守護の熱 第二章 スタートです!
第二十四話 彼女の杞憂 (実紅視点)
最近、よく寄り道してるよね。あの日、帰り路、由紀たちと別れてから、偶然、見かけたの。例の小津君と一緒だった。ああ、確か、あれは、薹部銀行の社宅のマンション・・・ああ、小津君ちかもね。確か、親が薹部の行員だよね。
待ってるの。
なんとなく、寄り道しても、彼は、長居はしないの、実紅、知ってる。
あ、やっぱり、20分ぐらいで出てきた。
男の子って、用事が簡単なのかもね。
女の子みたいに、長話とか、好きじゃないのかも。
お兄ちゃんもそうだしね。
・・・お兄ちゃんの所に立ち寄ってくれれば、いいのになあ・・・
お兄ちゃんに頼んでも、誘いにくいって。
「あいつは、バイトとか、忙しいらしいから。無理には誘えねえ」
何か、よく解らないけど、お兄ちゃんも、彼にはそんな感じなんだよね。
他の不良とか、他校の生徒とかには、強く出られるのにね。
でも、仲は悪くないみたいだから、良かったな、とは思うんだけど・・・
早歩きになった。
一人の時、いつも、そんな感じだよね。
何に追われてるんだろう、っていうぐらい。
一生懸命、時間と戦ってるみたいで・・・。
ちょっと、運転手の石津が、似てる時があるっていうか。
・・・そう思って、これまでも、時々、見てたんだけど・・・。
今までは、小さな子ども扱いで、声かけて来てた。
でも、こないだ、少し、見てたら、ハッとした顔して、ニコリとされた。
・・・これは、ダメな感じ。もう、解る。
だから、もう、石津のことは見ないの。
男の人とは、距離を図らないと。
為にならないことはしたら、ダメだから。
男の人は、もう、実紅のこと、子どもとは見ていないからって。
お母さんに言われた。だからこそ、「見極める」ことが、大切だって。
だから、そうしてるつもり。
「世の中にはね、二種類の人種がいてね、・・・特に、貴女は、女の子だからね。いい?荒木田は『使う側』よ。『遣われる側』になってはならないのよ」
沢山の大人の人が、お父さんとお母さんに頭を下げている。
私も、その娘だから、同じようにされている。
これからは、しっかりしないとね・・・。
どこにいくのかな?いつもの山へ向かう途中のあそこかな。
知ってるよ、いつも、星をあそこで見ていて、撮影してるの。
黙っていて、あまり、人に教えてないのも。
羽奈賀君とぐらいしか、行かなかったんだよね。
・・・実紅は、彼が行かない時に、一人でこっそり行ったことがある。
でも、一人なんて、寂しいし、誰かにそんなとこ見られたら・・・
だから、もう、行かないの。誘ってくれるまで、行かないの。
やっぱり、行くのかな?あれ、引き返した。家に帰るんだ・・・
ちょっと、ホッとした。見送る。
あまり、大きくはないけど、立派な木の門の旧いお家。
無事、ご帰宅しましたね。良かった。
本当、見てるだけで、すごい、嬉しくて、幸せなんだよ。
初めて会った時から、ほらね、思った通り。
どんどん、カッコ良くなるし・・・。
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なんとなく、あの時から、気に掛かってて、頭の片隅にあって、離れなかった。
・・・傘なんて、どうでもいいのに、わざわざ。
あの日、別れた後、二人は、同じ方向に歩いていった。
レコード屋さんの店先で、なんとなく、目で追ってた。
あの女のことは、調べにやったら、解った。
あの建物が、うちの持ち物だってことも・・・。
なんか、嫌だな。どこで、知り合ったの?
気安く、話しかけないでほしいんだけど・・・
・・・だって、あの女は・・・。
あの場所の帰りに、雨に降られて、たまたま、傘を借りた、
・・・ぐらいだよね。きっと。
~つづく~
みとぎやの小説・連載中 「彼女の杞憂」 守護の熱 第二十四話
お読み頂きまして、ありがとうございます。
ご無沙汰の『守護の熱』、第二章になって、戻って参りました。
今後、起承転結の「転」に入っていく感じになるんでしょうか・・・。
ちょっと、今までと、雰囲気が変わってくると思います。
怖いなあ。実紅ちゃん。
つまりは、第一章の、第二十一話「シュークリームと肉じゃがコロッケ」の日の、実紅ちゃん視点でした。
最初にあらすじを打っていたのですが、それで一記事になりそうになったので、登場人物紹介にしました。纏めベタでした💦
第一章を、御覧になりたい方は、こちらから、宜しくお願いします。