ハッシュタグで描いてみる②#ほろ酔い文学「楽園の果て~ファンタジー処理」
「何も、死ぬことはないのにね・・・」
閉じかけたシャッターに、無理矢理、足を捻じ込んだ。
「間に合った、のかな・・・?」
「・・・何が?」
確信犯だろ?そんなの。
だから、言ったのに。
それなりに年月が経っていること、お互い様だってこと。
もう、忘れかけていた感覚。
斑でもなく、それはもう、新たなものとして、立ち上がったような・・・。
彼女の手元に、文庫本があった。
「でも、この人の話、好きなの」
「なんか、あったな。昔、流行ったやつ」
「うん・・・でも、その時は、まだ、若くて」
「ああ、そんな頃か?」
「うん、まだ、出会ってないよ。多分・・・違ったかな?」
この辺り、変わっていない。
くすくすと笑ってる。既視感のある。・・・酒が過ぎたのか。
「ずっとね、・・・ずっと、最初の夜こと、憶えててね」
来た。
相変わらず、こういうことを、抜け抜けと言う。
まあ・・・
「憶えている」
というのは、微妙だろう。正直な所、・・・違うか?
でも、そんな流れになるのは、きっと、その所為。
「憶えていた」からだろう――― とは、思う。
・・・前に会った時、それを危惧したから。
それが、今で、良かったんじゃないか?・・・あの時じゃなくて。
確実に、ここまでの空白は、埋められたものがあることを、君は披歴していた。
よかったな。
自身の手では、してやれなかったこと。
狡い。
あの時だって、今だって、同じことを願って、望んでいる。
互いは、互いの枠の外で。
「彼女の気持ちが解るの。あの時みたい」
俺は、少なくとも、無理心中とか、君を、首ったりはしない。
「解るけど・・・、これはファンタジー、ってとこかな?」
意見は、一致した。
そんな発想には、至らない。
応え合わせ。
桜は、殆ど、散っていた。
今回のお題は、「#ほろ酔い文学」です。
文学とつくからには、創作がいいかなと、ずっと、フォルダの奥の方に眠っていた、超短編を引っ張り出してきました。
随分昔、この二人は付き合っていたんでしょうね。
彼女は、酔うとあっけらかんに、思いもよらずのことを言う。
そのことすら、ああ、懐かしいなと思ったりする彼。
再会して、甦った感覚が再生されていきます。
この感じは、恐らく、二人が離れてから今日まで、それぞれの人生で、他の人間とは紡ぐことのできないもの。一見、普通そうで、ある意味、濃密なやり取りに違いないと・・・
冒頭のシャッターの件は、どのように取ってもらってもいい、
そんな感じです。恐らく、色々な意味があるのでしょうね。
色々と解説するよりも、感じて、想像して頂くといいかなと思います。
そんなわけで、今回のお題は、#ほろ酔い文学 でした。
久方の「ラベイユ」の更新となりました。
お読み頂きまして、ありがとうございました。