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御相伴衆~Escorts 第一章 第五十三話「どっちがいい?」 数馬と三の姫⑪

 食事が設えられたが、姫様がゆっくりしたいから、お風呂に入りたいと言ったので、これは、いきなり、どうしようかと、すぐさま、アカツキを呼んでしまった。俺は、シャンプーを理由に、私室の風呂に入りに行きたいと申し出た。暁は、俺の四苦八苦してる様子に気づき、笑っていたが、送り出してくれた。

慈朗シロウ、いる?」
「あ、数馬、なんで?いいの、こんな時間に、姫様を一人にして」

 もう、私室が懐かしい。安心できる空間に、感じるんだけどな。

「いや、風呂に入りに来た。あの、俺の匂いの、こっちにあるから」
「うわあ、数馬から、そんなこと、聞くとは、思わなかったなあ」

 ニヤニヤしてる慈朗。柚葉、来てないんだね。

「柚葉は?」
「なんか、部屋で作業したいんだっていうから、終わり次第、連絡貰って、勉強見てもらいながらね、まあ・・・そんな感じで」

 あれ、食事。大きなフルーツサンドだ。というか、普通サイズだと思うが。

「これね、さっき、色々と食べたんだけど、ルナに勧められて。デザート代わりに貰ったんだ。何?」
「いや、別に」

 余ったのが、慈朗の所に、行ったのかな?成程ね。

「風呂入る」
「じゃあ、僕も入る」
「食事は?」
「さっき食べた、って、言ったよ。だから、いいの。これ、お弁当みたいになってるから、柚葉のとこ、持ってって、食べるんだ」
「そうなのか・・・」
「・・・夜中、お腹がすくんだよね。へへへ・・・」
「ふーん・・・」
「数馬も、すぐわかるよ」
「バーカ」
「あ、わかってんだ、あはは」

 シャンプー、イランイランね。
 あ、流石にもう、識別がつくようになったな、慈朗。

「久しぶりだね、一緒のお風呂」
「そうだな。行動が違ってたし、俺は、部活もあったりとかで」
「あっ、そうだ、柚葉に言わないでよ」
「え?」
「一緒にお風呂に入ったこと」
「あ、ああ、そういうことね、解ってるよ。じゃ、上がるから」

 脱衣所に戻ると、・・・あ、柚葉、来ちゃってるじゃん・・・。

「どうも、数馬君、今夜は、なんで、ここにいるのかな?はい、新しいイランイランのシャンプー、リンス、ボディーシャンプーのセット。俺からのお祝いだ。三の姫様のお風呂で、是非、使ってくれ。その方が便利だろ?」
「あああ、こんなこと、いいのに、自分でするのに・・・」
「いい景色。宗旨替えするなら、俺、お前でも構わないよ。待ってるから」
「馬鹿、何、言ってんだ、お前」
「慈朗、入ってもいい?」

 浴室で、びっくりした感じで、慈朗の声が響いた。早いな、柚葉、あっと言う間に、服脱いで、入っていったんだけど・・・。

 ふー、なんだか、今夜は、刺激が多い。ただでさえ、こんな夜なのにな・・・。

🏹🍓

 シャンプーのボトル抱えて、恥ずかしいな。こっちでお風呂入りますって、宣伝してるようなもんだからな。まあ、もう、周知の事実だし、柚葉と慈朗の手前、髪の毛は濡れたままで戻ってきたから、自然乾燥でいいんだけど、今夜は、向こうでドライヤー、借りた方が良さそうだな。

「お帰りなさい、あら、まあ・・・」

 あ、良かったあ。暁が居てくれた。

「あー、なんだっけ、あの数馬の髪の色」
濡烏ぬれがらすね」
「いいなあ、真っ黒なの、カッコいい、結い髪、降ろしてる」

 暁が、俺の荷物シャンプーを見つけてしまった・・・らしい💦

「あ、それ、お預かりしますよ。お風呂に置いておきますから、あと、お風呂はいつでも、使えるように、設えて置きましたからね、どうぞ」

 ああ、シャンプー類を、暁に奪われてしまった。もう、明日からは逃げられないんだ。姫もこの間に、お風呂を済ませたようだ。

桐藤キリトも黒なんだけど、ちょっと、茶色がかってる。スメラギの一般の人に多い色みたい」
「へえ、詳しいんだな。そういうの」
「柚葉は、素国王室の髪、青髪で、慈朗は綺麗なアッシュブロンド、天使みたい」
「慈朗は、いつも天使なんだな」
「うん、綺麗な男の子」
「そうなんだ」
「慈朗は、学校で、男の子にも人気あるんだよ」
「あー、そうみたいだね・・・」

 どういう意味か、解ってるのかな?

「ねえ、姫のここ、ないの、夜は」
「あー、本当だ、ポンポンがないな」
「ポンポンって、好きな言い方。数馬っぽい」
「そう、そのポンポンがあると、学校で見つけやすいから」
「変な髪型って、言ってたよね。前に」
「あー、それは謝るよ。って、前に謝ったじゃん」
「どっちがいい?」
「うーん、なんかもう、ポンポンが三の姫様のトレードマークだからな、ちょっと、寂しい気がするけど、その分、髪がここ、下りてるのか。うん、悪くないよ、今のも」
「悪くないんだ、今のも」

 なんだよ、あー、始まった、もじもじしてる。・・・なんか、良かった。朝からの感じで、機嫌がこじれてるとこちらもね・・・、でも、何のおねだりだろう。あ、そうだ、髪、乾かさなきゃ。

「あのさ、姫、ドライヤー、借りたいんだけど」
「こっち、洗面にあるよ、あ、暁、ありがとう」
「数馬様、やりましょうか?」
「だめ、姫がやるの」
「あー、・・・それは、すみませんでした」

 暁は、目配せをして、軽く会釈をした。

 ちょっと、お風呂場を覗くと、暁が、俺のシャンプー類を、綺麗に並べておいてくれたらしい。隣にピンクのボトルが並んでいる。薔薇の花の柄のやつだ。今の姫の匂いなんだな、それが。

「お飲み物追加、お部屋に置いてありますから。何かあったら、専用の電話を厨房に入れてください。私の用も伝言で可能ですので。お声掛けがない限り、基本、夜は参りません。では、失礼します。ごゆっくり、お過ごしください」
「ああ、ありがとう、暁」
「また明日ね、暁、・・・数馬、座って、姫が乾かしてあげる」

 ああ、暁が行ってしまった。
 姫は、洗面所で、座っている俺の髪を、乾かそうとしてくれている。

「一か所に当て続けないでね。焦げるから」
「大丈夫、髪の毛多いね、数馬は」
「ちょっと、貸して、最初、こうやるの、わーって、全体、手で掻き上げなから、かけると早く渇く」
「はあい、わあ、いい匂いだね。あのシャンプーなんだね」
「いい匂いなの?」
「姫、数馬の匂い、大好きだよ。傍にいてくれるの、わかるし、安心するー」
「わあ、ちょっと、待て、掻きまわせ、とは言ってない」
「ライオンみたいになっちゃった。あはは」
「人の頭で遊ぶな。いいよ、だいぶ、乾いたから、後は手櫛で」
「ふーん、やっぱ、数馬、カッコいい。嬉しい。もう、ずっと、一緒だね。慈朗のお部屋に帰らなくていいんだ」

 事も無げに、そんなこと・・・言うんだなあ。
 ちょっと、スルーさせてもらって、ドライヤー仕上げ。
 なんか、ずっと見てるな。ちびっこが。鏡の中から。

「何?」
「おねだり思い出した。どっちがいいか。数馬の好きなのにするの」
「何?」
「御寝間」
「何?」
「寝間着、どっちがいいかなって、お部屋に出してくるね」

 そうだ。今、ピンク色のバスローブのままなんだな、姫は。あんまり気にしなかったけど。俺も、実は、慌てて出てきたから、私室のバスローブで、来ちゃったんだけどさ。誰にも会わないで、よかったよ。

 ああ、さっき、もじもじしてたな。どういうことか?

 ・・・と、部屋に戻ると、ベッドの上に、姫の好きそうなのがあった。

 ヒラヒラやリボンやレースっていうの。柚葉と慈朗が、案外、こんなのついてるやつ、平気な顔して着ていたりするんだけど、俺は似合わないから。

 色はピンクの長袖で、多分、これは首のとこまでしまっててと、白の半袖のは、その辺りが空いてるやつなんだろうな・・・。どっちでも、いいんじゃないの。きっと、どっちも、似合うんだろうな。

「まだ、あるんだけど、今夜は、こっから選んで」

 そうそう、どっちでもいい、は、ダメだって、柚葉が言ってたもんね。

「熱いから、こっちの半袖の白いのにしたら?」
「うん、わかった、じゃあ、着てくるね」

 すると、姫様は、そそくさと、ウォークインクローゼットに入っていった。

「着たよ。これ、初めて着る」
「わ・・・、着ると、こんなに、なるやつなの?」

 思ってたのと、全然、印象が違った。肩が丸出しになっていて、裾も膝が出ている。うーん、確かに、見た感じ、トータルすると、可愛いんだけどね。あれだけ、気にしていた部位も、様子が明らかで。薄布が重なってるようなのだな。透けないやつで、ホッとした。

「数馬、いっぱい見てる」
「あ、いや、ごめん、そうじゃなくて・・・」
「大丈夫だよ。見てもいいよ、どう?似合う?」

 くるくると、至近距離で、回って見せてる。天真爛漫な三の姫だ。いい匂いを撒き散らしながら。

「似合うよ。・・・可愛い」

 どうだ。言ってやったぞ。これから、食事なんだっけ。
 ああ、長い夜になりそうだ・・・。

                     ~数馬と三の姫12につづく~


みとぎやのメンバーシップ特典 第五十三話 「どっちがいい?」
              数馬と三の姫編⑪ 御相伴衆Escorts 第一章

 三の姫のこれは、実は、習慣になるんですよね。
 ちょっと、覚えておいて頂くとよいかもしれません。

 素直で、天真爛漫。父皇帝と、母皇妃に愛された、三の姫様。
 異国の鴉の濡れ羽色の髪と瞳は、その国では禁忌の輩の筈なのに、その御指南役は、その国で引きたてられた。何の為なのでしょうか?

 それは一重に、母である皇妃が、娘の幸せの為にできることを考えたのでした・・・。

 次回をお楽しみに。
 今回も、お読み頂きまして、ありがとうございました。
 

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