初めて見た時、その天使のような風貌に、初めて、心を奪われる感覚に襲われた。しかし、最初の頃は、その関わりは、桐藤の手前、虐めに加担する形でしかなかった。すぐ泣き出す慈朗だったので、手を退くタイミングが、簡単に訪れる。

 桐藤が満足し、去った後に、俺は慈朗に優しくした。

 完全に良い人間なんていない。君の可愛い哭き声が好きなんだ・・・

 状況によっては、俺も、その嗜虐に、手を染めた。

 そして、久しぶりに、高官接待が行われた。紫統様が、俺に追い風を送ったのだ。この時、桐藤への一時的な仕返しが果たされる。この後、彼にとって、恐らく、生まれてから、一番の屈辱を味わったのだろう。以来、桐藤は、俺を虐めることがなくなり、何故か「片腕」として、認めるようになった。

 この間に、三の姫 女美架様がハイスクールに通うことになり、昼間のお相手として、俺と桐藤は、同時に進学し、学校で付き添うことになった。何も知らない、三の姫の優しさ、純粋さが、自然な形で、桐藤の虐めを抑え始めていたようにも感じた。

「桐藤は、姫には優しいから、下の者にも、優しくしてほしいです」

 数馬が参入することで、最後の派手な新参者への攻撃となったのが、広間での立ち回りだった。数馬の判断力で、場はショーアップし、必要以上な陰惨さは起こされることなく、収束した。この後ぐらいから、桐藤にも、かなりの変化が訪れていく。一の姫の影響が、この後、大きかったと思われる。

「この美しい、心優しい、皇太后のような、完璧なスメラギの良き性質を受け継いでいる一の姫に相応しい人間にならねばならない、高官接待のような目にも二度と会いたくない。数馬のその場を乗り切る勘の良さ、立ち回りの素早さ、自分や柚葉とも違う人間性は、俺たちには、プラスになる」

 桐藤は、皇帝になる為に、自分を磨くことに、シフトを変えたらしい。周囲の者を思いやるということを、姫たちとの関わりを通して、恐らく、初めて、学んだのだろう。

 以降、慈朗と数馬に対する虐めは、一切なくなった。当然、俺も加担する必要もなくなったのだから。いわゆる、「御相伴衆」の組織が確立しつつある頃となる。

 しかし、桐藤、君からの度重なる虐めの記憶は、拭い去れるものでもない。今や、素国を敵視した行為として、紫統様を初めとする素国側が、国を蹂躙されたも同じと、把握してしまった。沸々と、その意趣返しの時、いや、スメラギに対する、そもそもの計画が、水面下で進められているんだ。

 君がいくら、今、心を入れ替えようと、俺は、されたことは忘れない。俺が下さなくても、紫統様が、その粛清をしてくださるだろう・・・。

 俺のスメラギでの時間は、あと少し・・・
 最近では、慈朗が俺を癒してくれる。残り少ない今でこそ、安住の場を手に入れた。運命とは皮肉なものだと、つくづく、感じている。

                      ~他のエピソードへ続く~


みとぎやのメンバーシップ特典 第二十四話 柚葉回想編
              回想・国の為に~黒皇子と白王子・後編
                      御相伴衆~Escorts 第一章

 柚葉の語りで、ここまでのお話の纏まったイメージが、見える形となったのではないでしょうか?・・・お読み頂きまして、ありがとうございます。

 次のお話をお楽しみになさってください。

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