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御相伴集~Escorts 第一章 第十四話 桐藤編①「一の姫」             

 皇宮の中でも、庭を見渡せる、眺めの良い一室に、第二皇妃の長女、つまりは、一の姫 柳羅りゅうら様がいらっしゃる。生まれつき、身体が弱く、原因不明の持病があり、外に出ることも少ない。本がお好きで、一日中、読書をされて、過ごされている。

「失礼します。柳羅姫様、お食事、ご一緒しようと思って、お持ちしました」
「ああ、桐藤きりとですね。お待ちしておりました」

 一の姫柳羅様は、御年20歳。身体が丈夫であれば、とっくに、近隣諸国の王子の元に嫁がれている年頃であるが、その病の為、縁談を断り続けている。

「桐藤、お母様にお願いしていたことがありまして、お伺いになっていますか?」
「何の事でしょうか?」
「あ、・・・あの、お庭で、絵を描いていた子は、呼んで頂けないのでしょうか?」
「聞いておりませんが・・・それより、お食事にしましょう。こちらに来られますか?」
「・・・あまり、気が進みません」
「食べないと、病に負けてしまいますよ」
「でも、・・・」
「お顔が白いです。まずは、ベッドから出てください。お食事がとれたら、庭に出てみましょうか?」
「・・・」

 読みかけの本を手元に置いたまま、俯いたまま、姫は悲しそうな顔をされる。




「柳羅はね、外にはりません。この国の情勢、ご覧ずれば、解ると思いますが、この子をいずれ、次世代の皇后に致したく、私は考えておりますのよ。桐藤」

 第二皇妃 美蘭ビラン様は、私室に、俺を呼び出した。てっきり、久方に、お相手をさせられるのだと思ったが、そうではなかった。

「皇帝のお考えでもあるのよ、わかるかしら?桐藤」
「はい」

「なんで、お前を柳羅につけているのか、・・・私には、男子を産むことができませんでしたからね。綺麗なお前を、皇帝一族の外戚から預かり、赤子の時から、手元で育てました。お前は、今や、誰よりも、このスメラギのことを考えてくれている、賢い子ですからね。意味、解るでしょう。血の繋がりはなくとも、お前は、私の息子ですからね。私の考えていること、全て、映して、それを血肉にしています。それに、お前は美しい。それに、お前の金の瞳が、幸いしていますから。私のお気に入りを、沢山、持っている子です」
「お妃様・・・」
「それに、野心家のお前なら、解るでしょう?よく、育ってくれました。幸い、柳羅もお前に心酔しているようですしね」
「私が・・・まさか」
「そう、次世代の皇帝候補です。お前の生粋のナショナリズムと、如才なさは、スメラギを世界の中心とし、盛り立てていけることと考えているのですよ。ますます、精進していくことですよ」

 第二皇妃が、俺の手をとる。その瞳は、長年の野望を達すべく、少し潤んで、輝いていた。


 確かに、国賓クラスに近い扱いの柚葉とともに、最近は、あまり、夜伽のようなことは少なくなっていっている。その殆どが、姫のお相手だった。・・・成程、俺が、・・・

 この俺が、皇帝に、・・・スメラギの皇帝に・・・!!



「わかりました。お膝に乗せましょう。それなら、よろしいのではないでしょうか?はい、こちらへ・・・」
「ああ、良いのです。桐藤、きちんと、自分で、椅子に座ります」
「良かったです。少し、お顔に紅が差しました。お顔色が良くなられたようで」

 顔を近づけたまま、そのように言うと、ますます、頬を紅潮させた。

「こういう風に、近づくのは、お嫌ですか?」

 首を、横に何度も、振って見せる。

「嬉しいですよ」

 と言って、食欲が出るとは、思えず。案の定、箸を持つまでもなく、困った顔をしてらっしゃる。

「ごめんなさい、せっかく、ここまで、運んで頂いてるのに」
「いいですよ。ゆっくりで構いませんから。あ、このゼリーなら、食べられるのではないですか?ロイヤルゼリーが入ってます。少量でも、エネルギーが取れますよ。薬効の成分も入ってるそうですから。私がまず、食べてみましょう。ほんの少し、漢方っぽい臭いが、ほんの少しありますが、味は甘くて美味しいですよ。蜂蜜は、お好きでしたよね」
「ええ、・・・」
「進みませんか?じゃあ、食べさせてあげますから、少しずつね。スプーンに乗せて。はい、お口を・・・だめですか・・・」

 最近の柳羅様、・・・まあ、何となく、察してはおりますから、仕向けた感じになられましたよね。見事に嵌まって頂けてるようで・・・。ゆっくり、少しずつですが、触れ合うこともできるように、なってきましたからね。

「困りましたね。どうしたら、召し上がってくださるのか?このままでは、私は、心配で」

 席を立ち、柳羅姫の背後に回り、背もたれ越しに抱きすくめる。

「ずっと、目が離せませんよ・・・」

 耳元に囁くと、身体をびくつかせる。

「後で、お好きな恋物を、ご一緒に読みましょうね。だから、せめて、一口でも、召し上がってくださいね。以前、お薬でしたように、致しますからね。上手に溢さないで、召し上がって下さったら、ご褒美に、お好きなこと、して、差し上げますから」

 俺は琥珀のゼリーを一口、口に含む。姫は一度、目を閉じて、観念した様子を見せる。口元を親指で軽く開かせ、こちらから唇を寄せると、きちんと吸いついてきた。そのまま、動かずにいてやると、こくんと、嚥下の音がした。

「お上手です。良かった。頑張りましたね。次は、何を召し上がりますか?」

 ウットリとした目は、既に潤んでいる。困りましたね。そんな、お顔されて・・・。

「わかりました。お約束のご褒美でしたね」

                        ~桐藤編②につづく~



みとぎやの小説・メンバーシップ特典 第十四話 桐藤編①「一の姫」
                      御相伴衆~Escorts 第一章
 
 
お読み頂きまして、ありがとうございます。

 ようやく、御相伴衆の最後の一人、桐藤編が始まりました。
 最初に、数馬と慈朗を虐めた時と、お庭遊びの時に少し出てきましたが、いよいよ、桐藤視点のお話になります。

 桐藤は、第二皇妃から、次期皇帝候補だと告げられたことにより、これまでの傍若無人な態度から、自らを律し、皇帝になれるようにと、次第にその態度を変えていきます。この桐藤編では、その自覚が芽生えていく感じが現れていきます。

 冒頭のやり取りで「お庭で絵を描いている子」は、勿論、慈朗シロウのことです。この段階では、まだ、慈朗と一の姫は面識がありません。同じ皇宮すらめみやの中にいても、まだ、会うことが許されない状態のようですね。

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