御相伴衆~Escorts 第一章 第九十五話特別編「隣国の王女~白百合を摘みに⑦」
その晩、御相伴衆は、一同、柚葉の部屋に集まることとなった。
今日の緊張が解けたのか、とめどなく、4人の会話が続いていく。
柚葉「いやあ、皆、本当に、助かった。ありがとう。一日目、何とか、乗り切れた。特に、桐藤、紫杏姫の御相手、大変だったでしょう?」
桐藤「まあ、よくよく、話を聞いたら、あの姫が、ここに来られた理由が解った」
慈朗「そうなの?」
数馬「ごめん、今回、あんまり、力になれなくて」
それぞれが、数馬に、気にするな、とばかりのリアクションをした。
柚葉「後で、暁から、聞いたんだけど、数馬が応援してる、って、三の姫様に言ってくれたらしくて、助かったそうだよ」
数馬「俺、何も言ってないけど、多分、そんなことがあったなら、応援はするけど、何かあった?」
慈朗「あの姫、藍語しか、喋らないんだよ。空港から、ずっと。びっくりしたんだけど、僕も単語を少し、追うしかできなくて・・・」
柚葉「本当、何か、牽制してるみたいで、三の姫様には、可哀想な思いをさせたな」
桐藤「いや、良い刺激になったのではないかな?実際、嫁ぎ先の言語の理解が皆無では、やっていけない。身に沁みたのではないかな?良い経験だったと思うが」
慈「さすが、桐藤、厳しいんだ」
桐藤は、今日のことを思い出した。
桐藤「その実、辛いと感じている姫は、三の姫だけでないということだ・・・。東屋で話したのが・・・」
数馬「あ、東屋に行ったのか?桐藤と、その姫の二人で?」
柚葉「申し訳なかった、本当に、桐藤」
桐藤「東屋の認識は、皇宮の我々だけのものだからな、考えてみれば。紫杏姫にも認識もないし、なんてことはなかったが、それでも、やはり、あそこのムードは、人の本心を引き出すようだ」
柚葉「・・・?・・・どういうことだ?」
桐藤「条件付きで、スメラギに、柚葉の偵察に来たようだな」
慈朗「え、そうだったの?」
数馬「やっぱり、そうだよなあ、スパイ的な?・・・あ、ごめん、柚葉」
柚葉「まあ、いいけどね。素国って『氷のカーテンの向こう』とか、喩えられるようだからな・・・」
慈朗「で、どういうことなの?桐藤、それって」
桐藤は、紫杏姫の事情を、三人に話した。
柚葉「成程ね。多分、御殿医の一人かなんかを、宛がわれているのかもしれないな」
慈朗「そうなんだ・・・、なんか、それって、機械的に、そういう風になってるのかな?」
柚葉「その時によるが、俺も、あの人か・・・って、嫌な気分になった記憶してる」
数馬は、目を丸くして、柚葉に尋ねた。
数馬「御内相って、柚葉も、あっちで、そうだったのか?」
柚葉「男子は言い方が違って、『王統検査』って言われてる。結局、男子の場合は、王族の親戚でも、誰でもいいらしいから、俺は、その嫌な、よく解らない女の御殿医からは、免れたけどな」
慈朗「・・・あ、そゆことね」
柚葉「・・・そゆことなんだよ、慈朗」
数馬「あああ、絡むなよ、そこ、訳知りっぽくて、本当に・・・」
柚葉「ひょっとしたら、人数が多いだけに、スメラギよりも、その辺り、雑かもしれないな。王子よりも、姫の場合の方が、その時っきりってケースは、その実、多いらしいんだよな。うちの国だと、恋人同士になるなんて、殆どなかったかもしれないな・・・」
桐藤「傷つきそうだな・・・、紫杏姫様は、恐らく、姉姫や、先達の姿を目の当たりにしているのかもしれないから。面食いのようなことを言っていたが、その実、人間関係的に、やはり、きちんと、補完されたいのだろうな、という印象だ」
柚葉「そうか・・・、つまり、俺の偵察のご褒美に、今、決まってる方とのことをなしにするか、代わりを、って話かな?」
桐藤「それこそ、柚葉、お前自身が、当局へ掛け合えばいいのではないのか?というか、どなたか、上の方から、言って頂くというのは・・・」
柚葉は、何気に慈朗の顔を見る。
柚葉「・・・ちょっと、お門違いだけどなあ、できなくはないけど、一度、紫統様と会わないとね」
慈朗「・・・」
柚葉「あ、何?うん、・・・だよね?」
慈朗「何も言ってないよ、そうだろうな、と思ったよ、僕も」
数馬は、ため息を大きくついた。
数馬「・・・成程なあ、姫様は、いずこも、大変だなあ・・・(冗談で、ご指南役がどうのって、維羅に言われたけど、マジ、その辺の話じゃんか)」
桐藤「身に沁みる話で、数馬には、すまないんだが」
数馬「まあ、仕方ないよ。お年頃の姫様が来たから、多かれ少なかれ、そうなんだろうね。じゃあ、やっぱり、その柚葉が、その関係の人に、口添えしてあげれば、安心なんじゃないの?それを明日、伝えてあげて、柚葉の恋人は、二の姫で報告して貰えばいいよね?・・・で、俺は明日、芸見せるし、慈朗、ほら、お前からもあるんだろ?」
慈朗「あ、これね、紫杏姫の絵、描いたんだ。記念にもらってもらおうかなって」
柚葉「おー、五割増しに、可愛く描いてるじゃんか。悦ぶぞ、きっと」
桐藤「大したものだな、笑った顔など、見てもいないのに・・・そうかあ、そういえば、殆ど、笑顔もなしだったか、あの姫・・・」
柚葉「この顔だよ。流石、慈朗だ」
慈朗「うん、なんか、描いてると、こうかなって、なってくるんだ、あ・・・」
数馬「どうした?」
慈朗「あのね・・・桐藤、後で、個人的に、話したいことがあるんだけど・・・」
桐藤「なんだ?珍しいな、慈朗」
慈朗「うん、後で」
桐藤「解った」
慈朗が、桐藤に・・・珍しいこともあるもんだと、柚葉と数馬は、目配せをした。
一先ず、明日は、紫杏姫に、再度、この提案を伝え、数馬の芸を見せ、明後日の帰国前には、慈朗の絵を、お土産にして貰おうということになった。
🎨⚔
「なんだ、話って?」
一先ず、数馬が奥殿に帰り、桐藤と慈朗は、柚葉の部屋を出て、廊下で話をしている。
「うん、一の姫様と約束したんだ」
「何をだ?・・・ああ、そうだった。俺としたことが・・・一の姫様は、今日一日、どうしてらしたのか?」
「大丈夫だよ。窓から、お茶会の様子見て、愉しそうだって思ってたから、心配はされてないから。あとね・・・」
「どうした?それで、約束とは?」
「近い内に、桐藤と一の姫様の絵を描いてほしい、って」
桐藤は、少し、拍子抜けした様子だ。
「・・・へえ、それって、一の姫様が?」
「そう、お願いされたんだ。だから、描くね」
「・・・照れ臭いものだな、そんなの」
「写真もいいけどね。絵は、そうやって、良い風に、想像で描ける部分があるから・・・それでね、もう一つ、一の姫様のリクエストがあるの」
「絵だけではないのか?」
さすがに、絵は、自分は描いて差し上げられないが・・・、と桐藤は思った。以前、一の姫が、慈朗を、部屋に呼んでほしい、と言っていた理由が、桐藤には、解った気がする。
「うん、一の姫様ね、桐藤と二人の絵じゃないんだよ、描いてほしいの」
「あ・・・」
「わかった、よね?一応、桐藤にも、知らせておこうかなと思って。僕の想像になっちゃうけど、それでもいいかな?」
「いや・・・そうか、一の姫様が、そんなことを・・・そうか・・・わかった。よろしく頼む。一の姫様の願いを叶えてくれ。まずは、絵の上で」
「うん」
「俺も、頑張るから」
「え?」
「あ、いや、・・・」
慈朗は、桐藤のリアクションに、ハッとして、赤くなった。
「いや、なんというか、心遣いに感謝する。明日も、一の姫様の事を頼む。ああ、絵のことは、俺も周知しているということを、一の姫様にお伝えしてくれ」
「うん、わかったよ、じゃあ、明日、紫杏姫様が納得してくれるといいね」
「そうだな」
桐藤は、一度、一の姫の部屋に行きかけたが、今日は行けない、と伝えてある為、踵を返して、自室へ、同様に、慈朗も、柚葉が気になったが、私室の広間へと戻っていった。
~隣国の王女⑧につづく
御相伴衆~Escorts 第一章 第九十五話 隣国の王女~白百合を摘みに⑦
今回も、お読み頂きまして、ありがとうございます。
この話、沢山のキャラクターが出てきていて、私の話の書き方自体が「お話」で、小説ではないので・・・漫画の絵コンテ的に台詞を置いていたものを、再編成していたりで、それを伝えるようにするには、台詞を台本風にするしかないのかなと思う所もあります。時々、このような形になります。今回も、その形で進めさせて頂きました。
変則的な描き方になりますが、是非、お楽しみになさってください。
更に、創作の幅を広げていく為に、ご支援いただけましたら、嬉しいです😊✨ 頂いたお金は、スキルアップの勉強の為に使わせて頂きます。 よろしくお願い致します😊✨